第五話 復旧
さてさて。今回は戦闘なしのだらだらパート。
軍人さんたちの活躍?
人間の里への爆撃阻止できず───
一通の電文は司令部に衝撃を与えた。艦への被害も多少なりとも発生していた。
そこで、勝浦艦長は迅速な判断を下し里へと救援隊を派遣することとした。
幻想郷港(仮)陸戦倉庫前 昭和85年(第125期)12月25日15時12分
駆逐艦妖夢の人員は皆下ろされてから、トラックへ詰め込まれる。これで大体300名ほどである。
大東亜戦争末期では大量に増設された機銃のために定員を超えて乗員が乗っていた上に、陸戦隊を輸送していたため人員は有り余っていた。
多数の機材や人員・車両と共に、人里へ走ってゆく。
岡部参謀はクロスレイ装甲車を先頭に先んじて人里に向かったようだ。
一方、海のほうでは特に大型の車両や資材を積んだ飛行艇母艦風見が今まさに出港せんとしていた。
巡洋艦白沢と駆逐艦霊夢は半舷上陸とし、私は陸戦隊士官制服に着替え埠頭に立ち、この救援が始まる様子を眺めていた。
「艦長!」
後ろを振り返ると、副長と博麗霊夢と霧雨魔理沙の三人組が立っている。
「ああ、何だ。」
「我々も里に行って陣頭指揮をとるべきでは?」
といっても岡部参謀に任せてあるしな…指揮系統を混乱させるわけにもいかない。
「あくまで指揮は岡部参謀だ。我々は視察程度しかできん。」
「ではその視察に。」
いきなり霊夢が割り込む。
「それだったら、視察ついでにあちらの長に話しつけてきたらどうかしら。」
我々の存在を認めてもらわなければならない。まあ認めるも何も、軍だからどうにかなりそうなものだが。
「うーよし!我々も里に向かうぞ!二人も!」
博麗霊夢と霧雨魔理沙にもそう言い放った。
私は兵器の集計作業に当たっていた上等兵に話をつけ、陸戦倉庫からくろがね四起を出す。助手席側には九二式重機関銃が据え付けられていた。
次に武器庫から小銃を持ち出す。ざっと並んだ銃の中に何故か89式小銃が…
「なんでこんなんが…」
あまり気にせず、一挺しか無い虎の子89式小銃を手に取り、一〇〇式機関短銃も持ち出す。弾薬もたっぷりだ。
腰の拳銃弾入れに入っている十四年式拳銃のマガジンにも弾を込める。
そしてそれらを担ぎ車まで戻っていく。しかし重いなこれ。男の時はこんなに重く感じなかったのだが…
そうして頑張って持ってきた小銃をくろがね四起にほおりこむ。これで準備よし。
「艦長が運転するんですか?」
副長がいきなり聞いてくる。
「何か文句あるかね。」
「いやーその…背が低くなったから運転しづらいのd
「私の乳が小さいとでも言うのかね!そーですよ私なんて背も乳も無いんですから…」
「いや艦長!私が運転しますから私g
「あーもう!乳なんて関係ないじゃない!そんないがみ合いはいいから行くわよっ!」
霊夢が仲裁に入るが、収まりがつかない。気がついたらスペルカード片手に立っていた。
「あれ東雲?お前どっか行くのか?」
いがみ合いの中駆逐艦霊夢の艦長がやってきた。こいつとは兵学校時代からの知り合いだ。
「あっと、吉田中佐か。ちょっと里の状況を偵察してくるだけだ。」
「ああそうか。俺らはどうすりゃいい。」
こいつも女になっているが口調は変わらない。
「まあ半舷上陸としてくれ。」
「あー了解。あと、通信長からの伝言で無線機もってけと。」
副長や霊夢達を車に乗せ、無線機を受け取り、副長に持たせる。
「よし行ってくる!」
アクセルを踏み込み基地の守衛室と門柱の間を抜ける。バックミラーを見ると一部の人員が帽振れで迎えに出ていた。
「いつの間に出てきてたんだな。そういえば霊夢達は飛べるのに何故乗ってるんだ?」
「飛ぶのもあなたたちが思う以上に疲れるのよ。」
そーなのか…と心で思いつつ、未舗装の森を走っていた。
魔法の森 15時32分
「艦長さん…ここ大丈夫なのか?」
魔理沙が聞く。よく分からない質問だ。
「何故だ?何もない普遍的な森じゃないか。」
「ここは魔法の森ってみんな呼ぶ。普通の人間だったら森の茸から放出される胞子で錯乱するぜ?」
特に何もない。横にいる副長も全く変りない。
「あいにく私たちには何も無いようだな。先行する部隊は森を避けて行ったから影響はわからんな。」
「艦長さんの方はそこに浮いているやつで半人半霊ってわかるけど…副長さんは?」
そういえば聞いていなかったな。
「結局お前はそのままか?魔法使いにでもなったのか?」
「どうやら魔法使い…まで行くかわかりませんがそれにちk
ドゴォオォオオッ!
いきなり、目の前で道が丸ごと吹き飛ばされるような爆発が起こる!ハンドルを大きく切り思いっきしブレーキをかけちょうど横になるような状態で停車した。
「総員降車!撃ち方用意!」
車両から飛び降り、車体の影に膝立ちする。霊夢達もその後ろ続いた。
手持ちの89式小銃にマガジンをつっこみボルトを引く。心地のよい金属音と共に弾は装填された。
「なんだ今のは!」
「分からないわ。よくあることだもの。」
霊夢が冷静に答える。私は立ち上がり照準越しで周りを見る。耳を澄ませ周辺に気を配る。
草を掻く音が聞こえた。右手で素早くア(安全)から3(3点バースト)に切り替えその方向に銃を構えた。
「姿を表し手を上げろ!さもなくば撃つ!」
…返答がない。しょうがないので、威嚇射撃がてらに3からレ(連発)に切り替え、トリガーを引いた。
ダダダダダダダッ
心地のよい三連音とともに銃弾が放たれる。車の裏に隠れ副長も機関短銃を打ち続けていた。
当然相手も反撃してくる。多数の弾を幕状に放ち一面なにがなんだかわからない状態となっていた。
弾幕を飛び避けつつ、再び小銃を向け銃弾を放つ。
「艦長さん!さっき言ったスペルカード使って!」
艦内で話していたときに言っていた札…スペルカード…
「副長!支援しろ!」
「了解!」
私は車両の裏に滑りこむ。対し副長が相手に弾をばら蒔く。
図嚢に手を突っ込み適当に札を取り出し、言われた通りに札に書かれた名前を唱えた。
「兵器『長槍─酸素魚雷』…」
そう唱えると、後ろに魚雷発射管が現れた。宙に浮かんでいるが。
「撃ち方はじめーっ!」
少しの間を開け叫ぶ!バスンッと鈍い爆発音と共に宙に浮く魚雷が発射される。
発射された魚雷は速いスピードで飛翔し次々と着弾していった。大きく噴煙柱が立ち上がり土が飛び散る。
いつの間に敵の攻撃も止んでいた。
スクリューから出ている泡にも当たり判定はあるのだろうか…
「どうだ…」
徐々に噴煙が切れ、向こう側に誰かの姿が現れる。ベタな展開だ。ここでやっ…やったか!?とか言うと確実に死亡フラグである。
「外来人の割には強いのね。」
案の定、生きているようだ。
「あいにくながら。人間ではないものでね。私は大日本帝国海軍東雲蒼中佐だ。名を述べろ!」
小銃を向けつつ言い放った。歯向かうならばここで攻撃してくるだろう。
「私は、アリス・マーガトロイドよ。」
「「アリスっ!?」」
車両の裏に隠れていた霊夢と魔理沙が同時に言い、そして同時に飛び出した。
「って霊夢と魔理沙じゃない!」
「なんだ知り合いだったのか…」
いきなり緊張が解け小銃をおろしセーフティをかける。
「なんであんなこといきなりするんだぜっ!」
魔理沙がアリスに問うた。
「いや、あんまり見かけないものが通ったからよ。初めてじゃない?こんなのが走ってるなんて。」
くろがね四起の事だろう。
「攻撃を仕掛けて申し訳ない。と言うかそれだけでいきなりあんなことするなよ…」
「こちらこそわるかったわ。で、これは何かしら。」
弾幕によってベコベコになったくろがね四起をさして言った。
とりあえず彼女も車にのせ、里へと向かう。道草食う暇などはない。四人乗りの車に五人+弾薬箱はきつい。
「これは自動車というものだ。人を乗せ早いスピートで動く言わば鉄の箱だ。」
「何で動いているのかしら。」
ずいぶんと、探究心がある少女だな。
「エンジンというものだ。日本語で内燃機関。」
「河童たちがそんなの言ってた気がするぜ。」
「ここにも入ってきているんだな。」
河童までいるのか…一体何がいると言うんだここには。
そんな話をしつつ、森を抜け里が見えてきた。
副長は基地から持ってきた魔法瓶からコップにお茶を入れていた。
「ところで東雲さん。あなた…女?」
副長から受け取ったお茶を見事吹き出しこぼした。
「かっかっ艦長!?」
「いや大丈夫だ。今は女ですが、今まで女→男→女と転生を繰り返してますねぇ。」
「いや、ずいぶんと男勝りな口調って思ったから…」
「体感時間で二日前ぐらいにゃ男で、太平洋上を航行してましたからね…元が女でもすぐに戻りませんな。さて。到着だ。」
里の中へ車を乗り入れ、クロスレイ装甲車の後ろに止める。
一体どういう状況なのか・・・
人間の里 住宅密集地帯 16時15分
小銃等は車に残し、岡部参謀の元へ向かう。周りでは多数の兵士が作業服で救助作業の当たっていた。
「参謀!岡部参謀!」
「東雲長官!どうしてこちらへ。」
指揮車のラッタルを下りこちらへ来た。
「ただの視察と、こっちの村長と話したいだけだ。」
「そうですか。この村の村長でしたらあちらに。村の人々の指揮をとっています。」
白髪を蓄えた老人である。思ったより若かそうだ。
「わかった。引き続き作業に従事してくれ。」
「了解!」
そう言い、彼は再び指揮車の上に乗り、人海戦術の救援を指揮していた。
さて…周りを見ると、倒壊した建物に焼け落ちた建築物。思ったより火がすごかったようだ。
「ずいぶんと延焼したんだな。」
「そのようですね。」
横にいる副長が答える。爆心を中心に大きく焼けた跡があった。地面深くえぐり取られ、土と焼けた材木が飛び散っていた。
…えぐり取られ?
「おい、副長。今米軍が対地攻撃に使用している爆弾ってたしか集束焼夷弾だよな…」
「…そういえばおかしいですね。何故地面が深く掘られるほどの大型爆弾を使ったのか…」
「その飛行機も幻想入りした直後で、適当な場所に爆弾を落としたかもしれないぜ。」
魔理沙がぼそっという。そういえばそうだ。十分ありえる。
「いい加減何が何だかわからんな。何でもありなのかここは。」
「そりゃそうよ。さっきみたいにいきなり襲撃もあるのだから。」
霊夢がアリスを見ながら言う。
「何よその私が悪いみたいな言い方…」
そりゃ事実あんたが悪い。
「そういがみ合うな。いまはこっちのほうが先だろう。」
そう言い、破壊された建築物の前に立つ村長のもとに副長と二人で向かった。
「すいません。」
「のぉなんじゃの。」
ステレオタイプの村長だ。
「大日本帝国海軍艦隊司令代理東雲中佐と申します。少々話をさせていただきたいのですが。」
「んじゃ少し待ちなさい。」
そういい、横にいる若い男の肩をたたき、近くの椅子に座った。
「今回は災難でしたね。」
「外界と遮断されてから…日本はどうなったんじゃ。こんな敵が飛んで来るようになったなんて何か起きてるじゃろ。」
いきなり外のことを話すこととは思わなかった。
「…日本は昭和16年にアメリカと戦争し…20年に敗戦しました。その後高度成長を遂げ年号も代わり…平成の世、日本は足踏み状態です。要約するとこんなところでしょうか。」
「そうか…陛下も崩御なされたのか…」
この時代の人間にとっては天皇陛下は現人神だ。当然こういう反応となろう。
「我々はここに来て横須賀鎮守府にも帰還できず、ここに駐留しようと考えています。そこで、食料等の補給や協力をして欲しいのです。見返りはこの地の防衛と。」
「わかったわかった。あなたたちもこまってるのじゃろう。協力しようではないか。」
「ありがとうございます。」
案外あっさり協力を取り付けられた。ここまで簡単に行くとは。
「その代わり…」
「なんでしょう。だいたいのことは受け付けますよ。」
「村に何かあったときは、今これのように救援して欲しいのじゃ。」
「ええ。日本臣民…いえ国民を護るのが我々の役目です。」
軍とはそういうものだ。
「頼んだぞ。若者よ。」
村長と強く握手を交わし、45度の最敬礼をしその場を辞した。
人間の里 陸戦隊指揮所 16時47分
再び岡部参謀の元へと戻る。
「参謀!長と話してきたぞ!」
「おぉ!そうですか。向こうの海のほうでは救援物資が届き積み下ろしをしているようですよ!」
「そうか。少しそちらの方を見てくる!」
また、くろがね四起にのり港の方へと向かう。霊夢やらも後ろにぎゅうぎゅう詰めにし乗っていた。
「さすがに五人乗せると立ち上がりが酷く遅いな…」
「元々の定員が4人な上、兵器も多数…重くなるはずです。」
「村のなかだからあまり飛ばさなくてもいいのが救いだな。下手に動かしたら人はねる。」
人間の里の中央部にある商店街を通過していた。目の前に人が多く殆ど速度は出せない。
周辺の人間は物珍しそうにこちらを見る。
「まあこんなもんか。こちらの人間にとって自動車なんて珍しいだろうしな…」
そう考えつつ里の南方にある小さな漁港へと向かっていた。
─もうすでに飛行機救難船…というか輸送船が到着しているはずだ。
後に気づいた。戦闘パートあるじゃない。
アリスはこんな感じて戦闘を仕掛けてきそう。
村長さんはよくいるおじいちゃんのイメージです。
次はついに紫さんが登場するでしょう…たぶん。