黒猫と出会うのはきっと良いことの始まりさ
皆様初めまして。初執筆なのでつたない文章だとは思いますが、最後までお読みいただけると幸いです。
「エガキ———!エガキ——!」
誰かが自分の名前を叫んでいる、そんな夢だった。
目が覚めると知らない部屋だった。
なぜ僕は見覚えのない部屋に寝ているんだろうか?
あたりを見回すと人は居なく、ベッドがいくつかおいてあるだけの質素なへやだった。
どうやら僕一人のようだ。
ここはいったいどこなんだ…思考を巡らせていると扉が開いた。
扉を開けたのは10代半ばほどの金髪の少女だった。
「*******」
彼女は何か言葉を発していたが僕には何語を話しているのか理解できなかった。
僕が呆けていると彼女は小さく首をかしげた。
……かわいい
僕はなにを言っていいのかわからず、少女もしゃべらずない。沈黙が続く…
気まずくなったぼくは、一度思考を整理することにした。
ここはどこなのだろうか、なぜ言葉が通じないのだろうか。
そう考えていると僕の寝ているベッドのまくらがもぞもぞと動く。
僕がまくらにしていたのは黒猫だったようだ。
その黒猫が僕の膝の上にちょこんと座りこう言ったのである。
「その疑問にはボクが答えよう!」
えっ?
「おっと、驚かせてしまったようだね!ごめんごめん!」
中性的な声の黒猫はケタケタ笑いながら続けた
「君が驚くのも無理はない、ボクは確かに見た目はただの猫だ。
でもね、ボクはこう見えてすごーい存在なんだ!でもボクが言葉を発しているように聞こえるのは君にだけさ!
さて、君の疑問についてだけど、ここはツヴァイン王国の僻地にあるノワール領さ!
と言ってもね日本の地名ならともかく、この世界の地名なんて君に言っても理解できないだろうから、あえてこう言おうかここはーーー異世界さ」
いせ、かい?
異世界っていうとあれか?やれ転生だの魔王だのの異世界か?
「その通りさ!そんでもって言葉が通じないのはここがツヴァイン語を公用語にしているからだね!」
僕の思考を読んだかのように黒猫は答える。いや、思考読んだかのようにではなく読んだのだろう。
「うんうん!物分かりがいいんじゃないかなっ?その通りさ!」
黒猫が話を進めるねと言ったところで、少女がなにか呟きながら黒猫を撫で始めた。
「わわ、ボクを気安くなでるなぁ!」
黒猫はくしゃくしゃ撫でられながら僕に告げる。
「この子に撫でるのをやめさせるように言ってくれぇ…」
いやでも、言葉通じないし…
「君の言葉はきっと通じるさ!ものはためしだ!言ってみてくれ!」
わ、わかったよ
「あ、あの、その子嫌がってるんだ。やめてあげてくれないかな?」
そう伝えると、少女は顔を真っ赤にして撫でるのをやめてくれた。
少女は顔を真っ赤にしながら慌てたように部屋を出て行った。
「ふー、助かったよ!ありがとうね!エガキくん!」
あれ、僕の名前ーー
「君のことなら知ってるよ!黒野描くん、17歳。だよね?」
なるほど、確かにすごーい存在を自称するだけあって、そのくらいわかるのであろう。
「さて、話を進めようか。これから君には恩恵というものをあたえるよ。わかりやすく言うならチートだね。
恩恵はボクからの計らいで7個与えることにしたんだ。その代わり君にはこの世界を救ってもらう。
この世界はいわゆる剣と魔法の世界でね?当然魔物も生息しているんだ。そして今から5年後に魔王が復活するんだ、その魔王を君にどうにかしてもらいたい。協力して貰えないだろうか?」
協力って、こういうのって僕に拒否権ってないんじゃないか…?
「その答えはイエスってことだねっ!恩恵の話だけど6つはボクから与えよう、ひとつはいつでもいいから君が決めてくれ!
ボクが与える恩恵は言語理解、即時記憶、回復魔法、無限収納、錬金術、そしてステータスの6つだ!
ひとつずつ説明するね!言語理解はこの世界のありとあらゆる言語を理解し使用できる恩恵だよ。
次に即時記憶だね、一回見たもの聞いたことは忘れないんだ!ふふっ、便利だろう?
次に回復魔法だね、文字通り回復魔法だ!即死じゃない限りどんな傷でも治せるように最高クラスの回復魔法を与えたよ!
ただ回復魔法に振り切ってしまったからボクからは攻撃魔法を与えることができなかったんだ…そこはごめんね!
といっても、すべての属性に適性は付けておいたからあとは君の努力次第かな!
次の無限収納も文字通り無限にものをしまえる収納さ!君が念じれば物が出し入れできるようにしておいたよ!ただし、大きさや重量の制限はないけど生きているものはしまえないんだ。
錬金術は簡単に言うとアイテムを作成できる恩恵だね!無から物が作れるわけじゃないけど錬金術っていうだけあって多少無理な作成もできるんだっ!すごいだろっ!!
最後にステータスだね。実はこの世界にはレベルという概念もスキルという概念もないんだ、といってもそれは君の世界でも一緒だったろう?
レベルっていうのは、なにかを鍛えたから何かができるようになる、けどそれは目に見えないものなんだ。
スキルも本来ならコツをつかむようなことをしなきゃいけないんだけど、それを覚えられるようにしたものさ
だけどこのステータスの恩恵はその見えないはずのレベルとスキルツリー、そして君の状態を可視化したものなんだ!
ボクから与えられる恩恵に関してはこんな感じかな!このくらいしかしてあげられなくてごめんね。」
なるほど…話を聞く限り十分だった。というかそんなに頂いてしまっていいのだろうか?
「キミにはなにより生きていてほしいからね!」
黒猫はそう言ってくれた。ありがたい。
「ま!とりあえずこんなところかな!ボクって説明するのヘタだから分からないことがあったらなんでも聞いてくれ!ボクはキミとともに行動するよ!」
分かった、これからよろしく。ところで君の名前はなんて言うんだ?
「名前?うーん、そうだねじゃあシャノって呼んでよ!」
わかった。改めてよろしくシャノ!
「あ、大事なことを言うのを忘れていたよ!君には恩恵とは別に不思議な力があるんだ。」
不思議な力?
「そう、これはボクが与えた恩恵とは違う力なんだけどね。君にある力は言霊っていうんだ。」
コトダマ…
「この力は君の意思が乗った言葉がそのまま具現化する力なんだ。だから余り不用意に言葉を発しないほうがいいよ。」
だからさっきの少女は撫でるのをやめたのか?
「そういうこと!」
普通の会話以外はあまり言葉にしないほうがいいのか…
まぁ元々そこまで口数の多いほうでは無かったと思うし、そこまで気にすることでもないか。
それにシャノには念話?思えば通じるしな…。
シャノからこの世界のことを聞いて数分後、少女が部屋に戻ってきた。
「********?」
相変わらずなんて言ってるのかわからな
「お腹はすいていませんか?」
いや、分かるぞ!これが言語理解か…
思考を巡らせると「ぎゅぅ」とボクのお腹が鳴った…
僕は少女に向かい頷いた。
「はい。用意しますねっ」
少女は部屋をまたトタトタと出て行った。
数分後少女が戻ってくると温かい食事をトレーに乗せていた
「こんなものでよかったら食べてくださいっ!」
僕は笑顔で頷く
食事を終え少女に「ごちそうさま、ありがとう」と伝えると
少女はトレーで顔を隠しながらこくりと頷いた。
「いろいろと世話を焼いてくれてありがとう。僕は黒野エガキ。黒野が家名だよ。君は?」
「あ、私はエラと申します!気軽にエラと呼んでください!」
「よろしくね、エラ。ところで僕はどうしてここにいるのかな?」
「エガキさんは森で倒れていらっしゃいました、もうお加減はよろしいでしょうか?」
「うん、おかげさまでバッチリみたいだよ」
森で倒れていたのか…
「エガキさん、お姉さまを呼んできますので、そのまま少しお待ちください!」
そう言ったエラさんが連れてきたのは僕と同い年くらいだろうか?金髪の美少女だった。
「エガキ様、先ほどは魔物からお助け頂きありがとうございました。わたくし、この領地の当主ダール・ノワールの娘シャルロット・ノワールと申します。」
魔物?助けた?
「あ、そうそう!そういうことにしておいたんだった!言うの忘れてたよ!」
シャノが笑いながらそう言った。
確かに、突然異世界に放り出されてもなにもできないからな…
こういった待遇はありがたいのかもしれない。
「いえ、危ないところを助けるのはお互い様ですよ。僕も今こうしてお世話になっているのですから。」
「そうおっしゃっていただけると幸いです。どうぞごゆっくりとおくつろぎください。」
そう言ってシャルロットとエラは退室していった。
さて、これからどうしたらいいのだろうか?
「んー、そうだねぇ。とりあえず無限収納の中に必要になりそうなものは入れておいてるから確認してくれるかな?そのあと方針を決めよう!」
無限収納ね、確か意識をすると
目の前に文字列が広がる。
なるほど、ゲームの画面みたいだ。ジャンルごとに分かれているのか。
大切なものという項目が目に入る。
なんだろう、これ?
意識を大切なものに向けると
身分証、お金、地図など色々出てくる。
身分証に意識を向ける。
黒野 エガキ 15歳 種族:ヒューマン
年齢が変わっている…。種族ってあるくらいだからやはりエルフとか獣人とかいるのだろうか?
次に、お金…持っていたのか。お金に意識を向けると100万ゼピと出てきた。ゼピというのはこの国の金貨の単位らしい。1ゼピが金貨一枚、日本円でいうと1万円相当らしい。ゼピのしたにセンスという単位もあり1センス100円で100センスで1ゼピらしい。
つまり100万円相当を持っているということか。しばらくは過ごせそうだな。
地図の項目に意識を向けると二種類あり地図とマップという項目が出てきた。地図に意識を向けると紙媒体の地図が出てきた。どうやらこの国の地図らしい。
マップに意識を向けるとマップが出てきたのだが、これはゲームの画面上のマップみたいな感じで、手元にあるわけではなく見えているという表現が正しいのかもしれない。
自分の周り以外黒いのはマッピングして埋めていく方式なのだろう。
大切なものの項目から戻り、他の項目を見ていく。
大切なもの、装備、ドロップアイテム、etc。
一通り見終わるとシャノが
「ステータスとスキルツリーも見ておくといいよ」
というのでステータスを意識する。
黒野 エガキ 15歳 種族:ヒューマン
レベル:1 称号:なし 職業:回復術師
HP:500/1000 スキルポイント:10
主要な項目が表示される。
あ、レベル1なんだ…。MPゲージはないのか?
「あー、エガキは無限みたいなもんだからね!」
シャノが軽く笑う。無限って…この世界の通常値がわからないけど、すごいんだろうなぁ…
次にスキルツリーを見る。
ダメだ、レベルが低いからなのかほとんどがロックされている。
そんな中唯一アンロックできそうなのが、身体強化の項目だった。
レイジ:任意の一人の体を強化する。ステータスが2倍。
お、これは良さげでは?どうやらスキルはスキルポイントを1使えば開放できるらしい。
とりあえずレイジを開放しておく。
「うんうん!いい感じだね!これでエガキもスライムくらいだったら一人でも倒せるんじゃないかな?」
スライム!実在したのか!青色のアイツを思い浮かべる。
「実在はするけど、めったにいないねぇ。この変だと一角ウサギが多いかなぁ。」
強いのか?
「今のエガキなら余裕じゃないかな?」
まぁ回復魔法もあるし死ぬことはないか。
「なににしろギルドには行ったほうがいいかもね!仲間も欲しいし!」
ギルドか、冒険者ギルド、うんワクワクするな!明日行ってみるか。
シャノと方針を決めエガキは眠りにつくのだった。
こうしてのちに言霊師と慕われる少年と不思議な黒猫の冒険は始まる。
どうも黒猫です。登場人物?登場猫物?の黒猫とは違う黒猫です。
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