Invasion:4
ミスで同じ文章をあげていてすいません
今度は大丈夫だと思います
研究室とかいうところは思ったより狭かった。
映画とかに出てくる近未来的な機材がたくさんあると思ってたらごく普通のパソコンとかがあるだけだ。
「あー思ったよりなんかこう、秘密基地っぽくねーんだけど。おれっちの基地としてはイマイチだなぁ」
期待が外れたように頬を膨らます春姫。椿は興味深そうに辺りを見回していた。俺としてはあんまり危ない事をやられても困るからこんぐらいの設備が丁度いい、てか都合がいい。
「何言ってんだよ。学生個人の研究室なんてこんなモンだろ」
でもさー、とかブツブツ春姫が言ってたが聞こえない聞こえない。コイツの不平にいつまでも付き合ってるほど俺は暇じゃない。第一、真冬の道具で神の武器化かなんてできたら基地なんていくらでも作れるだろう。神の力を使えば基地作成ぐらい容易な気がする。
「僕の専門分野はプログラム上なんで……。今度皆さんが来るときまで改装しときますね! それより神を武器化させる装置についてなんですけど」
おいおいコイツの我侭に付き合う気かよ……。真冬の発言にやや呆れた。あんまり甘やかすとすぐ調子のるぞ春姫は。
武器化にしたって本当にできるのかぁ?
「にしても本当に武器化できるのか? まぁ武器化できなくても俺がいれば大丈夫だ!」
根拠なく威張る椿。コイツはコイツで機械大好きだからさっきからテンション上がりまくっている。しかも椿は静かに一人でテンション上げるから恐ろしい。
「大丈夫ですよ。実験も最終段階に入ってチェックは抜かりないです! ためしにお見せしますね」
椿の質問を笑顔で答えながらなにやら研究員っぽい人に指示を始める真冬。大急ぎで研究員っぽい人が持ってきた小さな勾玉を俺らに見せる。
「えっと一応説明しとくとですね、僕たちが契約してる神がくれた勾玉と違ってこれは人工で作ったモノなんです。神がくれた勾玉のような神力はありませんがICチップとかたくさんの小型装置が埋め込まれています」
なんかすごい話になってきたぞ。隣の馬鹿二人も感心したような顔をしている。真冬の手にある勾玉は澄んだ色をしていてとても人工のモノとは思えない。
どうやら真冬という奴は俺の想像以上に凄い人間のようだ。なんか出会ったときのインパクトが強すぎて今まで気付かなかったが。
「それでっ! それでそれ使うとどうなるんだ!?」
玩具を待ちきれないガキのような春姫の催促も気にせず真冬は説明を続けていく。
「それでこの勾玉と神から貰った勾玉を合わせると……」
ゆっくり俺達に見せつけるように二つの勾玉を合わせていく。
カチっ、と何かがハマるような音がしたと思ったら真冬の手に大きな鎌のようなモノが出現していた。
「「「す、すげーっ!!」」」
凄すぎる。あまりの凄さに声を合わせて驚いてしまった。世界のどこの研究者でも出来なかったことを一介の学生がやりやがった。
驚嘆の視線を向けられて恥ずかしいのか真冬は照れたように笑う。
「そんな驚かれるようなことじゃないですよ。別に大した技術も使ってませんし。あ、武器は神の支配領域とか性格が関係します」
「おおっ! おれっちもやりたい! 早く真冬、おれっちにもその勾玉貸してくれ!!」
人の話を全然きかねーなコイツは。少しは待てを覚えようか。明るめの色の目が期待で輝きまくってる。
俺だって内心は期待ではち切れんばかりだったが。脳内で真冬のデータを上方に修正しとこう。
「俺にも俺にも貸してくれ! 俺もやってみたいぞ!」
お前もかよ……っ。折角春姫を一緒に抑えられると思ったらコイツはメカヲタクだった。くそっ。
二人の気持ちも分からなくもないけどさ。ぶっちゃけ俺も早くやってみたい。誰だってあんな凄い光景みたらやってみたいと思うだろ?
「急がなくてもちゃんとありますよ。貸します、いえあげます。世界征服メンバーですからね!」
手渡された勾玉は俺の手の中でほんのり光ったような気がした。にしてもくれるなんて真冬も気前がいいな。流石坊ちゃん。
「よし! おれっちもやってみるぜ!」
自分の勾玉と貰った勾玉を早速合わせる春姫。一瞬で春姫の手に二つ拳銃が現れていた。艶やかとも言えるその銃身は物騒なものにも関わらず惚れ惚れするくらいカッコいい。
春姫も自分の武器に大満足したように震えている。
「や、やばいなコレ! おれっちの武器に相応しいぜ」
新しい玩具に大騒ぎする春姫。俺も早く武器化してみてどんな武器なのか見て見たい。
「俺もやってみっか」
手の中の二つの勾玉を合わす。何かがハマるような音がして手の上に一振りの刀が出てきた。やや蒼いような刀は自画自賛というかも知れないがカッコいい。
あんな五月蝿いスサノオがこんなカッコいい武器になるなんて……っ。嬉しすぎる。
(なんだと? 我が五月蝿いだと? 失礼極まりないぞ)
「ぎゃアアああああああぁぁぁ!!」
え!? 何事? 何事なんだ!! い、いきなり武器が喋った。
「ど、どうしたんですか?」
「どうしたんだよ凪。頭でもおかしくなったか?」
「な、凪? 大丈夫かよ?」
みんなが俺のことを心配げに覗き込んでる。気持ちはありがたいがなんで武器が喋ったのに驚きもしないんだよ。
(おい。聞いてるのか人間。なぜ我が刀などになっているのだ)
また喋った。なのに俺以外の人間は俺を見るだけで刀には視線を向けもしない。もしかして俺以外聞こえてない? そういえば声とは少し違うような響き方だ。
「どうしたもこうしたも武器が喋ったら驚くだろ……。なんかいきなり武器になってるはずのスサノオが喋ったんだよ」
刀が喋るなんて聞いたことないぞ。大体無機物にしちゃえばスサノオが五月蝿くないと期待していたのにこれじゃ前と変わらない。
「え、喋る? ちょっと!!」
真冬が研究員っぽい人を手招きしてごにょごにょ話している。時々研究員っぽい人の目が輝いたりしていた。二人はそのまま話しこみだす。少し漏れ聞こえるが俺には意味のわからない言葉ばかりで理解不能。
「なんか凪の刀、いやスサノオが喋るってのは珍しいらしいな」
椿が呟く。真冬たちの話は聞こえないがどうも雰囲気的にそうらしい。それにしても……。
手元の刀を見る。蒼い刀身は息づくように光っている。
「おれっちのは喋んねーぞ。っとアマテラスに話聞いてみるか」
春姫が勾玉を離した。途端白い銃は掻き消える。春姫が白い勾玉の方に念じるような仕草をするとアマテラスが現れた。
「あらぁ? さっき私どうなっていたのかしら?」
黒い瞳が春姫に向けられる。おっとりしていて尚、射抜くような視線だ。流石神、というべきだろうな。アマテラスはどこぞの馬鹿神と違って威厳がある。
(姉上ぇぇぇ!! 久しぶりです!! スサノオは元気です! 姉上は今日も可憐な様子でなによりです!)
うざっ。人の耳元、もとい手元で叫ぶな。
あまりにも五月蝿いので二つの勾玉を離す。しばらく黙っていてもらおう。
「銃になってたぜ。久しぶりだなアマテラス」
懐かしげに椿が呼びかける。そういえば最近椿は忙しかったからアマテラスに会うのは久しぶりか。昔は三人と三柱でよく遊んだ。
……いつも春姫が無茶やってその後片付けやらに他全員が参加するという形は昔から変わらないが。
「久しぶりね。急に呼び出された上に意思が伝えられないから驚いたわぁ」
微苦笑を浮かべアマテラスが驚いたというジェスチャーをする。感情の起伏が緩やかなアマテラスは本当春姫みたいな煩いのといいコンビだ。春姫が五月蝿いからプラマイゼロという意味で。
ちなみに以前聞いたのだが神側も呼び出される少し前に前兆のようなものがあるらしく、急に具現化することはほとんど無いとか。神界っていう世界もあるらしいし。
「そうなのか。わりぃ……。だけどよー、スサノオは武器化しても喋れるらしいぜ? ずるくないか?」
俺を睨まれても。どうすりゃいいんだよ。なんとなく気まずくて春姫から目を逸らす。
「あ、そうなのぉ。うちの弟は元気にしてるかしら?」
小首をかしげるアマテラス。……可愛い。すこしだけスサノオの気持ちがわかるかも知れない。昔から少し抜けているところがあったけど今その可愛さがよくわかる。俺も思春期だなぁと少しおっさんくさい考えが頭をよぎった。
「元気だよ。元気があんたへの愛に直結してる気がするけどな」
スサノオの元気のよさはアマテラスの登場回数に比例する。椿がツクヨミを出してくれればある程度抑えられるが。ツクヨミが武器になったらどうなるんだろ?
「困ったものよね。あたしも手を焼いてるのよ。口を開けば姉上姉上って……。いい加減自立して欲しいわぁ」
はぁ、とため息をつくアマテラス。その気持ちに多いに共感したいところだ。
自立なんかしてくれとは期待してないがせめて自重と待機ぐらいできるようになってほしいぜ。
「凪さん! ちょっと来てください!!」
ようやく研究員っぽい人と話がついたらしい。真冬の顔はけっこう嬉しそうだ。椿と春姫のおもりをアマテラスに任せよう、うん。
「はいはい。了解だぜ」
手招きされて適当な椅子に腰掛けた。研究員っぽい人がキラキラ輝くオーラを出してるくらい俺の勾玉をガン見してて怖いんだが。
「詳しい説明は兄さんに頼むよ。兄さんの方が専門だしね」
どうせ俺には専門的な話はわかんないと思うんだけどな……。
ん? 兄さん?
「どうも。初めまして、はちょっとおかしいか、さっきから会ってるし。自分、真冬の兄の真っていうものです」
微笑むという表情を体言するような顔で挨拶される。そこはかとなくいい人臭が漂ってくる気が……。思わず居住いを正してしまう。
「ど、どうもご丁寧に。俺は、いや僕は霧雨凪です」
周りが変人ばかりだから、たまに普通の人に挨拶されると対応の仕方がわからない。
しかし、この兄ちゃん真冬に似てないな。青なんていう漫画以外見たことない真冬の髪に比べ、このお兄さんの髪はごく普通の茶色。しかも直毛らしく、所々寝癖がついている。唯一似ているところといえば、髪と同じ色の双眸から見える爽やかなオーラだろうか。
「あ、畏まらなくていいよ。君たちと一つしか変わらないし。それで君の武器なんだけど一回自分にも見せてくれる?」
頼まれたとおりに再び勾玉を合わせスサノオをだ
した。ずっしりとした重量と滑らかな刀身が少し懐かしい。
(凪ぃぃっぃ! 姉上と会えなかったではないか!)
ああ、こいつはどうやったら黙るんだ。相変わらず手元で騒ぐスサノオにため息としかでない。ため息をつくと幸運が逃げるなんて言うが俺は確実にスサノオのせいで幸運が逃げてると思う。
「刀なんてかっこいいな。触ってもいい?」
俺が頷くと真さんはスサノオを手にとり、光に透かしたり刀身に耳をつけて音を拾おうとしたりしている。俺は少々手持ち無沙汰気味になってしまった。
そういえば真さんって契約神は何なんだろう。基本は首にかけるはずの契約神の勾玉は白衣に隠れているのか見えない。勾玉が見れたら色とかで少しは推測できるのにな。
「真さんって契約神は何なんですか?」
一瞬、本当に一瞬だけ真さんの笑顔が崩れた。次の瞬間また元の笑顔に戻っていて、今真さんはどんな顔をしていたのかがわからない。何かを崩してしまったような気がして罪悪感が訳もなく肩にのしかかってくる。
「ごめん凪、兄さんは」
「大丈夫だ真冬。気にするな」
真冬の焦った表情。言い募ろうとした真冬を真さんが制し、止める。
俺、やっぱり悪いことを言っちゃったのか……? 二人の様子を見て不安になる。
「自分、契約神いないんです。所謂神無ですよ」
柔らかい笑顔のまま、真さんは言った。
俺は自分の失言を後悔する。無神経にも程がある。俺の悪い癖だ。思ったことをそのまま口に出す。相手の事情など考慮もせずに。
神無。大体数百万人に一人くらいの割合でいる、神と契約できなかった人間の事を指すある意味蔑称のようなものだ。
それを自ら口にするなんて嬉しい事のはずないのに。本当穴があったら入りたいくらいの羞恥が湧き上がってくる。
「すいません……。俺、知らなくて……」
謝罪の言葉が上手く出てこない。知らなかったなんて理由にならない。
真さんが俺の肩に手をおいた。
「いいよ。別に自分気にしてないし。研究するのに契約神はいらないしね」
そう言って笑えるなんて、真さんは凄い。尚更申し訳ない気持ちが増大する。
「じゃ、謝罪の代わりにガンガン研究を手伝って貰おうか! 君の契約神はスサノオ、だっけ?」
「はいっ!! こいつの支配領域は海でそれから初期装備でシスコンが付いてくるような純然たる変態神です」
空気を変えるように発言した真さんに感謝と少しの憧憬を覚える。何を聞かれても大丈夫なように気合百パーセントで答えよう。それが俺にできる最大級の謝罪だと思いたい。
「そ、そう。契約した時期はどのくらいだった? それもデータに加えたいんだ」
初めてスサノオに会ったとき?
うっ、なんだか頭が痛くなってきた……。
「えっと、あれは俺が五歳のときの悪夢のような出来事でしてですね……。最初は春姫達とふざけてただけだったんです」
俺の両親は完全な放任主義で物心ついたときには俺を自由に遊ばせてくれた。ま、その結果春姫達と出会っちゃった訳だが。
当時俺達三人は探検ごっこが大好きだった。小さい頃よくやるだろ? 近所の寂れた公園とかで設定を決めて遊ぶんだ。伝説の勇者、地球防衛軍。想像の中ならなんだってなれた。
「その日、俺達は近所の裏山に探検に行ったんです。そこの山で自然の、未発見の祭壇を見つけました」
当時は祭壇は大人たちの話の中でしか出てこなかった代物だった。
神と契約するのに使う場所。多くの場合は人工であり、自然のものであっても発見され管理されてるのが普通。
俺達みたいな子供が見つけられたのは偶然と多くの幸運に恵まれたからだ。
「冗談交じりに神を喚んでみたんです。それでスサノオにあいました」
いやあったというか一方的に言い渡されたの方が正しい気がするけど。
「慶べ、汝は我に選ばれた」
「私はこの子がいいわぁ」
「姉上、スサノオ。いい加減に選んでは駄目だ」
いきなり出てきたスサノオ達はそれぞれ俺達の一人を指名して目出度く俺達は神主になったわけだ。それぞれの勾玉は契約を完了した証として透明から色が変わって、俺の勾玉は蒼色に輝いていた。
……それが俺の人生の運のつきであるとは俺も予想していなかったさっ!
帰路につき、家に到着した俺らを待っていたのは周囲の羨望の眼差しと異端者を見る目だった。
普通神と契約するのは十歳を過ぎてから。祭壇だって人工のものを使うときが多い。天然の祭壇なんて都市伝説レベルなのだ。
たかだか五歳程度の子供が神主。それも契約神はSランクときたら周りに敬遠されるのは当然かもしれない。
……春姫は前から不審者を見るような目で見られていたが。
「なるほど。天然の祭壇なんてよく見つかったね」
俺の昔話(帰郷編)を真さんは頷きながら聞くと、またもや何か打ち込んだ。俺自身も記憶から意識を引き抜いて再び小さくため息をついた。
あの時春姫達を止めてれば普通の友達(精神状態が正しい人間のことをさす)が出来たかも知れないのに。自分の無計画さ嫌になるぜ。
「スサノオがシスコンで変態だって気付いたのは割とすぐにです」
出てくる度に、『姉上ー。姉上ー』と叫ばれたら嫌でも覚える。ノイローゼにならなかった自分を褒めたい。
「そ、そうか……。スサノオの支配領域は水、それも海に特化してるんだよね?」
「そうです。海に特化してるから海水なら人界でも、ほぼ自由に操れます」
何の役に立つかは疑問だが。せいぜいサーフィンでもするとき使えるか?
「流石Sランクってことだね。んーでも同じ条件なのに春姫ちゃんのは喋らないのはなんでだ?」
俺に聞くというよりは自問自答するような真さん。確かに俺のだけが喋るなんてめいわ……じゃない、おかしい。
! 椿はどうなんだ?
「椿君! ちょっときて」
俺の疑問と同じことが浮かんだらしく、椿を手招きする真さん。
さっきから周りの機械に目を輝かせていた椿が不思議そうな顔でよってきた。よく見るとコイツもかっこいい部類に入る顔だ。最近気づいたんだが俺の周りって標準よりレベル高い奴が集まってないか?
「なんスか?」
やや砕けた敬語を選択した幼馴染B(無論Aはやつだ)。案外人見知りのくせに真さんにちゃんと敬語を使わないとは。珍しい。
気に留める風もなく真さんは俺にしたのとは違う質問を繰り出していく。しばらくの問答が続いたあと真さんは椿にも神の武器化を促した。
「緊張するぜ。凪のは刀だったっていうし」
全員が神妙な面持ちで見守る。期待と少しの不安を交えた顔で椿が勾玉を合わせた。
瞬間、椿の手に現れたのは、本?
…………。
「ぎゃはははは! つ、椿。おま、本って、本ってどういう事だよ」
笑いすぎて呼吸が……ッ。
だって本とかどうやって戦うんだ。は、腹いてぇ。
爆笑する俺とは対照的に肩を震わせる椿。耳が真っ赤に染まってるとこ見ると、相当怒っている。
くっ、でも腹筋が崩壊しそうだ……っ。
「笑ってんじゃねー!! 本だって角で叩くと痛いことを教えてやらぁ!」
そういって振りかぶる椿。だが装備が本だとイマイチ怖くない。
突然走る悪寒。
本能に従って体をひねると今まで俺が座っていた椅子に本が埋め込まれていた。それも鉄製の椅子に。
埋め込まれた本を引き抜き、椿は笑う。
「ストップ! 冗談だって! 俺達友達だろ」
やばい。
椿の目が本気だ。俺まだ殺られたくない。椿から迸る殺気に脂汗が頬を伝う。
「お、落ち着いて。ツクヨミの声は聞こえる?」
真さんの言葉に椿が動きをとめる。振りかぶった手を静かに下ろされ、重苦しいため息をつかれた。。
助かっ、た……。
今後は要注意リストに椿も加えとこう。我が妹と我が幼馴染Aはとっくに加えている。
「聞こえない、っス。そもそもこれ武器化に成功してるんっスか?」
やはり椿も神の声が聞こえないらしい。本題を思い出してくれてほっとしつつ疑念が再び頭をもたげる。
なぜ、スサノオだけが武器化しても声が聞こえるんだ? 俺はお断りなんだが。
「勾玉を貸してくれる? 自分が作った方を」
真さんの言葉に椿が外した勾玉の片方を真さんに渡し、もう片方を握る。ツクヨミを呼ぶつもりらしい。
椿が念じると、軽い音がしてツクヨミが現れた。
「久しぶりだな。凪」
相変わらずなツクヨミにほっとする。真っ黒な髪、スサノオと違って黒を基調とした服も久しぶりに見た。
「おう。相変わらずお前の弟には手を焼いてるぜ」
正直全身が焼け爛れそうだ。
「……すまん。ところで先ほど我はどうなっていたのだ? 意識がないまま具現化されたような気がしたのだが」
諦めが混じった謝罪にツクヨミも苦労してるなと感じた。考えれば俺はスサノオに迷惑かけられて十数年だがツクヨミは何千年だ。……涙を禁じえない。
意識がないまま、か。アマテラスも同じような事を言っていたな。やはりスサノオだけしか意識を保てていないようだ。全自動騒音放出機(命名俺)の名は伊達じゃないな。
ツクヨミと椿が二三言葉を交わす。ちらりと見えた手首にリストバンドが見えた。あれ、椿いつからつけ始めたんだ? あんまり手首に物をつけたくないとか言ってたのに。ついに奴もお洒落に目覚めたか。
溜息をつく椿を生ぬるく見守っていたら漸く話がついたのか真さんが全員を集合させた。春姫やアマテラス、真冬も真剣な顔で真さんの言葉を待つ。
「一つだけ、よくわかったことがある」
重苦しく紡がれる言葉に思わず生唾を飲み込む。少しでもいいからヒントが欲しい。原因を突き止めて、絶対喋れないようにしてやる……ッ。
「……原因解明不可ってことが」




