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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間三

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地神からの要請

「リオンが干物のようになっておるな……」

「たった数日なのですけれどもね……」


 日当たりの良い縁側――宿泊棟は和風家屋ではないのでそれっぽいだけの板張りの部分――で、浜に打ち上げられたアザラシのようにぐてっと寝転がっていたら、微かにそんな声が聴こえてきた。

 返事をする気力もなく、まさしく干物なのかもしれない。いや、旨味成分凝縮とかされてないので、ただの屍である……?


「リ、リオン、元気を出すがよい」


 死んだ魚もかくやの虚ろな生気のない目で微動だにせずにいたら足音が近付いて来て、わたしの上から恐る恐るご機嫌伺いされる。

 しかし、出せと言われても出ないものは出ないのである。ガソリンが空っぽの車が走ることは出来るのか? いや出来まい。

 モノ作り禁止令が出されてから数日。

 たかが数日。されど数日。

 わたしのガソリンはすっからかんになってしまい、生きるのも億劫な状態となってしまったのだ。


「む、むぅ……リオンよ、モノ作りが好きでたまらないのはわかったが……他に何か楽しみはないのか……?」


 楽しみ、ねぇ……。

 これが日本だったらゲームが出来なくてもマンガとかアニメとか、何はなくともネットサーフィンとか、ヒマ潰しにはこと欠かなかったなぁ。アステリアにはそのどれもないのだけれども。

 しかし、妙に思わないでもない。

 日本で過ごしていた頃はかなりの時間をゲームにつぎ込んでいたとは言え、ゲームが全てではなかった。他にも色々と手を出していた。

 それが何で今は、モノ作りが出来ないだけでこんなに萎びているんだろう? 体ががっつり神子になったから精神が引っ張られてるのかしらん……。

 うーん、モノ作り以外でも時間が潰せる、遊べるようなもの……トランプとかボードゲームとか作っておくか……?

 ……手が治ってからだけどね……ウフフ……。

 そんなことを考えながらのっそり身を起こしたら、ホッとしたような気配が漂ってきた。ごめんなさいねぇ。


「ねぇフリッカ」

「何でしょう?」

「エルフの人たちって、ヒマな時間は何をしてるの?」


 正直言ってモノ作りが出来ない現状、何をして過ごせばいいのかわからない。

 趣味を兼ねているとは言え、ものすごいワーカーホリックなのでは……?と脳裏を過ったりしたがシッシと追い払う。


「基本的に仕事の時以外は……魔法の訓練をしているか家のことをしているか……ゆっくり休んでいるか、でしょうか」

「……つまりわたしは休むしか選択肢がない……?」


 手を動かすと傷に響くのでこれも禁止されている。散歩くらいなら出来るけど……ずっと歩いているだけなのもそれはそれで退屈だ。ついでに言えば拠点で気になった部分を改良or修繕したくなったり素材を収集したくなってくるので、ただ歩いてるだけと言うのも難しい。難しいったら難しい。

 むしろ休み疲れているくらいなのに、これ以上どう休めと……!

 はぁ、と溜息を吐きつつ「そう言えば」と気になったことを聞いてみる。


「ゼファーはどうしてる?」

「レグルスとリーゼが来ておるでな。フィンも連れて外で遊ばせておる」

「そうなんだ。……しかし、フィンって意外と慣れるの早いよね」


 ウルはまだしも、ゼファーはドラゴンですよ? ケガさせないよう言い聞かせてはいるけど、それにしたってよくもまぁ一緒に行動出来るものだね。


「アルネス村では私の後ろをついて歩いてばかりでしたのに……」

「お姉ちゃんとしては寂しい?」

「そのような感情もあるにはありますが……」


 親離れならぬ姉離れでも始まっているのか、その成長は微笑ましいけど当人としては寂しい気もしてしまうのだろう、と思ってたのだけれども、それだけではないようで。


「おそらく……ここでの生活に安心しているのでしょうね」

「――」

「ゼファーに関しても、リオン様とウルさんが警戒を露わにしていないので大丈夫、と言う信頼があるものと思われます」


 後ろをついて歩かなくなったのは、『後ろをついて歩かなくても大丈夫だから』と。

 怯えることなく、隠れる必要もなく。自由に自分の足で歩ける。

 フリッカの件でわたしにはツンツンしてることの多いフィンではあるけれども……そのような信用をしてくれてたなんて、嬉しくなってくる。


「それは……もっと頑張らないとだね」

「リオン様はそのままで良いと思いますよ」

「そうだの。リオンが張り切るとロクなことにならない気がする」

「ちょっとウル!?」


 しんみりした気持ちが吹っ飛んで台無しだよ!?

 わたしが唸っているのに、ウルは生温かい視線を向けてくるばかりだ。おのれ……!


「ですので、リオン様」

「うん?」

「私を取って(・・・)くださっても良いのですよ?」

「――ブフッ」


 取って、って……いやいやいや!?

 わたしは別にフィンのことを考えて何もしてこなかったわけじゃないんですけど……!?

 何も言えずに口をパクパクとさせていたら「それはそれとして」と手を横に置くジェスチャーをして話を逸らしてくれた。ヘタレすぎて気を遣わざるをえなかったのか冗談だったのか……うぬぅ。


「私としてはもう少し構って欲しい気持ちもあります」

「……リオン、ここ数日はずっと心ここにあらずでほけーっとしておったからのぅ……我も構ってほしいぞ」

「あー……」


 確かにしばらくの間、魂が飛んでて会話もおざなりだった気がする。モノ作りや体を動かすのは無理でも、口を動かすのは出来るのにね。

 それで二人に寂しい思いをさせていたのだとすると……自分のことばっかりで反省しなきゃなぁ。

 いやしかしなんだ、こう言うのはちょっと照れるな。

 わたしはその照れをごまかすように頬を掻きながら、こう提案をした。


「じゃあ……おやつでも食べながら、ゆっくりおしゃべりでもしようか」


 ウルもフリッカも、笑顔で頷いてくれた。




 更に二日ほど経ち、ようやく【汚染:レベル二】に下がった。

 ここまでくればもうすぐ治るだろう……長かったぁ……。十日も何も出来なくなるなんて予想だにしなかったよ。もう汚染状態にはなりなくないなぁ……ブルル。

 モノ作り欲の解消はもちろんだけど、必要だったり便利だったりで作っておきたいアイテムがいっぱいあるのだ。今すぐ動き出したい衝動を抑えながら脳内でリストアップしておく。


「後は……次に何処に行くか考えておかないとな」


 バートル村から北、東、西、どっちがいいかなぁ。村の人たちも捜索は続けてくれてるし、何か新しい発見とかあったりしないかな。

 アレコレと次の旅の計画を立てようとしていたのだけれども、意外なところ……地神からストップがかかった。


「リオン、悪いけどしばらくは遠出しないでもらえるかい?」

「え? どうしてです?」

「アタシはまだアンタほど回復していなくてねぇ」


 そう言う地神の体のあちこちにはまだ瘴気の汚染が見られる。さすがに多少は回復しているみたいだけれども、全快にはまだ時間が掛かりそうだ。

 しかし……それとわたしの遠出と何の関係が?


「アンタが近くに居てモノ作りしてくれると、その分創造の力で回復しやすいんだよ。だから日帰り程度なら構わないが、しばらくここを長期間空けるのは避けてくれると助かるんだ」

「なるほど?」


 ここに来てからフリッカとフィンからもエネルギーを得ているらしいけれど、微々たるものなのだとか。

 まぁ地神が早く回復してくれるのはわたしとしても助かるので、その提案を受けるのはやぶさかではない。むしろ。


「……何でそんなニヤニヤしてるんだい」

「だってつまりは『たくさんモノ作りしろ!』ってことですよね?」

「……間違っちゃいないが……」


 地神にめちゃくちゃ渋い顔をされた。解せぬ。

 でもそれ以上に嬉しさが沸き上がってきて仕方がない。


「フフフフフ、ウチでの生活を充実させるにはもってこいですね……期待に沿うよう頑張っちゃいますよ?」


 何から作ろうかなぁ。いや片っ端から全部作ればいいよね!

 よーし、やるぞー!!


「……注いじゃいけない燃料を注いだ気分になるのは何でなんだろうねぇ……?」


 治った後のことが楽しみすぎて、そんな地神のぼやきはわたしの耳には入らないのであった。

4章に入る予定を変更して、いわゆる日常(?)編をお送りします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 干物主人公リオンちゃん ………………。 …………。 ……。 うん。 へんなの被ってSD化してる様子を妄想してみたけど、周りの連中がぬいぐるみ兼抱き枕にしてヤベー事する展開しか出てこな…
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