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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第四章:熱砂の蹂躙された眠り

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水神とのファーストコンタクト

 何も出来ることがないので不本意ながらぐうたらしていると、何時の間にやら【破壊・レベル一】まで回復していた。

 一と二で作成メイキングの失敗確率が異なってくるか試したかったのだけれども、ウルに目が笑ってない笑顔を向けられたので断念。……どうやら今回も監視役を仰せつかっているらしい。見事に信用されてないのが悲しいけど、事実なのでぐうの音も出ない。

 ウルと拠点うちの見回りを兼ねて散歩をしてる途中でつい創造神像の前で聖水を作ろうとして怒られたり。フリッカに口頭で錬金を教えては息をするように作成メイキングしようとしてやっぱり怒られたり。おっかなびっくりゼファーに触れようとするイージャと、それを応援?しているフィンをぼんやりと眺めたり。アイロ村はどうしてるかなぁとぼんやりと考えたり。水神はどうなったんだろうと気になったり。

 久々の平和で退屈な日に(ウルには「ぬしは普段から働きすぎなのだ……」と呆れられた)ぼけーっと、弱まってきた、秋になりかけの日差しを縁側でウル、フリッカと雑談しながら一緒に浴びていたら。


 唐突に、懸念の一つの当人――水神が、目の前に現れた。


「初めまして、かしら。新しい神子さん」

「――えっ」


 何度か目を瞬かせるが見間違いではない。隣に肩を竦める地神も居るし、本物の水神だ。

 わたしが封印から解放した時に比べれば随分面積は減っているが……それでも未だに水神の体のあちこちが瘴気に蝕まれている。そんな状態で立っていて大丈夫なのだろうか……? ふわりと微笑む蒼海の瞳からは辛そうな感じは見られない。

 ……って、や、ヤバ……! わたしの腕はまだ治っていない……! 咄嗟に右腕を後ろに隠すように体の向きを変えた。

 けれども、どうやらそれは杞憂だったようだ。地神から問題ないと手を振られる。……そう言えばあの時「せめてもう一段階治るまで」って言ってたね? 報告はしてないんだけどわかるものなのかしらん……?

 そしてハッと自分が挨拶を返してないことに思い至り、慌てて縁側から降りて膝を付き、声もなく同じく驚いていたフリッカも状況に気付いてわたしに倣い、頭を下げた。


「は、初めまして、水神様。リオンと申します」

「あぁ、畏まらなくていいのよ。レーちゃんの時と同じように気楽にしてね」

「……れーちゃん?」


 クスクスと上げられる笑い声を聞きながらそろりと顔を上げ、地神の方を見る。微妙に嫌そうに顔をしかめているけれど否定はしない辺り、間違いなく地神レーアの呼称なのだろう。

 ……姐御な外見には似合わない可愛らしいあだ名だな、と考えたのが顔に出てバレたらしい、睨まれてしまった。おぉ怖い。

 フリッカとウルのことも軽く紹介をすると「レーちゃんに説明は受けているわ」と鷹揚に頷かれる。……どう説明されたのか気になるけどとりあえず置いておこう。ウルだけ跪かずに座ったままであったけれども、種族みため含めて特に咎める様子もなくて内心で安堵の息を吐く。


「神子リオン、お立ちなさいな」

「はい」


 水神の凛とした声に逆らうことが出来ず(元々逆らう気はないけど)、素直に立ち上がる。

 緊張で立ち尽くすわたしに水神は悠然と歩み寄り、目と鼻の先まで来て……正面から抱き締められた。

 えっ……なにごと。


「貴女のおかげで私は今ここにこうして居られます。解放して(たすけて)くれて感謝するわ」


 驚きのあまり放心するわたしの耳元で囁くように零れる言の葉に胸元に火が灯ったかと思えば、続けて触れる肌から伝わる冷たさに身が竦んだ。


「……あの、水神様、寒いのでしょうか……? 温かい飲み物を用意しましょうか?」

「え? ……あぁ、問題ないわ。でもレーちゃんに預けてくれてた果実のジュースは美味しかったからまたもらえると嬉しいわね」


 身を離しながらそんな答えを返してくる。杞憂だったようで良かった。

 しかし、終始機嫌が良さそうだったのに何処かムッとしたように眉根を寄せられて、何か不味いことを言っただろうか……? と身を固くする。

 ……そして、もっと驚くと言うか、耳を疑うようなことを言われるのであった。


「水神様、だなんて余所余所しいわね。貴女は私たちの一番下の妹のようなものなのだから、是非『お姉ちゃん』と呼んでほしいわ」

「………………はい?」


 妹? お姉ちゃん?

 ……ほわい?

 状況が理解出来ずに呆けているわたしの前で地神と水神が何やら言い合いを始める。


「……おい、飛ばしすぎだネフティー。リオンが混乱しているぞ」

「え? リッちゃんはメーちゃんの子なんでしょう? だったら妹よね?」

「確かにリオンは神子だがな……」


 リッちゃんってもしかしてわたしのこと? さっきまでの呼び方から随分と砕けましたね? 別にいいんだけれども。

 メーちゃんは……えぇと、創造神プロメーティアのことかな。地神も創造神を呼び捨てていたけれどもこれはこれでものすごく親し気で、本当にこのひとらの関係ってどうなってるんだろ……? もちろん神様たちの仲が悪いよりは良い方が歓迎すべきだけどもさ。


 神子と言う単語は字面通りに見ればなるほど神の子ではある。でもわたしは創造神の子では……あー、この体は創造神お手製の神造人間ドールだからある意味親とも言えるかも?って話を過去にもウルとしたっけか。

 六神たちも創造神の手によって作られたのだから、作られた者同士兄弟姉妹であるってか……? 何とも恐れ多いと言うか、わたしの場違い感が半端ないと言うか……。


 水神はニコニコとしているが、意見を翻す気はなさそうだ。ほんのりと圧を感じる。

 反応に困って地神の方に縋るような視線を向けると気まずげに目を逸らされてしまった。……ひどいよ!?


「あー、その、なんだ。ネフティーは水のように流されやすいようでいて頑固なところもあるからな……諦めろ」

「アッハイ……」


 どうやら仰せの通りにするしかないらしい。マジっすか……。

 まさかこの年にして姉(と呼ばなければいけないかみ)が出来るとは思わなかったよ……トホホ。

 水神は早く早くと待ち構えている。そうやって見詰められると余計に恥ずかしいんだけど……聞き入れてくれませんよねぇ。

 わたしは心の中で大きく溜息を吐いてから唾を飲み込み、意を決して、口にする。


「……ネ、ネフティー姉さん……」

「はい、よく出来ました」


 わたしの言葉に、水神は今日一番嬉しそうに頭を撫でてきた。

 ……だからこのひとら本当に頭撫でるの好きですね……? 神子は外見と実年齢が同一ではないとわかってるはずだけど……外見より幼く見られてたりするのかしらん……?

 まぁ胸を張って大人と言えるような言動は出来てないので甘んじて受け入れよう……でもやっぱり複雑。


「えーっと……ところで地神様。腕が治ったらの話ですけど、地神様の時と同じように出来るだけ拠点うちに滞在してモノ作りした方がいいですか?」

「まぁ、そうだな。……世話を掛けるだろうが、ネフティーの調子がある程度治るまでは頼む」


 しみじみとした口調で言われてしまった。封印前の地神も振り回されてたのかな……?

 なお、「レーちゃんのことはお姉ちゃんと呼ばないの?」と言われたけど、地神本人がめちゃくちゃ嫌そうな顔をしたので取りやめになった。助かりました。

 しかしこの法則で行くと水神は創造神のことをお母さんと呼ばなければいけないと思うのだけれども……突っ込むのはやめておこう。わたしまで巻き添えにされたら非常に困る。


 そんなこんなで少し雑談をしてから、本調子でない水神が「疲れちゃった……」と帰って行った。

 これがわたしと水神のファーストコンタクトであった。……うん、言っては悪いけど、わたしも精神的にちょっと疲れた……。


「……何と言うか……強く生きるのだぞ、リオン」


 終始置いてけぼりだった(きっと誰もついてこれなかっただろう)ウルのボソっと呟かれたセリフが、少し心に染みた。


「……神様って……その、自由ですね……?」


 恐らく頑張って表現をマイルドにしたのであろうフリッカのセリフに、激しく頷く。

 地神もアレだったけど、水神は地神とは別の意味で濃い性格をしている。残る四神もこんな感じでどこか尖っているのだろうか。今から考えるだけでも頭が痛い。だからって解放しないわけにもいかないけどね!


 ……うん、頑張ろう……頑張るしかない……。

これにて第四章は終わりです。ここまで長くなるとは思ってませんでした…_(´ཀ`」 ∠)_

次はいつも通り章間を挟みます。


本作品を面白いと思っていただけましたら、ポイントを入れてもらえると嬉しいです。

感想もありましたら是非に…。

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― 新着の感想 ―
[一言] >水神様、だなんて余所余所しいわね。貴女は私たちの一番下の妹のようなものなのだから、是非『お姉ちゃん』と呼んでほしいわ >……ネ、ネフティー姉さん…… ????(!!? ここから“お姉様”…
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