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第9話 坂巻先生の乱


 担任の坂巻先生は窓を開け、体育館に前に居る先生に聞こえる様に叫んだ。


「中村先生!!危ないヤツがそっちに向かってます!!扉を閉めて施錠して下さい!!」


 空気を震わすような大音量で叫んだ。


 何処からそんな声を出しているのかと。


「なっ…!」


 そんな大きな声出したら、集まって来ちゃうじゃないか!


 そしてその声に反応するかの様に、外に居たゾンビ達は下の階の窓の前に集まってくる。


 中村先生は、坂巻先生に言われた通り体育館の扉をしめた。




 窓の下では、凄い人数のゾンビが2階の窓に手を伸ばしながら「う~、あ~」と声を出している。

 何かを求める様に…。


「…さて、お前らこの後どうする?選択肢としては…この教室で籠城するか。それともこの学校から脱出するかなんだが。とりあえず外の連中(・・・・)がこの教室に来ることは無いと思うが」


 体育館には避難できなよね。そりゃ。


「ここもいつまでも安全って訳じゃ無いですもんね…」


 結城さんが伏し目がちに呟いた。


 そうなんだよ。いくら教室に来ないっていわれても…。だって此処にいても、食料も無ければ水も無い。ずっと居る事は出来ない。


「あの…私は出来るなら、家に帰りたいと思うんですが」


 北島さんが言いにくそうに言った。


 それは確かに分かる。でもこのパニック状態で外に出るのは危険だと思った。ゾンビもだけど、生きている人間が一番怖い。

 ゾンビ映画とか終末物の創作物を見ても分かる通り、皆自分が大事だ。そしてこんな時だからこそ、欲望のたが(・・・・・)が外れてる奴らが必ず出てくる。


 学校でこんな感じなんだから、駅とかかなりヤバイと思うんだよ。



「んー、まぁそうだよな。俺からはどうしろとは言ってやれないからな…。無責任かもしれないが、何処が安全かは正直分からんからな」

「他はどうしたい?俺はお前たちの担任だし、出来る事は協力してやる。帰りたいなら、可能な限り一緒に行くさ。俺が居なくても、現状体育館は何とかなるだろうしな…暫くは」


 皆どうすべきか悩んでいる。


「俺は正直、学校が一番安全だとは思っている」


 坂巻先生がそう言った。


「本気ですか?」


 僕は真意を知りたくてそう聞き返した。


「あぁ、階ごとに制圧して、非常防火扉さえ閉めてしまえばあいつらは入って来れないと思うぞ」


「そうかも知れませんが、その制圧が難しいんじゃないですか」


「まぁ信じてもらえなくても良いんだけどな。ただ、自身はある」



 それはズルいよ…。只でさえ身近な大人が、今こうして近くに居てくれて、その人が大丈夫って言うんだ。皆それを信じちゃうじゃないか。


「…何か作戦があるんですよね?」


 皆は僕と先生の会話を黙って聞いている。思うところはあるのだろうけど…。


「一応な」


 こんな時に先生は笑って言った。






☆☆☆☆☆





 それから僕たちは、まずこの2階を安全地帯にする為に動き出した。


 といっても、今廊下を歩いているのは先生と僕と、それに結城さんだ。


 全員で行くと逆に動きずらいって事で、先生と僕でまず行こうとしたんだけど


「先生っ、私も行きますっ!」


 って言ってついて来たんだ。まぁ、先生の傍に居たいのかも知れないけどさー。




 因みに先生の作戦はこうだ。


 まず防火扉を閉め、外からのルートを潰し安全地帯を作る。そしてその中にゾンビが居ないかを確認し、居たら排除。と同時に生存者の確認。


 防火扉付近まで各教室の机を運び、それを全員で防火扉の外の階段の中階層に積みバリケードを作る。


 とりあえず1階はともかく、3階までを安全地帯にするらしい。



 確かに外に殆どの生徒が出ている今なら、それも可能かもしれないけど。


 それって、完全に体育館の皆を見殺しにするって事じゃないのか。


「田中。お前が思っている程、薄情な人間じゃないから安心しろ。考えはある。だが、最悪の場合も想定しておけ。じゃないと戦場では生き残れない」


「いや、まるで戦場を経験してきたみたいな言い方されても」


 緊張感がまるで無いんだよな。先生。


 しかしホントにゾンビを何とも思っていない感じだ。


 結城さんも、しっかりした足取りで辺りを警戒しながら付いて来ている。


「結城さんは怖くないの?」


 何となく聞いたんだけど、止めておけば良かった。


「先生が居るから怖くないよ?」


「そっすか…」


 告白した訳じゃないけど、何かフラれた気分だよ。何かもう、どうでもいいや。って。


 はぁ、つまんないなー。


 僕が一人で鬱に入って落ち込んだ時だった。


「止まれ」


 先生が腕を横に広げ、僕の進路を塞いだ。




 ゆら~っとその場でフラフラしながら僕達に背中を向けた生徒が居た。白いブラウスに汚れなどは無く、プリーツスカートもフリフリと動きに合わせて揺れている。女子生徒だ。ただ僕らと反対側を向いているので、表情が分からない。


 不謹慎かも知れないけど、伊東君の念力か、新道の風でスカートを捲って反応が無ければゾンビって直ぐに分かるのに。って思ったのは言わないでおこう。

 ただ、パンツが見たい訳じゃ無いからね??


「先生…生存者なんじゃ」


 結城さんがそう思ったのは無理もない。


 動きこそ遅いが、ぱっと見噛まれていない様子だったしね。


「そうだな…まぁ近づけば分かるだろう。お前らはここに居ろ」


 そう言って先生は女子生徒に静かに近づき、そっと女子生徒のスカートを後ろから捲った。


「は?」


 僕は固まった。何してんの??!そう声に出しそうになったが、何とか我慢した。


 そしてスカートの中にあった物から目を離せなかった。


 純白の布に包まれた形の良いおしりがあった。



 スカートを捲られた女子生徒は、何の反応もせずにその場でゆらゆらしている。


「当たりだな」


 何が当たりなのかは分からないけど、先生の声に反応して、女子生徒が振り向いた。


 女子生徒は振り返りながら、先生に掴みかかろうとしていた。


 いや、もう既に先生腕に噛みつこうと顔を近付けている。


「先生!」


 僕は大きな声を出した。


 女子生徒は僕の声に少し反応をし、一瞬だけ僕の方をちらっと見た気がした。


 女子生徒の視線が外れたその一瞬。


「ふっ!」


 先生は格闘漫画で出てくるキャラみたいに、少し腰を下ろし、両手を前に…女子生徒に向けて突き出した。


 その両手に押され、女子生徒は…数メートル吹き飛んだ。


「へ?」


 先生は殴った訳でもなく、その場で両手を突き出した様にしか見えなかった。


 所謂、掌底で寸勁を放っただけなのだが、この時の僕がそれに気づき訳も無く。


「まじか…」


「すごい…」


 僕達は唖然とした。


 先生は僕達の方に振り向くと


「やばい…」


 先生が深刻そうな顔をしている。


「え、どうしたんですか!?まさか、噛まれちゃいました?!」


 僕と結城さんはめちゃめちゃ焦った。手の平を見せてくるから、傷が無いか確認しようとして…


 そして先生はこう言ったんだ。



「じょ…女子の……、女子生徒のおっぱい触っちゃった!!」



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