勇者の尋問
だいぶ長いです
すみません
「君は・・・何者だい?」
勇者が聞いてくる。
質問の意図がわからん。
どうすればいい?どの返答が正解だ?
とりあえず誤魔化す。
「ただの村人・・・です」
つい敬語を使ってしまう。
格好づけ宣言とは何だったのか。
「僕は色々なものが見えてね。君の、ほら」
俺にしか見えないはずのエタンの方に顔を向ける。
質問の意図が本当にわからん。
「質問の意図はなん・・・ですか?」
「ちょっとここじゃ話づらいかな?ついてきて貰っていいかな?」
「ヤ、ヤミキリ」
モヒカン男のヤゾンが心配そうな目で見ている。
「大丈夫だ、ヤゾン!助かったぞ!悪いがあそこの馬車のノンプって男にこの事説明しておいてくれ!すまん!また会おう」
俺は馬車を指差した後、勇者についていく。
ヤゾンには迷惑をかけた。
ぜひ恩返しがしたい。
・・・生きて帰れたらな
〜
騎士団が作ったであろう立派で大きなテント、そこに招かれる。
そこには級が高そうな偉そうな男と秘書っぽい女性がいる
「申し訳ありません。少しこの方とお話ししたいので場をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「わかった、出て行った方がいいか?」
「お願いします」
あの偉そうな男を動かせるとは勇者も偉いのだな。
しかしらこの勇者、一つ一つの動作、全くスキがない
「僕が君に話しかけた理由だが、君、私を鑑定したね?」
ば、ばれちょる、俺の妄想を妄想とは言えんな。
そう異世界だ。
どのようなスキルがあるかもわからない。
今の俺には嘘つく勇気すらない
「はい・・・」
「それは構わない。ただ僕も君に鑑定したからね。そしたら君のスキルに鑑定系のものが見当たらないんだ。つまりステータスを偽造するスキルをお持ちかなって。そのようなスキル、僕は知らないんだけどね。それは固有スキル?それともその闇の精霊の力なのかな?」
素晴らしい推理力だ、やはり精霊がみえてるな。誤魔化しようがない。
「はい、精霊の力です・・・」
せっかくの異世界生活、意気消沈たぜ。
しかしいまだに話の本質が見えない。
「闇の精霊なんて初めて見たよ。それでね、今回のエンペラーマウンテンの件、私は直接見たわけじゃないから他の人の話を聞くとね、」
「黒く光ったって言ってたんだよ。よくわからない表現なんだけどね。そんな事があった日に・・・僕は初めて闇の精霊を連れている人を見つけてね、これは偶然かなって。しかもその人間はスキルを隠している、とね」
殺気を出してくる。
はいはい、そんなことしなくても勇者様が強いことは知ってますよ。
だから殺気出すのやめてください。
お願いします。
黒い光に関してはクロルさんが出したもので闇の精霊の力は関係ないんだよなぁ。
どうする、話すべきか、でもただ単に話しても信じてもらえないよな。
物的証拠を出せば信じてもらえるかもしれないけど押収される可能性もある。
クロルさんのものだけは絶対にされたくない。
「・・・」
「その沈黙は、何か知ってるね?」
勇者が剣に握る。
即答で知りませんって言えばばれなかったか?
嘘で誤魔化すか?
駄目だ、焦りでろくな嘘が思いつかない。
「わかりました!話します!だから待ってください」
仕方ない。本当の話をするか。
「・・・俺はどうやら森に捨てられてたらしい。そんな俺を一頭の生き物が育ててくれた」
「その生き物とは・・・麒麟」
勇者が麒麟の言葉に少し反応する。
勘違いさせる言い方はしてるが嘘はついていない。
一応本当の話だ。
「その麒麟は俺をエンペラーマウンテンで生きる術を教えてくれた、いわゆる師匠だ。そこで出会ったのもこの精霊、エタンだ」
エタンは相変わらず無言だ。
寂しいぜ。
「今日、俺の為に師匠はある怪物と戦った。その怪物の名前はプランクドーン」
「プランクドーン!?やはり山から見えるスライムのようなものというのはプランクドーンの事だったのか?!」
勇者の顔に焦りが見える。
俺はあの時の光景を思い出し、少し泣きそうになりながら話す。
「師匠は黒い雷を操り、プランクドーンを倒した。黒い光とは黒い雷の事、師匠が放ったものだ。しかしプランクドーンとの死闘を繰り広げた師匠の姿は無事と言えるものではなかった。俺は師匠と涙の別れをした後、人として生活する為にここに来た」
俺は思い出し泣きをした。
勇者ももらい泣きしていた。
・・・結果的にいい感じに誤魔化しながら本当の話ができた。
「そうか・・・プランクドーンが・・・この話は他言が禁止されているから詳しく話せないが、貴方の師匠は素晴らしい事をしてくれましたね。」
「はい・・・」
勇者に散々毒を吐いたが師匠が褒められると嬉しいものだ。
「しかし、なにか物的証拠はないかい?」
また凛とした顔になる。
優先度の低いものから出していく。
「このエンペラーマウンテンに住んでいた。魔物たちはどうです?」
ずらっと出す。
「いいアイテムボックスをお持ちなようだね。しかしこれだけではなんとも言えない」
ぐぬぬ、仕方ない。
俺はクロルさんが渡してくれたひび割れた丸っこいもの。
そうプランクドーンの壊れた核である。
できればクロルさんから貰ったもの、渡したくはないがそれを見せる。
しばらく沈黙する。
鑑定しているのか?
「・・・こ、こ、これは!!プランクドーンの核!!まさか、まさか本当に!!」
「できれば返して欲しいです。師匠に貰った大事なものなんで・・・」
「・・・す、すまない!どうにか譲って欲しい!!」
どうやら立場が逆転したようだ。
俺はすかさず敬語をやめる。
「手柄がほしいのか?」
ひねくれた質問だ
「断じて違う!このコアが、プランクドーンが復活しても僕に止められるかはわからない!これは国と僕が責任を持って処分をする!」
「なんでもする!頼む!!僕は・・・僕は、勇者に関する様々な伝承を聞いてきた。その一つがプランクドーンの悪夢。1000年前に討伐したがコアが見つからず、それから1000年後・・・つまりもうすぐ復活する可能性があると記されていた。」
「そもそも1000年前の話、本当かどうかもわからなかった。しかしそのわからない状態がまた怖かった。戦うというなら命をかけるのだ。新たな勇者が生まれてもこの恐怖を味あわせたくはない。貴重なものだというのはわかっている!このコアを僕の手で処分したいのだ!頼む!!」
そんな!こんな中性的な美少年がな、な、なんでもするなんて・・・ゴホンッ!
・・・プランクドーン、1000年前になにをしたんだ?
しかしなんか勇者も可哀想だな。
きっと戦わなくてはいけないのだろう。
オーダードラゴンから逃げようとしていた俺には耳が痛い話だ。
せっかくクロルさんに貰った物だけど使い方もわからないし渡そうかな。
クロルさん・・・いいよね?
よくよく考えると勇者が俺を殺して奪えば終わる話なんだよな。
こんな必死に頼み込んじゃってさ、渡すしかないよね。
「わかった、これは大事な物だが・・・お前にやろう」
恩義せがましく言う。
「あ、ありがとう!・・・僕は何をすればいい?僕以外にも王に言えばなんでも貰えると思うが」
う〜ん、どうするか、家や宝や金やと思うけどせっかく修行して強くなったんだし、そういうのは自分で用意したいよね。となると
「気にするな」
この一言だ。
しかし俺のこの一言には”困った時たすけてね?”や”感謝してね?”といった意味が多少なりともある。
うん、感謝されるのっていいよね?
それにこの回答が一番格好いいと思う




