1/44
プロローグ
誰も気にしたことがない話をしよう。
ノーベル賞を受賞したり、名立たるセレブのランキングに入っていたり、時には大企業の社長だったり。
歴史に残る彼彼女らは、身近にいた人間でさえ気づいていないが、ある共通点を持っていた。
性別も国籍も体型も性格も、享年すらも異なる人物であるにも関わらず、不思議なことに、全員同じ呼ばれ方、名乗り方をする時期がある。
しかもその名は、繰り返し使われていて、どの分野においても轟くような功績を上げる人物ばかりだというのに、どうしてか誰も気にしない。
“何故、彼あるいは彼女は、あの名に『成る』のか”
天才の共通点にしては明確で不明瞭な『名』。
だけれど、誰も疑問には思わない。
そう、誰も。
まるでそれが常識だとでも言うように。