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抱き枕。

友達以上恋人未満抱き枕属

作者: SYULI

「ねぇ、今から遊びに行ってもいい?」


この言葉を送るのに、どれだけの時間と勇気を要しただろうか。


「汚いけどいいの?」

「うん、迷惑じゃないなら。」

「じゃあおいで」


どきどきしながら返信を待って、わくわくしながら支度をする。


毎日メッセージを交換していても、心の内を完全に理解することはできなくて、不安で、でも結局は彼の優しさに甘えてしまう。


この階段を登るのも3回目。

3回って数字は、珍しさから慣れへ一段進む階段のような気がする。


緊張しながらインターホンを押す。

「いらっしゃい」

「お邪魔します」


「お茶飲む?」

「ありがとう」


ソファ代わりのベッドに座って映画鑑賞。

いつものパターン。

必要以上に会話はしないけど、

君と肩を並べて空間にいる、

そのことが心を満たしていく。


「眠くなっちゃった」

そうして君が横になりだすのもいつものパターン。


「みーちゃんもおいでー」

手を取って引き寄せられる。

抱き枕代わりにきゅっと君に包まれて、

君の香りで胸がいっぱいになる。


何でこういうことするの、とか

どういうつもりなのか、とか

言いたいことは幾らでもあるのに


上を見上げると君の顔があって。

「ん?」

「なんでもない」

目が合った途端に何も言えなくなる。


「そっか」

私をぎゅっと引き寄せて、キスをする。

髪に、頭に、額に、頬に。


その度にどきどきして、

でも動いたら終わってしまう気がして。


頭を撫でたり、後ろから抱き抱えたり、

腕枕したり、足を絡ませたり。

何も言わずに君はスキンシップを取ってくるけれど、

超えてはいけない一定のラインを保ってる。


だからか不思議と嫌悪感はなくて。

安心感と、充実感。

君とこうしてる時が一番幸せだから、

今日も私は君の抱き枕になる。



そのうち君は寝ちゃうけれど

私は意識して寝られないのもいつものパターン。


いつの間にか辺りは真っ暗になって、

幸せな時間にもタイムリミットがくる。


「帰らなきゃ。」

君をそっと起こす。

「んー…?」

寝ぼけた君が私を引き寄せてぎゅっと抱きしめる。

そんな瞬間が好き。


「ほら、起きてー」

「んー…、もう帰っちゃうのー?」

「帰らないとね」

「毎日いてくれたらいいのになー」

そんなこと言われたら毎日でも来ちゃうよ。


名残惜しそうにぎゅっとして。

「帰ろっか」

君がそう切り出すのが、抱き枕終了の合図。


君と手を繋いで駅まで帰る。

「今日はありがとう」

「またきてね」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」


電車に揺られる帰り道。

幸せな気持ちで満たされて

何かを警告してくる音を無意識に遮断する。


私は君の何なのかな。

そんな疑問を口にしたら終わりそうでこわくて。


私は君専用の抱き枕。

幸せだから気にしないの。


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