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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第四章:熱砂の蹂躙された眠り

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砂漠へ出発……の前に

 ついに地神の体が治った。それに伴い、長期の外出が解禁されることとなる。

 これで行きたい場所が遠くても目指すことが出来る。長い休みであったので心身は万全で準備は万端だ。

 まず手始めに向かう場所は――


「お米を探しにバートル村から西へ行きます」

「む? 東にある地神の領域へ向かうのではなかったか?」

「お米を探しに行きます」

「……そうか」


 わたしは真顔で主張を重ね、ウルは「いつものことか……」とでも言いたげな顔になりつつ仕方なさそうに受け入れた。

 だが待ってほしい、きみは一つ忘れていることがある。


「お米は食材だよ?」

「それはすでに聞いたが?」

「ご飯のレパートリー増えるよ?」

「……む」


 フフフ、わかる、わかるよ。興味が沸いたね?

 お米。それは大体の日本人には欠かせないソウルフード。毎日、それも三食食べてる人も居るのではないだろうか? わたしはパンも麺も好きだけど。

 まずそれ単体でも食べられる。さすがにそれは……と言うならおにぎりにするのも簡単だ。塩だけのものから梅や鮭、シーチキンなど中身の可能性は無限大である。

 そして実に様々なおかずに合う。味噌汁や漬物など最高だ。卵かけご飯も良い。カレーライス……は無理だな。いや、スパイスを探せばいけるか……?

 あ、地神からもらった知識で大豆から味噌とか醤油とか作ってます。ウルには「なんだそれ……」と匂いで顔をしかめられてしまったけど、焼き魚にかけたり和風ソースを作ったりした時は喜んでくれた。しかし真価を発揮するのは米と組み合わせてからだと言っても過言ではない。

 それから――


「リオン、わかった、わかったから。行くから落ち着くがよい!」


 おっと、つい早口&長文語りになってしまった。

 ウルは引いてしまったけれども、それでも料理は楽しみにしているようだ。尻尾が揺れているのが見えているからね!

 ……いやまぁ自分でもアホかとは思うのだけれども、普段食べてたものが急に食べれなくなると、食べたい気持ちって強くなってくるよね。



 今回の探索メンバーはわたし、ウル、フリッカ、レグルス、リーゼだ。スライムの時と違いフィンはお留守番となる。川を越えた場所で活動させるにはバートル村など人が住んでいる場所の近くか、風神を解放して管理が再開されてからだね……。

 グロッソ村に預けようかとも考えたけど、ゼファー、地神と一緒に拠点に残ると言った。ゼファーなら拠点近辺のモンスター程度蹴散らしてくれるし、空の旅を重ねたことで仲良くなってるからいいか。地神は元々ついて来る予定もなかったし、わたしが作った祭壇の近くに居た方がいいらしい。くれぐれもフィンをよろしくとお願いしておいた。万が一の非常時にはグロッソ村に避難してもらうことになっている。

 ご飯がちょっと不安だけど、フィンも多少料理出来るようになったから大丈夫、だと思いたい。食材に関しては畑とか果樹園とかあるので拠点が火事にでもならない限り尽きることはない。

 ……ものすごくどうでもいいことではあるけれども、酒が保管されている蔵の鍵はフィンに預けておいた。「地神がねだっても一日の規定量以外あげちゃダメだよ?」と添えて。困ったような顔をしていたけど、使命を果たしてくれると信じよう。地神も幼い子を相手に高圧的になったり逆にへりくだったりもしない……はず。


 なお、出掛ける前にきっちりと地神から加護(完全版)をもらっている。

 ……地神の体が治ったから、と言うのもあるのだけれども、何故か早めにもらっておかないといけない気がしたのだ。

 知識系の加護はわたしだけだったけど、物理耐性の方はみんながもらっていた。本来はそんなにあげるものでもないらしいけど……世界を正常にするためでもあるしね。え? 早速寄り道するくせに、って? モノ作りは創造神のためになるからいいのです。



 帰還石でバートル村へと飛び、軽く挨拶と情報収集してから西へと歩く。そこまで急ぎでもなかったので馬を借りるのはやめておいた。彼らにとって貴重な労働力だからね。野生の馬を見つけることがあれば是非とも確保しておきたいけど、遭遇出来るかどうかは全くの運だ。

 他愛もない話をしながら、旅慣れしていないフリッカのペースに合わせてのんびりと進む。申し訳なさそうにしてたから、一頭だけでも馬を借りておけばよかったかな……? まぁ体力を付けるのも大事だし、少しずつ慣れてもらおう。……そう考えると、わたしも随分と慣れたものだなぁとしみじみと思ったりもした。

 初日は馬にも瘴気にもモンスターにも遭遇することなく、平和に夜を迎えようとしていた。


「そう言えば、こうして野宿するのは初めてですね」

「あれ、そうだっけ」


 食事を終え、テントに入ったところでフリッカが言う。収容人数を考えて最初はリーゼと一緒に寝ようとしてたけど、あれこれ言われて遠回しに送り出されたらしい。……まぁ、うん。

 でも確かに、フィンのこともあってずっと拠点で待機してたし、地神が来てからも遠出出来なかったし、言われてみればそうなのか。


「……野宿とは、こんなに楽なものなのでしょうか?」

「待てフリッカ、その認識は危険だ」


 ウルがいつものごとくダルそうにしながらも、苦笑とともにツッコミを入れる。

 わたしはわたしが居ない状態がありえないのでわからないけど、レグルスとリーゼからの感想でも随分楽だと評判ではあった。同時に「慣れるとヤバいけど」らしい。


「聖水……は用意出来るかもしれぬが、聖水でしっかりと夜間の安全確保が出来て、見回りゴーレムによって夜警で起きている必要もなく、上質なテントと寝具で寝ることが出来るのは普通と思わぬ方が身のためだぞ」

「……なるほど」


 うーん、普通?の野宿も経験させた方がいいのか、基本的にわたしが居るから必要ないのか。トラブルでわたしとはぐれたりしてもまず帰還石を使ってもらうからねぇ。わたしと違ってアイテムボックスに収納出来るアイテム数は少ないし、全員に野宿用品一式を持たせるのはもったいない気がするんだよね。でももしもの備えはあった方がいいだろうし……悩むところだ。


「……フィンとこんなに離れて寝るのも、初めてかもしれません」

「……寂しい?」


 ポツリと零された呟きには微かにそのような色が混じっていたのだけれども、フリッカはゆるゆると首を横に振る。


「私はリオン様もウルさんも居るので大丈夫です。ですので、フィンの方が心配ですね」

「あー……」


 わたしと結婚した(一応、が付くレベルではあるけれども。主にわたしのせいで)のに、毎日一緒に寝ないのはそれが理由だったりする。

 フィン本人は平気と言い張っているのだけれども、やはり根っこでは寂しいらしく「大丈夫なのに……」とぶつぶつ言っては寝入る時にはフリッカの服をつまんでいるらしい。わたしとしても複雑な心境である。


「なるようにしかならぬし、二・三日もすれば一時帰還するのだ。その時に構ってやればよかろう。ぬしもしっかり寝なければ明日に疲労が残るぞ」


 そう言いながらウルはぐったりとして一足先に寝息を立てた。……この子の夜の弱さも何とか出来ないかな? 今はまだしもこれから先、夜間の襲撃とか発生した時には大変になるのが目に見えてしまう。

 ……とりあえず今日は置いておこう。わたしがさっさと寝ないとフリッカも寝ないだろう。


「ウルの言う通り、ちゃんと休まないとね。わたしたちももう寝よう」

「……そうですね、おやすみなさいませ」


 わたしが寝転がるのにならってフリッカも寝袋に包まり、外のせいか遠慮がちに手を伸ばしてわたしの服の裾をつまんで程なくして眠りに落ちる。

 ……これ、ひょっとしてフィンと同じ姿勢なのでは……? さすが姉妹……?



 後日の話であるけれど、やはりフィンは寝不足気味になっていたらしい。日中うつらうつらしているところを地神が目撃してこっそりと報告をしてきた。

 フリッカがやんわりと尋ねると、ただでさえ人の少ないウチから大半の人が居なくなって寂しかったそうだ。

 うーん……拠点に常駐してくれる人を募集した方がいいのかしら……。

寝袋はミノムシみたいなやつではなく、布団っぽい形状で想像してください。

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