第六話 基地
紫の布石。謎の弾倉。雪降る基地。
定例平常だるだるパート。
間開いてすいません。
里に爆撃。そして救援…
この幻想郷に現れた帝国海軍も役目を果たしていた。
人間の里漁港 昭和85年(第125期)12月25日17時01分
里の中心部にある商店や町家のごたごたを抜け、西にある漁港へと到着した。
ここからは我々の乗艦が停泊する港も見える。
小さな浜辺に上陸用の特型運貨艇(注:大発動艇)が数隻上陸していた。
沖合には特異な艦影の飛行艇母艦風見が投錨し、自慢の起重機を使い甲板から荷物を満載にした特型運貨艇を次々と海面へと下ろしてゆく。
「次々と上陸してきますね。艦長。」
「いや、どんだけ資材運んできたんだよ…」
接岸した運貨艇は陸上側で待機していたトラックに荷物を積み替え、次々と現場へ向かっていった。
順次食料から資材から何なりまで輸送されるだろう。
「それにしても…海って広いのね…」
霊夢がそう言い車から身を乗り出す。ツンと刺すように冷たい潮風が吹く。
「そういえば、昨日からこうなったと言っていたな。元々はどんな感じだったんだ。」
「幾つかの小さな川が流れこむ山に囲まれた湖だったぜ!」
魔理沙が答える。山に囲まれた湖か…実にありがちな田舎町だ。
「似た感じといえば諏訪湖や河口湖…日本国内にはありふれてますね。」
副長が答える。
「これだけの情報量じゃ断定することはできん。何か他に無いのか。」
「稗田さんのところに行ったらどうかしら。あそこには幻想郷のあらゆる事柄が収められた巻物が有るわ。」
稗田…聞き覚えのある名前だ。
「わかった。今度行ってみよう。」
「あとは里の寺子屋ね。あそこにも有るわ。」
「案外ほうぼうに資料が有るんだな。」
「いくら妖怪ばかりの幻想郷と言えど、こういう物を編纂する人はいるわ。」
そのような話を聞きつつ、基地に向かい車を走らせ始めた。
幻想郷港(仮)陸戦倉庫前 17時52分
外はすでに真っ暗になっていた。明かりが煌々とつく陸戦倉庫の前に車を停める。
アリスを魔法の森内の自宅で下ろし、霊夢と魔理沙と別れるところであった。
「今日はいろいろすまなかった。これからもよろしく頼む。」
「それは私達の台詞よ。ここには妖怪とかいるし、異変とかもあるかもしれないから気を付けてね。」
「分かった。気を付けて帰れよ。」
そう言い彼女たちを見送った。私と副長はくろがね四起を倉庫に戻し、二人で艦へと戻る。
艦の横にかかる急な舷梯をのぼり舷門へと向かった。
「いま戻った。」
「艦長と副長。お疲れ様です。」
舷門にて当直の少尉が言う。私は上陸札が置かれた机を見る。ほとんどの上陸札が残ったままだ。
「みんな外に出てるんだな。なんか変わったことでもあったのか?」
「ええ。今、私と通信長を艦に残し他の人員はこの基地内にある建物を一つ一つ確認しに行っています。」
「そうか。」
「それで、先ほど一度報告に機関長が来まして、司令部や倉庫が幾つか。飛行機用の防空壕や大きなドッグ。艦艇工場まで。」
「ずいぶんと多機能なところだな。」
「まるで鎮守府の様だとか。」
「鎮守府ねぇ…どちらにせよここに当分居座ることになるだろうな…さて。外套を取ってから私達も少し出てくる!上陸札はそのままにしてくれ。」
「へえ。お気をつけて!」
艦長室に取りに行った外套を着て夜の港へ繰り出す。広い港には静かに雪が降り積もる。
大きな港と言え、ここは軍港だ。周辺一帯は有刺鉄線付きの柵と目隠し用の木々にて囲われている。
「寒いですね艦長…」
「南方にいたからあまりわからんかったが…寒いぞ我が祖国。真冬真っ盛りじゃないか。」
しんしんと降る雪に音は吸い取られ雪を踏む音だけが残る。あとは静寂だ。
そうして歩いてゆくと、先ほど前を通った立派なコンクリ造りの建物につく。
「司令部か何かか…?」
「中に入ってみましょう艦長。敵はいないはずです。」
そう言うと副長は、ドアに手をかけた。
「そうだな。」
扉を開けると高天井のホールが目に飛び込んだ。明るく電球が灯り綺麗に彩られた立派なホールだ。そしてその目の前には自艦の機関長がいた。
「機関長!何しているんだ。」
「かっ艦長!いえ、ここの中がどうかっているかを調べるために…」
「いや、別にどうこう言うつもりは無いからいいのだ。何かめぼしいものはあったか。」
「はい。他の兵員の報告によると、ここは司令部のようです。長官室から司令部室。通信室など立派すぎるほど整った設備です。」
「そうか。私は中を見てくる。引き続き作業に当たれ。」
「はっ!」
機関長は再び他の兵員の指揮を続けた。今までこんなにハキハキ働く野郎だったか…
そんなことを思いつつ大階段を上がり各部屋を覗き込む。天井の高い建物で司令部と言うより洋館の印象だ。
「ずいぶんと暖かいな。」
「ペチカ…でもあるのかもしれませんね。」
中は暖房かペチカがあるのかしら無いが暖かく、外套を着なくともいいほどだ。
赤い絨毯が敷かれ長く伸びる廊下は国会議事堂のような面立ちである。
「ここが司令部室か。やけに立派だな。」
室内ではこちらが見ているのも気が付かず、兵員たちが黙々と掃除と片づけをしている。
「立派な部屋ですね…本当に帝国海軍の施設なのでしょうか?」
「正直…わからんな。と言っても日本語のプレートが掛かっているし、長官室という名称からやはり帝国海軍の施設だろう。」
ぐるっと司令部内をめぐる。隣には通信室。奥の奥には長官室と連なっており、司令部機能は二階に集約されている。
また三回には倉庫など。一階には広いパーティホールとそれこそ充実した設備だ。
「なんでこんなに立派なんだ。」
「外賓を招待する予定だったのかもしれませんね。」
司令部内を回り終えそう言いながら正面ホールの大階段を下る。下では機関長と誰かが話していた。
「あっ艦長!こちらの方がお呼びです。」
「君は…さっき士官たちがが集まった時にいたな。」
作戦開始時に居た角刈りの参謀…
「ええ、そうです。神谷作戦参謀中佐です。」
「何の用だ?」
「えーとここに到達した人員のリストを簡易ながら作りました。」
数枚にまとめられた書類を渡される。
各艦の人員のほか、駆逐艦妖夢に乗せられていた陸戦隊一個中隊や、駆逐艦霊夢に乗っていた航空兵と整備兵。
その他飛行艇母艦に乗っていた整備工場の人員に、飛行艇に搭乗していた参謀たち。
それらがリスト形式でまとめられていた。
「で、結局何人この場にいるんだ。」
「ここに書いてあります通り、あなたの乗艦である白沢だけで880人程度。諸々合わせ2160名程度でしょうか。」
「正確な値は出てないのか。」
「ええ。そうですね。一度落ち着いたら再び集計してみます。」
この混乱の中正確な値が出るわけもないよな。
「分かった。あと兵器とかの集計はどうだ。」
「岡部参謀の副官がやっていたはずです。」
「後で聞きに行ってみるか。それではご苦労だった。」
「そういえば、巡洋艦の艦長で中佐は珍しいですよね。」
ふと相手から聞き返される。
「いや、フィリピンから内地に戻ったら大佐に昇格する予定だったのだ。ほれ。フィリピン発つときに渡された辞令だ。」
そう言い、内ポケットから一枚の紙切れを出し参謀に見せた。
「横須賀についたら正式に昇格される予定だったんだがね。こんなことになってしまってね。」
笑いながら言う。
「そうですか…」
「まあいい。休んでくれ。」
「はっ!」
神谷参謀は館の外にでて、私と副長も機関長と別れ後を追いかけるように外に出た。
「しかし寒いな。」
「そうですね…」
そう言い、雪が薄く降り積もった道を歩く。
隣の飛行機格納庫に向かう途中、後方から誰かが叫んできた。
「かんちょぉぉぉぉー!!」
後ろを振り向くと、自転車に乗った航海長が走って来た。
「かんちょ!探しましたよ!」
「とりあえずその話し方を直せ!いったい何があったんだ!」
「艦にまたあの紅白の娘が来ています。艦長に会いたいとかっ!」
「なんでまた…今すぐそっちに向かう。おい副長!走るぞ!」
「えっはいっ!」
副長の手を引っ張り、艦に向かい走り始めた。今度は何の用なのか。
巡洋艦白沢操舵室 19時03分
「で、何処に霊夢達を通したのだ。」
艦内に残っていた運用長に聞く。話によれば霊夢ともう一人艦に来ているようだ。
「前と同じように士官室に通しております。」
「分かった。」
制服は一種軍装(いわゆる紺色詰襟の冬服)に着替えてから、士官室に向かう。
「失礼します。」
士官室の戸をあけ言う。
「遅れて申し訳ありません。」
「大丈夫よ艦長さん。」
霊夢が言う。その間に着席し姿勢を整えた。
霊夢の隣には金髪で長髪な女性が座っていた。身長もそれなりに高そうだ。
「さて。今回は何の御用で。」
「ええ。あなたに会いたいって言うのが居たから連れてきたのよ。」
「八雲紫よ。」
「大日本帝国海軍 勝浦蒼中佐です。」
「あなたがどのようにここにきたかを直接聞かせてほしいの。」
なるほど。そういうことか…
「分かりました。長いですよ…」
そう言い私は一から話し始めた。
一方、その頃人間の里 19時10分
岡部参謀の指揮による救助活動は終了していた。瓦礫は焼け焦げた跡地に積み上げられている。
「犠牲者が少なくてよかった。」
岡部参謀が言う。
「ええ。そうですね。」
答えるは駆逐艦妖夢の船戸艦長だ。
瓦礫の処理も人海戦術で終わり、負傷者等は野戦病院状態の公民館に収容。その他の人々も食糧の配給を受け、落ち着きを取り戻していた。
公民館は病院となっており、陸戦隊臨時司令部や特別警備隊分遣隊本部なども設置されていた。
すでに瓦礫の整理に当たっていた兵員は暇となり、帰還するための準備をしていた。
「よし。そろそろ一部は撤退とするか。通信士!艦の方に連絡を入れてくれ!帰還する準備が整った者から、トラックに乗っていけ!」
「了解!」
通信士や周りにいた兵員がが答える。帰る準備の整った兵員から次々とトラックの荷台に乗った。
「参謀!あちらからの返答ありました。了解とのこと。」
「わかった。ほれっ!早く乗ってけ!」
ちんたらしている兵員の背中を叩きつつ言った。
数台のトラックは列をなし里を発つ。ヘッドライトに照らされた雪がぼやっと浮かび上がる。
参謀と軍医・特警隊などの一部の人員を残しあとは全員帰還だ。
我々はそれを帽振れで見送る。
「参謀?」
横で略帽を降っていた白衣の軍医長が聞く。
「どうした。」
「いえ…私たちはいつ帰還できるのでしょうか。」
予想外の質問だ。考えてすらなかった。
「こっちが一旦落ち着くまでだ。それからは現地の医師に引き継ぎ。我々は帰還とする。」
「分かりました。それまで全力で処置に当たります。」
「頼んだぞ。」
軍医長は強く頷くと、他の軍医も連れ公民館の中へと入っていった。
岡部参謀は他の兵員太刀が中へと入っていった後も、しばらく外に立ち空を見上げていた。
「久々に祖国の土を踏めると思ったら…このザマか。」
しんしんと降り積もる雪。ただただ広がる静寂。外套も着て来るのだったと後悔していた。
「…寒いな。私も中に入るか。」
そうつぶやくと参謀も暖房の効いた公民館の明かりの中へと逃げこんだ。
巡洋艦白沢士官室 19時45分
「なるほどね…」
「ええ。之が私の経歴。それとこの艦隊の概略です。」
八雲紫と私とで長いこと話を続けていた。
気がつけばもう少しで巡検ラッパが響く時間である。外の廊下では帰還してきた兵や士官が歩いているようで鉄甲板が響く音がする。
「こんなに長々話してもらって悪いわね。」
「いえ。こちらとしてもありがたいです。」
「私としてもなにかあったら協力させてもらいたいわ。」
「ありがとうございます。我々も何かあったら協力させて頂きます。」
これでだいたい話し終えたはずだ。霊夢は退屈そうに椅子にもたれかかっている。
「そういえば艦長さん。あなたに渡したいものがあるの。」
少しの静寂の後に彼女はそういった。机の上に二種類の弾倉を置く。霊夢がおもいっきり覗き込む。
無塗装で白銀色な14年式拳銃の弾倉と黒く染められた89式小銃の30連装弾倉だ。
「何でしょうこれは。見た目には特に変わった点もない普通の弾倉ですが…」
「中に入っている銃弾を見てご覧なさい。」
2つの弾倉を手に取り、装填されている弾を見た。
「…5.56ミリNATO弾や14年式拳銃実包に純銀弾なんてあるんですね…」
装填されていたのは弾丸と薬莢全て銀色に輝く銀の弾丸であった。
「昔拾ったものよ。あなたに渡しといたほうがいいかと思って。」
「純銀弾といえば確か妖怪退治に用いるものよね。」
紫と霊夢が次々と話す。
「確か…吸血鬼とかに有効という話は聞きましたね。」
「ええそうよ。あと、その銃弾には魔力が込められているわ。こういう効果をもたらすかは分からないけど。」
「ならば、実射してみますか。」
当然ここは軍基地だ。いわゆる射撃場もあるだろう。
「私も興味があるわ。夜だけどいいのかしら。」
それは考えていなかった。
「少し見に行ってみましょう。」
そう言い、弾倉をポケットに入れ、彼女たちをつれ部屋を出た。
幻想郷港(仮)射撃場 20時01分
自分の部屋からホルスタに収められた十四年式拳銃を持ち出し腰につけた。
次に、巡洋艦の武器庫から89式小銃と実包を受領しこの港の端ににある射撃場に向かう。
射撃場では陸戦隊の隊員たちが射撃訓練をしていた。
「勝浦長官!」
全員が整列し敬礼してきた。合計6人…一個班か
「ああ、気にしないでくれ。いないものと思って訓練してほしい。」
「はっ!」
そう言うと彼らは再び的に向かい射撃を始めた。
私としては長い間艦隊勤務で、射撃場で射撃訓練をするのは久々のことだった。上海特別陸戦隊で養った腕も鈍ってそうだ。
「それではまず最初に、普通の弾でやってみます。」
紫と霊夢に向かいそういう。
「わかったわ。」
89式小銃に弾倉を突っ込みコッキングレバーを引く。鋭い金属音と共に銃弾はチャンバー内に送られたようだ。
そして、バイポッドを立て台に据える。
「これで撃てます。」
「どのぐらい当たるものなのかしら。」
「最近はやってませんからね。」
銃を構えセーフティを"タ"に切り替えながら言う。
横で射撃訓練をしていた陸戦隊員たちもこちらを物珍しそうに覗き込んでいた。
変わった形の銃を持ち自分よりはるかに上官は横で射撃してるのだからそりゃ見るだろう。
そして大きく息を吸い精神を落ち着かせながら…ゆっくりとトリガーを引いた。
パン パン パン
乾いた発砲音とともに床に空薬莢が落ちる。
パン パン
「こんなところでしょうか。」
セーフティを"ア"に戻し立ち上がる。案外まとまって当たっているようだ。
「結構真ん中に当たるじゃない。」
レンジ内に入り、大きく丸が描かれた標的の紙を回収する。
「グルーピングも良好。まあまあですかね。」
久々の割には案外うまくいったようだ。
次に14年式拳銃を手にとる。
「次に…長年愛用している14年式拳銃です。」
「こっちの方じゃあまりみない拳銃ね。」
ここにも拳銃は流れ着いているのか。
「こちらの方にも有るんですね。」
「ここ最近は重火器や兵器はかなりたくさん流れ着くわ。確か…コルトガバメントとかルガーとかグロッグとか言うのが流れ着いてたわね。今ここに1つだけあるわ。」
彼女がそう言うと、スキマたるものから一挺の拳銃を取り出した。
「それは…グロッグ17ですね。」
「撃ってみる?」
「まずはこいつを先に撃たないと。」
そう言いレンジに入り、弾倉を挿入してから重いボルトを引く。こちらもまた心地良い金属音がする。
セーフティを解除し目標を狙う。こちらは必然的に立射となるので少々照準がぶれてしまう。
そして息を吸い、トリガーを引いた。
パン パンパン パン パン
一瞬トリガーの引き方が狂ったようで、二発間髪入れずに撃ってしまった。
「これで…いいかな。」
そう言いホールドオープンとなった銃を台に置き、レンジ内の紙を回収しにいく。
標的の紙には中心より上下にぶれ、帯状に穴が開いていた。
「あー結構ぶれているのか。」
「それでも結構当たっているじゃない。」
「たしかにそうですがね…」
5発しか装填していなかった14年式拳銃はホールドオープンとなっている。マガジンキャッチとを押し弾倉を取り出す。
「さて次は、銀の弾丸の実射試験するのね。」
「そうですね。」
銀の弾丸といった瞬間、陸戦隊員たちが驚いた目でこちらを見た。そりゃそうだ。通常では儀礼的な意味しか持たない銃弾だからな。
「そういえば、魔力が込められているってどういうことでしょう。」
「私にも、いかなるものなのかは分からないわ。」
「そうですか…よくまあ都合よくあったものですね…」
どういうものかわからんものを撃っていいのか…?
そんなことを思いつつ、弾倉を拳銃に突っ込んだ。ボルトを引き先ほどと同じように構えトリガー引いた。
パンッ!
純銀の薬莢が床に落ちる。緑色の発光体が三方向に別れ壁に吸い込まれていった。
壁にはきちんと銃痕が残っている。
「ってえ!?何だこれは!」
何を思ったかマガジンを取り出し中を見る。
弾は減ってすらいなかった。いや空薬莢は床に落ちているから、銃弾が増えているのだ。
思わず紫と顔を合わせる。
「どういうことですか。これはっ!」
「私たちの使う通常弾幕みたいなもかしら。こんな感じに。」
そう言うと彼女は手を前の方に出し、数発の弾を放った。
さっきの銃弾のように別れ、四散し飛んでゆく。
ふと横に居た陸戦隊員太刀を見ると、驚いた顔でその場に座り込んでいた。
「…これは…対人戦には使えませんね…」
「弾幕を張るような相手に使うしか無いわね。」
「ということはこれもこんな感じなですかね?」
射撃台の上においた89式小銃の弾倉を手に取り言う。
「そうでしょうね。」
89式小銃持ち上げ弾倉を抜き、また純銀弾の入った弾倉を入れる。
"3"に切り替え、立射で目標を狙った。
ダダダッ ダダダッ
次々と空薬莢が飛び散り、今度は青い光の弾が放たれた。それぞれの銃弾は5つに別れ壁にあたった。
こちらもマガジンの穴から残弾数を確認する。
「やっぱり減ってない。いや弾が中で増えている。」
「なるほどねぇ…魔力が続く限り銃弾が増殖する弾倉といったところかしら。」
「っそそんな馬鹿な…」
弾倉を抜いてからコッキングレバーを引き残弾を外に出す。
また14年式拳銃の方も弾倉を抜いてからボルトを引きつつトリガーを引き、ゆっくりとハンマーの位置を戻す。
小銃と弾倉を台の上に置き、近くにあった椅子に放心状態で腰掛けた。
「あなたもすごいじゃない。何の練習もなしであんなの撃てるなんて!!」
横に立っていた霊夢がやけにはきはき言う。
「まったく…わけがわからない。」
ため息をつきつつ私はこっそりそうつぶやいた──
巡洋艦白沢ブリッジ 21時11分
「艦長?艦長!」
「んぁ副長か。すまん。」
ついうとうとしていたようだ。
あのあと霊夢たちとは別れ、艦に戻っていた。
ブリッジの艦長席に座り今日の銃弾のことや今後のことを深く考えていた。
そうして気がついたら寝てしまっていたようだ。昨日からピリピリしていたせいで、ほとんど眠れていない。
「あのあと結構あっさり別れたんですね。」
「大体のことは話し終わったからな。訳のわからん物まで渡されて。」
「訳のわからん物…とは?」
「何故か純銀弾が装填された弾倉二個だ。」
「はぁ…?」
「…まあいい。他の兵員は?」
懐中時計を見ると21時14分を指し示している。いつの間にか巡検の時間も過ぎている。
「もう巡検も終わりみんな吊床の中ですよ。もっとも。当直士官は起きてますが。」
「そうか…そんな時間か。内地に戻れると思ったらこれだもんな…みんな疲れてるだろう。」
「そうでしょうね。…この状態もきっとどうにかなりますよ。」
「副長…あんたは楽観的でいいな。」
そう言うと副長は黙りこんでしまった。
外は雪が吹き付けブリッジの窓も白く霜が付いている。艦橋内はボイラーの熱を用いた暖房で少しは暖かかい。
雪風が吹きつけ音。かすかに揺れる電灯。荒波だった海。
「さて。私は艦長室に戻ることにするか。」
そう言い懐中時計を持って艦長席から立ち上がる。
「分かりました。私も副長室に戻ります。」
「そうか。途中まで一緒に行こう。」
そう言うと共にブリッジを出た。
長い長い…一日が遂に終わった。
次は何処へ行くのか艦長たちよ?
永遠亭?紅魔館?白玉楼?
本格的な戦争はまだ後になりそうです。
文字数多すぎすいません。