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魂送のサラリーマン  作者: 桜咲ジュン
境世学園で。
9/9

午後のバトルロワイヤル1

場所は変わって、とある薄暗い大きな部屋。

タタタタ・・・

ピ・・ピピピ・・・

キーボードのタイピング音とそれに反応したコンピューターの音が部屋に響く。

正面の壁に映し出される映像によって部屋の中がチカチカと色を変え、映像の光によって照らしだされる部屋の奥には、大小様々なコンピューターが小さく稼動音を漏らしている。

部屋の正面、映像が映し出されている下側では黒衣を纏った男女複数人が、それぞれ目の前のモニターを見ながら何かを調整・監視している。

部屋の正面に映し出されている映像は、睦月達がいる教室や、教室に存在する個人の顔。そんな映像の光によって、映像正面に立っている女性の顔が薄っすらと照らされる。

「そろそろねぇー・・・じっくりとみさせて貰うわよぉ、世界を揺るがす力の一端に触れた君の実力を・・・」

そう言って小さく笑みした統野 恵は、じっとモニターに映し出される睦月の顔を見る。

その笑みには睦月達に見せたような明るさはなく、とても怪しげに、そしてどこか嬉しそうなそんな表情で―――――。


――――場所は戻って教室。教壇でドヤ顔の灼夜とは違い、灼夜の隣で慌てる彩音。

「えーっと、灼夜さん・・・・ちょっと話が違うんじゃー・・・。」

苦笑いをして何とか落ち着いた様に振舞おうとしている彩音だが、戸惑っているのは誰の目にも明らかだった。

灼夜は教室内を一望し、想像通りの反応に満足した顔で言う。

「ごめん、今のは冗談よ!一度言ってみたかっただけ。では、本題ね。今日、皆さんには殺し合いではなくバトルロワイヤルゲームをしてもらいたいと思います。」

「ば、バトルロワイヤルゲームぅ・・・!?」

夢斗の隣で夢斗が不快そうに反応する。睦月が夢斗の隣2人の顔を見ると2人共唖然としていたので、この光景に戸惑っているは自分だけではない事を知り、少し安心した。


「バトルロワイヤルゲームと言ってもただの風船割りゲームよ。ルールは私がその都度変えていくけど、基本的には何でも有り。風船を割られたら負け。最後まで割られなかったら勝ち、と至ってシンプルよ。実力診断テストみたいなものだからみんな全力で頑張ってね。」

灼夜の言葉にざわつく教室。そんな事聞いてなかった、と急な講義内容の変更に不満の声がちらほらと聞こえる。その光景を見て彩音が見かねて言う。

「あの・・・皆さん分かっているとは思いますがこの講義も仕事の一環です。確かに事前に何も知らせなかったのは不備があったと思いますが、この時間が仕事である以上勤務時間はしっかり働きましょう。」

少し縮こまりながらも講師らしく事を言う彩音。ちなみに、このすごく控えめな態度と言動のギャップが一部の男達から人気を持たれている秘訣だと、昼休みに夢斗が言っていたなと睦月はこれを見て思い出した。そう言われてみれば確かに・・・と睦月は納得する。

しかし彩音講師の言葉も空しく教室の士気は上がらない。

そこで灼夜がやれやれ、と口をあける。

「ちなみに言わせて貰うと、このゲームをやると良い事が2つあります。1つはゲームの頑張りが評価アップに繋がるって事、もう1つは勝者には私、『緋野 灼夜の権限で叶えられる範囲なら何か1つ願いを叶える』ってのも付いてます。これでもまだ不服かしら?」

灼夜の言葉にざわついていた教室が固まる。

そして次の瞬間、うぉおー!、やるぞー!と雄叫びが轟き、教室が一気の盛り上がった。

騒がしくなった教室で彩音がオロオロと静粛を訴えるが誰も聞く耳を持たない。


やったぜ!こりゃあ絶対勝つしかないな!

灼夜講師に禁断のお願いってのもOKなのじゃろか!?

よっしゃ、俺は『副担の彩音講師に1日何やってもいい許可』とか貰っちゃおー。

お前は彩音講師ファンか、じゃぁ俺はー・・・


「えっ、ちょっ、それは・・・。」

顔を真っ赤にする彩音。オロオロしていた彩音が更にオロオロする。

灼夜はドヤ顔で睦月達のほうを見て、じゃ任せたっ☆とウインクをした。

それを見て睦月の横で夢斗が溜息をつく。

「はぁ・・・。灼夜さんはこの学校でも強い権限を持つ人だから殆どの願いを叶えれるようなもんだけど、そんな事言っちまって火の付いた奴等の相手は誰がすると思ってんだよ。ったく大変だぜ。」

「お前も大変な人の下に付いたな。けどま、いいじゃないか、特連部のお前に普通の奴が勝てると思えないしな。」

知春が不服そうな夢斗を慰める。夢斗は、まぁそうですけど・・・と言いながら背もたれに寄り掛かり、面倒くさそうにズズz・・と姿勢を崩した。

「じゃぁやる気が出ない人や、ゲームに参加しない人は教室から出て行ってね。」

灼夜がそう言うと、ガタガタッと40人いる中の5人位が立ち上がり、荷物を持って教室から出て行った。出て行く人は眠そうにしている者や無表情なままの者等がいたが、睦月から見た彼らは教室にいる人とは一味違った不思議な空気を纏っている様に見えた。


「では残った人は全員参加って事で、早速移動を開始するわよ!」

パチンッ!

灼夜さんは不参加者が教室から全員出て行った事を見届けると手を上げ指を鳴らす。

すると、睦月達の足元に教室いっぱいの青い大きな紋様が映った。

その瞬間教室の壁が、景色が、空間が歪む。

「うぉっ!?」

睦月は驚き、声を漏らした。


教室の壁及び天井がなくなって、景色が森に変わる。

森の中に、天井及び壁の無い教室があるだけのそんな状況。睦月達の足元には青色の大きな紋章が映ったままとなっており、睦月は慣れない変化に呆然とした。

「じゃぁ参加する人は各自ここに置いてある風船を取りに来て。この風船は一度くっつくと割れるまでその人もしくはその人の衣服から離れないし、自分ではない他人の魔力が当たる事で割れるから、共戦を張る人は仲間の魔力が触れない様に注意してねー。」

教壇の横に置いてあったダンボールを空け、教壇の上に置きその説明をする灼夜。それを聞き終わると各々机から立ち上がりダンボールから風船を持っていく。


知春、椿、夢斗も立ち上がり風船を取りに行こうとすると、今まで緊張して黙っていた睦月が耐え切れず、夢斗のスーツを掴み小さな声で聞いた。

「あ・・・あの、僕もこのゲームに参加するんですか?昨日来たばっかなのに・・・魔力とか言われても僕は・・・」

夢斗は申し訳なさそうな顔をする睦月を見て、優しく微笑んで言った。

「・・・大丈夫、耀は俺が守ってやるし、力の使い方ぐらいなら俺が教えてやる。まぁ、負けてもかまわないものだし、力試しだと思って軽い気持ちでやってみろよ、な。」

「・・・、はい。」

睦月は少し考え、まだ不安そうな顔で立ち上がり、夢斗と一緒に風船を取りに行った。


「お、本当にこの風船離れないな。」

ピンクの風船を右手に付けた黒スーツの男がブンブンと腕を回す、が風船は全く離れる気配が無い。そんな光景を夢斗達が感心して見ていると、灼夜が言った。

「まずは1組対2組!2組の人達にはもう説明は終わっていて、その辺まで来てるかもしれないから気をつけてね。1組はピンクの風船、2組はオレンジの風船だから色を見ればわかるはずよ。ゲーム終了時間は17時、では・・・よーい、始め!!!」

全員が森に出て風船を付けた事を確認すると灼夜は開始を宣言した。

その瞬間に、そこにいた30人程の1組メンバーが散りじりに森の中に走りだし、散っていった。そして開始宣言場所に残ったのは睦月、夢斗、知春、椿そして監視役の灼夜と彩音だけとなった。灼夜と彩音は青色の紋章の上に残された椅子を一つずつ持ってきて座った。


「じゃぁ俺らも行くわ。ご褒美もかかってるしことだしお手柔らかに頼むぜ、特連部のお二人さん。」

「そんなお世辞はいらないですよ知春さん。」

知春の言葉苦笑いで返す夢斗。

椿は知春と腕を組むと「ばいにー。」と2人に手を振って、知春と共に森の中に消えて行った。


「さて、俺らはどうしたもんかな・・・あ、そういえば説明がまだだったな。耀、ここがどういう場所だかわかるか?」

夢斗が睦月に得意げな顔をして質問する。

「ただの森の中・・・ではないですよね。多分・・こう言った戦闘の為に作られた仮想の空間、的な場所ですか?」

「正解。この森は仮想空間でできた物だ。だからこうやって派手にブッ飛ばしても文句は言われない、ぜ!!」

夢斗は喋りながら、ポケットから札を一枚取り出し、右手で札を正面に構えて札自体から赤い五芒星を出し、そこから白い光を放った。その光は出てくる際にドンっと衝撃音をあげ、正面にあった木々を貫通し、奥の方まで木々を貫いていく。

ズズズn・・・

打ち抜かれていった木々が次々と倒れ、それを得意顔で見る夢斗。手に持って札を手放すと、札は静かに燃え出し、地面に付く前に燃え尽きた。


ワー、夢斗さんスゴーイ・・・今のナンデスカー?

訳が分からない攻撃とその威力の凄さに睦月はポカーンとしている。

その時、遠くの方で声がした。


おい、一人やられたぞ!

くそぅさすが特連部、もうばれてしまったか。

しょうがない、ここは正面きって数で攻めるぞ!


「・・・バレバレだっての。さて・・特連部の実力ってやつを見せ付けてやるとしますか!」

そう言って夢斗は左手に風船を持ち、右手に胸ポケットからカードの様な物を取り出して構えた。カードには太極図のような紋章に、何処かで見た事があるようなニコちゃんマーク崩れの顔が描いてある。

睦月は、夢斗がカードを構えているのをじっと隣で見ていたが、ポンっと言う音と共に夢斗から出てきた白い煙に覆われた視界を奪われた。ゴホゴホ・・と咳き込み、な、なんだぁ?と煙を掻き分ける睦月。白い煙が薄くなってくるとやっと夢斗のシルエットが見え始める。

睦月はそこで目を疑った。夢斗の服装が一瞬でスーツから黒の狩衣に変わっている。頭には烏帽子が乗っており、左手に持っていた風船は黒い布で覆われていた。

「・・・ん?どうかしたか?」

唖然とする睦月を見て不思議そうな顔をする夢斗。

「・・・夢斗さんその格好は?」

「あぁこれか?俺の戦闘服のようなもんだよ。スーツよりもこっちのが戦いやすくてな・・・っとそんな事を言ってる間にお客さんが来たぜ。耀は下がって俺の戦い方でも見てな。」

そう言って前に歩いていき、黒い布で包まれた風船を左側に抱え、右手をバッと振って札を構えた。

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