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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第四章:熱砂の蹂躙された眠り
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村の手入れ

 当然と言うか何と言うか、神子わたしにこの村に住んで欲しい旨の熱烈な要望が出たけれども、承諾など出来ず。

 かと言ってまるっとスルー出来る状況でもないので、少しだけ滞在してあれこれ改良をすることに。

 衣食住のうち、住はほとんど終わっていたし、衣もわたしの作成メイキングスキルでちゃちゃっと済ませた。教えられるほどの技術がないから、修復するか新しい物を作るしかないのよね。服作り、家作りが得意なヒトと交流出来ればよいのだけれども。……どのみち覚える時間がないか。世界を救った後の趣味として考えよう。何時になるんだ、って話だけど。


 食に関することとして、わたしたちは村の男性に案内されてオアシスまでやって来た。歩いて十分程で思ったより近い場所にあった。ここまで近いならいっそオアシスを中心に村を作れば楽だっただろうに、どうして微妙に離れてるんだろう?と思ったけれども、一応はわずかに存在している野生動物のためだとか。まぁやって来たところを捕まえるなり、見逃して繁殖してもらうなりじゃないと食料にも困るか。


「ふむん……?」


 オアシスの水を掬い、水質を確認してみる。

 ほんのわずかにだが瘴気に汚染されていた。

 ただちに健康被害が出るレベルではないけれども、ずっと飲み続けたら駄目なやつだ。


「あの村で、瘴気による汚染の症状が出た人は居ますか?」

「汚染の症状……ですか?」

「赤黒い斑点が体に出てきて少しずつ体力を奪っていくやつです」

「……数年前から、年に数名ですが発症して、治る者も居ますが死んでしまう者の方が多かったですね」


 一体どう言う状況なのか案内人さんに聞いてみたら、そのような答えが返って来た。

 やっぱりか、と唸るわたしの後ろでピクリとフリッカが反応する気配がした。……まぁうん、きみにとっては耳に痛い話かもしれないね。

 瘴気に汚染されたとしても必ず死亡するわけではない。瘴気のない場所である程度の時間が経てば自然に治る。ただ、この村の場合は水と言う必ず摂取しなければいけない物が汚染されておりどうしても定期的に摂取してしまうこと、アルネス村では知らずに摂取させられた上に衰弱まで併発させられたので死亡率が高かったのだろう。

 しかし数年前か、つい最近だな。いよいよ世界が終末に近付いた……のかもしれないけれど、この地の神子は何をやっているのだろう。手が回らないのかな?


「わたしが浄化しておきますが、こまめに水質チェックをして、水に汚染が見られたら浄化してから使用するように、人に汚染が見られたら強めの聖水を使うように司祭さんに伝えてください」

「わ、わかりました」


 神子ではない一般人に瘴気が浄化できるかは怪しい。けれどやらないよりはマシだろう。

 オアシスの周囲に聖石を設置して聖域化し、水に浄化用アイテムを投げ込んで正常化させる。ただこれは根本の原因が別のところであれば一時しのぎしかならない。しばらく後に様子を見に来て、また汚染されているようだったら根本を探しに行く……行けるといいな。


「さて、種を植えられるようにしないとね」


 村の食料事情は飢餓状態と言うほどでもないけれども、十分でもなかった。

 食料をただ分け与えるのは簡単だけれども、それでは全くもって解決にならない。増産出来るならしてしまおうと言う魂胆だ。

 人はお腹が空くとロクなことを考えられなくなるからねぇ。ご飯が十分で余裕も出来れば、モノ作りに力を入れてくれるかもしれないし、ご飯作成自体もモノ作りの一環で一石二鳥作戦である。


 地面の如何にも栄養のなさそうな土を、わたしの手持ちのただの土と入れ替える。腐葉土も取り出してまぜまぜする。

 ……うぬぅ、アルネス村の死んだエルフの話を思い出してしまった。振り払うためにも一心不乱に土入れ替え&混ぜ作業を続けて行く。

 あまり面積を広くしすぎても水を使いすぎて渇水になってしまうかもしれないので、適当なところで終了にした。


「畑の準備も出来たし……種は皆で植えていこうか」


 わたしは手持無沙汰で見学していたウルとフリッカ、ついでに案内人さんに声をかけた。彼一人だけ何もしないままと言うのも居心地が悪かろう。


「これは何の種なのだ?」


 ウルが種を潰さないよう恐る恐る摘まみながら尋ねてくる。


「ウルが持っているのはスイカだね。他にもトウモロコシとかジャガイモとか色々植えてみようかなと」

「……砂漠でも育つのですか?」

「正直試してみないとわからないけど、乾燥耐性を付与したから育つ……んじゃないかなぁ」


 心配そうに聞いて来るフリッカにわたしも曖昧に答える。拠点は普通の平原だし、種を作成してみたものの砂漠で育てたことが一度もないから断言は出来ないんだよね。

 この答えには、案内人さんが目を白黒とさせた。


「あ、あの、乾燥耐性を『付与した』と言いましたか?」

「そうですよ」


 種への付与エンチャント。地神の加護で知識を得たことで、出来るようになったものの内の一つ。

 料理で出来上がる食べ物……は勝手に付与されることが多いな。それ以外では武器防具に付与したことはあるけれども、種にしたのは初めてなのだ。ゲーム時代には出来なかったからね。

 砂漠を旅することで『食糧不足の村があったら役に立つかな?』とあらかじめ研究、作成しておいたものである。早速使うとは思ってもなかった。そんなに数はないけれど、畑の面積からすれば丁度いいだろう。


 いやしかし、地神の加護って本当に便利ですわぁ。旅をするなら断然風神の加護が欲しいと思っていたけれども、汎用性の高さでは地神の加護が一番なのではないだろうか……?

 他の神様の加護も良いものだといいなぁ。……まず封印を見つけるところからだけどもさ。


「……貴重なものを、宜しいのですか?」

「まぁ初めて植えるので、半ば実験のようなものと思ってください」


 ごくりと息を呑む案内人さんに、わたしはあえて軽く言う。実験も兼ねてるのは事実だしね。

 後ろでウルがボソッと「リオンのことだから、また大変な事態になるのではないか……?」などと呟いていたけどスルーである。案内人さんに聞こえない声量で言ってたことだけは評価するけど。否定しきれなくて耳に痛いけれども、事情を知らない人が聞かされても不安になるだけだろうし……。


 最初だけわたしが実演で種を植えてから、残りは三人に任せることに。

 その間にわたしはサボるのではなく、畑に自動で水を散布する装置と荒らされないよう防護柵の作成をしておく。経年劣化やら天候やらで壊れた時に修理出来る人が居るかどうかが問題だけど……先のことは置いておいて、とりあえず説明書は用意しておくか……。仕組み自体はそんなに難しくないのだし、頑張ってほしい。


 そんなこんなで、村の食糧改革(実験)を二日かけて行いましたとさ。



 次の村……今度こそ神子の居るアイロ村へ向かうことにした。あと今更な話だけど、この村に名前はないらしい。訪れる人がほとんど居ないので付ける必要がなかったとか。

 村長さんから方角を教えてもらったので、辿り着ける、はず。いやまぁ、目印のない砂漠で村長さんの方向感覚が正しいとも言えないし、多少のズレはあったとしても仕方がない。途中に瘴気とか見つけたら進路変更せざるを得ないし余計にね?

 わたしたちは村人総出で見送られ、背中に惜しむ声や声援を受けながら歩み始める。ちなみにウルぞりは村人から見えなくなってから出す予定だ。フリッカとて恥ずかしいらしい。


 それにしても……この二日間、キリク少年とは一言も話すことはなかった。

 目は何度か合ったのだけれども、向こうがサッと逸らすのだ。ウルが怖くて避けてるのか、何とも言えない心境である。

 万人に好かれることも、分かり合えることも不可能だとは思ってるから、割り切るしかないんだけどもね。


「いえ、あれは引っ込みがつかなくなっているだけだと思いますよ」


 フリッカの想像では、謝るに謝れないのでは、と。一度の暴言だけならともかく、何度も睨んできては何度もウルに追い払われていたせいか、今になって自分の行為を思い返して近付けなくなったようなイメージだったらしい。


「どうしてそう思ったの?」

「リオン様の放った聖なる炎を見て、感動すらしているように見受けられましたので」

「……感動、って……」


 ただ燃やしただけですよ……? いくら聖属性だからって、葬式で感動するものか……?

 などと内心で考えていたことがまた顔に出ていたのか、フリッカが付け足してくる。


「美しさすら感じさせる炎を纏う貴女は、まさに神の遣いと呼ぶに相応しいものでしたよ」

「美しさ云々はわからぬが、我から見てもかなり派手なことになっていたぞ」

「えぇ……」


 どうやら随分と恥ずかしいことをしていたみたいだ。

 次回は(もうこれっきりと思いたい)気を付けよう……。

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― 新着の感想 ―
[一言] そう言えば、魔石とか水石とか呼び名は放っておくとして、水がずっと出続けるクラフト品とか無いんですか? ゲームによっては小ネタとして、システムを悪用した無限水源(のみならず、ハチミツや溶岩で…
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