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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第五章:炎山の弄られた揺り籠
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手段の模索

 自室に戻り、疲労感でベッドに寝転ぶわたしは、眠気も相まってぼんやりとしながらウルとフリッカに今日の結果を報告していた。


「ふむ、それで出来上がったのがこれ、と言うわけか」

「初めて聞く名前の素材ですね」

「……まぁ、それが出来ただけで、その後の加工が出来なかったんだけどね……」


 新しい?インゴットは調べてみたら【ドラゴニウム(風)】となっていた。風属性ドラゴン(ゼファー)の鱗を元に作成された物だからだろう。

 ただわたしに出来たのはそこまでで、そのインゴットを溶かして別の物にすることまでは出来なかった。作成メイキングスキルでも変化させられず、スキルレベルが足りないのか、他に必要な素材があるのか……可能性が広がったのは嬉しいけど、言い換えると検証項目も増えたと言うことなので大変である。ゲーム時代はネットで情報収集が出来たけれども、アステリアにはネットなどあるはずもなく。ゼファーの鱗だって無限に取れるわけじゃないからなぁ……さすがに鱗欲しさに剥ぐわけにもいかないし、制限のある中で無駄にならないようにやっていかないと。

 なお、翌日に地神に尋ねてみたけれど、モンスター系の知識となると闇神の分野になりやはり答えられないそうだ。残念。


「ドラゴン素材だし、ひょっとしたらウルにも扱える武器が出来るんじゃ?と期待したんだけどねぇ」

「……我からは頑張ってくれ、としか言えんのぅ。いや、我が力加減を覚えるべきであるか……?」

「それでモンスターにウルさんの攻撃が通用しなくなったら元も子もないのではありませんか?」

「悩ましい問題だねぇ……」


 そこらのモンスターならともかく、新規に訪れる場所のモンスターはだんだん強くなっている感じがするので、下手に加減してフリッカの言う通りモンスターに攻撃が通用しなくなっても困る。そのほんの少しの差で、ウルはともかくとしてわたしやフリッカにモンスターの致命的な攻撃が飛んできたら泣くに泣けない。


「むぅ、ひとまずは今まで通り素手か使い捨てアイテムで対応するしかないのではないか……?」

「使い捨て……あっ、思い出した」


 わたしはガバっと体を起こし、アイテムボックスから魔石を取り出してフリッカに渡す。


「フリッカ、これにアイスバレットの魔法を籠めてもらえる?」

「? えぇ、お任せください」


 そうして魔石に魔法を籠めてもらい、樫の木の棒を取り出し……握る。


作成メイキング、【氷弾の投げ槍】」


 わたしは今まで、魔石を矢に変換してきた。

 しかし、矢に変換出来るなら、槍の穂先にだって変換出来るでしょう?

 と、本当に今更ながら思い付き、作成メイキングを実行してみたら、案の定作成出来たのだった。


「これならウルも矢を投げるよりはやりやすいんじゃないかな? ……まぁ、多分これも使い捨てになるけどさ」

「……木の棒だけ出してもらえるかの?」


 ウルの要望に「ほい」と出してみれば。

 それなりに強度のある樫の木の棒は、ウルの一握りであっさりと砕けた。


「……使い捨てになりそうだの」

「……あはは……」


 前途は多難そうだ……。



 xxxxx



 それから程なくしてリオン様はお休みになられました。結果報告中もうつらうつらとしていましたので、相当に気力体力を消耗していたのでしょう。

 しっかりと肩まで毛布を掛けて風邪など召されないようにしませんと。バーグベルグ村方面はここと比べて暖かいので忘れがちになってしまいますが、すっかり秋も深まってきています。おかげでくっ付いて寝ても平気になったのでありがたくもあるのですが。


「ウルさんは眠らないのですか?」


 普段であれば夜になると真っ先に眠りに落ちるウルさんが珍しくまだ起きています。


「うむ、我ももう寝るが……」


 そう呟きながらもリオン様を見て首を傾げています。……何事なのでしょうか。


「……どうにも、リオンから妙な感じがしてな……」

「妙、ですか」


 生憎と私にはわかりませんが、感覚の鋭いウルさんが言うことであれば事実なのでしょう。

 ……羨ましいことです。私もリオン様の些細な変化を見逃さないようになりたいです。


「妙ではあるのだが……リオン本人も何も言わぬし、たぶん問題ではないのだろう」


 そうしてウルさんも毛布の中に潜り込みました。あっという間に寝息が聞こえてきます。

 ……たぶん問題ではない。つい最近、聞いた言葉な気がしますね?

 もしリオン様がおっしゃっていたことと同一のことを示すのであれば……お二人ともが問題ないと判断しているのであれば、きっと本当に問題ではないのでしょう。


 ……はぁ、やはり羨ましいことです。お二人に深い繋がりがあるように思えてしまって。

 絆と言う意味であればそれは以前からなのですが……何か、別のモノもあるような。

 私も仲間に入れてほしいものですね……。


 ほんのりと寂しさを感じながら、私もウルさんの逆隣に潜り込み、リオン様にしがみ付くように寝るのでした。



 xxxxx



 そもそもウルの攻撃が強すぎて考慮に入れてなかったけど、単に属性攻撃系アイテムを使ってもらえばいいんじゃね?と朝になって思いついた。聖水の使用時に効果が落ちていたのもあって失念してしまっていたようだ。でもわたしの聖属性ボーナスはわたしが神造人間ドールだからだし、聖属性以外なら効果が落ちるなんてこともないのでは?


「と言うことで検証に付き合ってもらいます」

「……まぁ事前に知っておくことは大事であるか」


 主な対象者であるウル以外にもフリッカが、今回はおまけにフィンとイージャ、ゼファーも居る。一日中仕事をさせているわけじゃないから暇なんだろうね。ゼファーは除くとして、検証人数が増えるのは良いことだ。


「まずはウォーターボールのスクロールだね」


 これを選択した理由は、単純に危険度が低いからである。うっかりファイアボールで引火したりしたら洒落にならない。あと風系は見えなくてわかりにくいので除外だ。

 まずわたしが使用してみて、大体これくらいと言う指標を見せてからウルに使用してもらう。

 しかし、ここでも難点があった。


「……我の水球……小さすぎないか……?」

「……そうだね……」


 ウルの言葉通り、ウルが出現させた水球はわたしの半分以下の大きさだった。あれぇ……?

 他の皆にも使用してもらったけれども、フリッカが一番大きく、次いでわたし、フィン、イージャの順だった。

 アースボールを使用してもらうと同じ順番で、ライトボールだとイージャとフィンの順番が入れ替わる。……どちらもウルの球は小さかった。


「……」

「……こ、これは多分だけど……属性適性と魔力量が関係してる、かな……?」


 ウルから何とも言えない無言の視線を向けられ、冷や汗を流しながら仮説を答える。

 属性の適性は数も威力もフリッカが断トツだ。その次がフィンで、イージャはまだよくわからない。でも適性のないわたしがフィンより大きな球を発生させているので魔力量にも依存している……と思われる。

 しかし、この仮説が正しいとすると、ウルも適性がほぼないことになるね……?


「ちなみにウル、魔力量はどんなもんだっけ?」

「……」


 目を逸らされた。少ないんだね。果たして適性のせいか魔力量のせいか……どちらにせよウルだとスクロールは使い物にならないことがわかってしまった。とことん肉弾戦特化なのね……天は二物を与えず?


 とりあえずスクロールは諦めて、他の属性攻撃系アイテムを試してもらったら、スクロールほどではなかったけど威力が落ちてしまっていた。うぅん……、もしやこれも魔力依存……そんな魔力関わる要素あったかなぁ……?

 結局のところ、ウルには矢とか槍とか投げてもらうのが手っ取り早いことが判明しましたとさ。……理由がわからなくてムズムズするよ……今後もたまに検証に付き合ってもらうしかないか……。

※矢や槍でも威力落ちてます。物理ダメージが入ってるだけで。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  適正適正とかかれていて、ムズムズします。  適正は“会計処理が適正に行われる”などの “正”しく “適”切に とかって意味を合わせた熟語。  今回のは“適性”ですね。  “適”し…
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