見える世界 前編
これはある学校の表と裏を描いたもの。
主人公である僕が妹の回りで起きた不思議な出来事に巻き込まれる。
これは前編と後編にわかれており、前編はやや短めです
「やめて………いや………きゃーー!」
幼い女の子の悲鳴が静かな学校に響いている。
「残念だけど、その声は誰にも届かない。そして………」
長い休みが終わり、僕は赤く染まった道のなか小学三年生の妹と学校に向かう。
「おにいしゃん。今日も天たんが喜んでいますよ!」
天たんとは天気のことで、妹はいつも言っている。しかし、僕はそれを気にしたことなんて一度もない。
「そうだね……おっと、もう校舎の敷地に入るから学校が終わったあとで迎えに行くから」
「……うん……バイバイ。おにいしゃん」
妹は小学校の校舎に走っていった。僕はくるりと逆を向いて反対の校舎に向かった。
僕と妹の通う学校は、小中一貫校のため同じ敷地にあるのである。そのため妹の華林とはほぼ毎日一緒に過ごしていると言っても過言ではないだろう。
「おーい、夕。一週間後の準備は整ってるんだろうな!」
「大丈夫だよ。ちなみにこいつはこの中学校の生徒会長の妹の友人である坂野篠。さらに言うならこのクラスの学級王。学級王っていうのは……」
「富島……お前は誰に話してるんだ?」
「………とにかく順調だよ……」
僕はこいつをあしらった。
「そうだ、知ってる?宗田くん学校やめたらしいよ」
「これでこの学校の男子は後三人か……」
この学校は小中一貫校なのだが、小学校は女子だけで中学校は共学に今年からなったのだが、元々いた40人のうち残っているのは僕を含めて三人だ。しかしその詳細はわかっておらず、消息も不明なのである。
「明日はしっかり予定をあけておけよ。おそらく下校時間ぎりぎりまでやるからな!」
坂野は女子グループのところに戻っていった。
「まったく……お前も大変だな」
「そうでもないよ。また日常が戻った感じだからw」
僕もそのまま穏やかな一日を過ごした。
しかし、その生活は今日と言う日を境目に戻らなくなることを僕はまだ知らない………