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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第一章:平原の狂える王

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決戦・上

 帰還石を使い、レグルス、リーゼたちの村の手前まで戻ってきた。

 前回と同じように丘の頂上まで登り、まだキマイラが移動してなかったことが確認できて少しホッとする。最悪、探すところから始めなきゃいけない可能性もあったからね。

 わたしたちはバフ付き料理を食べながら最終確認を行う。なお、料理のバフ効果はちょっと長くて三十分ある。モノによって増減もあるけれど。


「まず、瘴気のせいでウル以外の攻撃はほとんど効かないかもしれないことも想定しておいて」

「うむ」

「くっそ……オレにもっと力があれば……!」


 レグルスはバシっと拳を手の平に打ち付けて悔しそうにしている。

 多少なりとも(弟子にしてくれ攻勢に根負けした)ウルにリーゼ共々稽古を見てもらったものの、一日でそんな上達するはずもなく。

 ちょろっと見学していたけど、本当にリーゼの方が得意武器である槍を抜きにしてもレグルスより強かったですわ。まぁそのリーゼも槍込みでもウルには全然敵わなかったんだけどもね。

 わたし? 戦うまでもなく一番弱いよ! 弓なら負けないかもしれないけれど、射る前に近付かれて倒される自信があります!

 ……ぐぬぬ……わたしは作るのが仕事であって戦うのが仕事ではないのです! 言い訳ですね! ハイ!


「レグルスとリーゼはあまり離れず行動すること。決して無茶な攻撃は仕掛けず、どちらかになにかあったらサッとサポートに入ること」

「ウッス!」

「わかりました」


 なお、わたしも一応戦闘に参加するけれど、あまり期待しないでとは事前に言ってある。


「キマイラの注意点は主に二つ。一つ目は咆哮。気合で耐えて。二つ目は毒蛇尻尾の毒ブレスと振り回し攻撃。死角からやられないようにね」

「うぐ、父ちゃんの怒鳴り声怖いんだよな……」


 ……アレはそういう話なのだろうか? まぁこの前のようにただただ悲壮になられて動けなくなるよりは良いか……?

 それはさておき、回復アイテムはたんまりと渡してある。


「ただ、あれは普通のキマイラじゃない。他のパーツから攻撃が来ることだって十分にあり得る。例えば、オオガラスからウイングカッターとか、メイジ系モンスターを取り込んでいたとしたら他の魔法だって撃ってくるかもしれない。とにかく視野を広く持って、なにか兆候を感じ取ったら即退避すること」


 本体?はウルに対応してもらい、わさっと増えてしまった部分を少しずつ削ることをレグルスとリーゼにやってもらうことにした。まぁ獅子(にくしん)と戦わせるのが忍びないと思ったというのもあるのだけれども。

 不測の事態に備えて、痺れや凍結、呪いなど、今のわたしに作れる範囲の回復アイテムも色々と作成して渡しておいた。……どれも初級だから敵の強さによっては焼け石に水かもしれないけれども、やはりこれも『無いよりはマシ』精神で。

 あと、ホーリーミストは結局余り分をレグルスとリーゼが持つことになった。わたしはウルに持ってもらう予定だったんだけど、曰く「二人の方が耐性がなさそうだから」だそうだ。

 わたしの耐性はどんなもんなんだろ……?


「最後に。制限時間の十分が経ちそうになるかこれ以上は無理だと思ったら撤退指示を出すから、その時はちゃんと退いて。確かにわたしはあのキマイラの存在が許せないけれども……それはきみたちの命と引き換えにするほどではありません」


 瘴気さえなければ帰還石で即時撤退とかできるんだけどなぁ。瘴気があると周辺の浄化をしないと使用できなくなるんだよね……創造神の像も設置が大変になるし、そのせいもあって廃棄大陸の攻略は辛かったよ……。


「以上。なにか質問は?」


 三人の顔を順に見ていくけれど、意見は出てこなかった。


「ん、じゃあ……キマイラの獅子頭が東を向いてるからウルは北から、わたしたち三人は南から。で、ウルが攻撃開始したらこっちも突撃するから」


 本来ならわたしたちが陽動、ウルが奇襲をかけるべきなんだけどね……安全面から考えて却下されました。

 顔が増えているキマイラに対して死角とか意味あるのかな?という気持ちがないでもないけど、あまり考えすぎても動けないし、大元の司令塔は獅子か山羊だろうと仮定することにした。


「じゃあウル、また後でね。直前にホーリーミストを使用するのを忘れないでね?」

「……うむ」


 そう言って手を振り、わたしたちは一時的にウルと分かれる。

 丘をぐるっと回って村の南側から、見つからないよう距離を取ってソロリソロリと、それでいて可能な限り近付く。幸いにして丈の高い草が生えていることと、壊れた家屋がまだ残っていることで身を隠すことはできる。

 これ以上は近付けなさそうだ、と思ったところで停止。ホーリーミストを手に、ウルの行動開始を待つ。


 近付いてみると、キマイラの大きさがよくわかった。高さは三メートルくらい、全長は尻尾を除いて七・八メートルくらいだろうか。尻尾が長いので合わせると倍くらいになりそうだ。

 中ボスモンスターとしてはそこまで大きくないのだけれども、瘴気のせいかチリつく気配がここまで漂っている。

 そして……体中にくっ付いているパーツは、数えるのも面倒なくらいに多い。まじまじと見ると吐き気を催しそうだが、下手をするとあれが全て攻撃手段になるので目を逸らし続けるわけにもいかない。


 ……緊張で手が震えてホーリーミストを取り落としそうになる。

 こういう時はゆっくりと深呼吸だ。スーハー、スーハー……――


 ――喰らうがよい!

 ――ゴアアアアアッ!!


 来た!


「……行こう!」

「オウ!!」

「はい!」


 わたしたちはアイテムを使用しながら一気に駆け出した。




 先頭をリーゼが駆け、一歩遅れた位置にレグルスが、十歩くらい離れた位置にわたしが居る。

 ……ですよね! 身体能力の高い獣人(ビースト)に人間(ヒューマン)?がついて行けるわけないですよね!


 視線を先に向けると、ウルが真正面からキマイラとやりあっているのが見えた。何度か至近距離から咆哮もされているようだけれど、全く効いた様子はない。さすが。

 わたしの動体視力でなんとか追えるほどの速さで拳を繰り出しているが、触手のようにうごめく鬣や近辺に生えているパーツが邪魔していて本体に届く回数が少ない。鬱陶しそうに顔をしかめている。

 ウルの攻撃が効かないわけではなさそうだけど、パーツが多すぎるのとやはり瘴気で減衰されているらしい。戦闘が長引かなければいいけど……。


「ハァッ!」


 そしてリーゼがキマイラの元へ辿り着いた。ウルに気を取られていた蛇尻尾に槍を一閃するが、わずかに傷を付けただけに留まった。

 斬られたことでやっとリーゼの存在に気付いた蛇が何度も噛み付こうと体を伸ばしてくるが、リーゼはそれを危なげなくいなしている。

 合間合間に毒ブレスを吐かれても避けるどころか、わたしたちに掛からないよう誘導して吐かせるくらいの優秀っぷりだ。


「うおりゃあっ!!」


 続いてレグルスが臀部近辺のなんらかのモンスターのパーツに殴りかかる。

 キマイラは痛みに怯む様子を見せないものの、グチャっと潰れたのが確認できた。

 ……うーん、パーツごとによって防御力が違う可能性はありそうだな。


「リーゼはそのまま尻尾を引きつけて! レグルスはとにかく可能なとこからパーツを潰して!」

「わかりました!」

「おうよ!」


 後部で一番厄介そうな部分を三人の中で一番腕が立つリーゼに任せ、レグルスとわたしで少しずつキマイラの力を削ぐことにする。


「ハハハ! リオンの飯のおかげか体が軽いぜ! これならいくらでも戦えそうだ!」

「レグルス兄(にい)! 調子に乗らない!」

「うぐっ……いやでも、これホントに行けるんじゃね!?」


 確かに、わたしが想像していた以上に彼らは戦えている。

 ウルが正面でキマイラ中枢の意識を引きつけているにしても、獣人の大人たちが敵わなかった強敵を相手に戦えているのは瘴気対策ができているということが大きいだろう。

 痛い、というだけで集中できなくなってしまうし、そもそも攻撃するために近付くだけでLPが減ってやがては死んでしまうからね……。


「ほんとにもう、槍は得意じゃないんだけどな……っと!」


 わたしとて見ているだけではない。ホラーよろしく一杯生えてる手足にたかられかけていたがなんとか槍の柄や盾で弾き、一刺し放つ。


 ――ズブッ


 ギギュアアアアッ!


「……おや?」

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