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第二話 発艦

だらしねぇな…

途中で行き詰まってたんだよ!

後の話ばっかり考えていた!

昭和85年12月25日5時30分 幻想郷

重巡洋艦「白沢」艦内。

 艦内には当直の声とラッパの音が響いていた。

「総員起こし!吊床収め!」

艦長はすでに艦橋にいた。外は雪が降る。真冬の天気だ。

「艦長。昨日は眠れましたか。」

副長が話しかけてくる。私は目をこすりながら言う。

「眠れるものか。何故か今眠くてたまらん。」

まだ外は暗い。夜中にも見える。海は昨日に比べはるかに穏やかになっていた。

 重巡洋艦であるこの艦は前部甲板も広大なものになっていた。

ふと視点を落とすと海軍体操を行うために下士官や兵がわらわらと甲板に集まっていた。

雪がちらつく寒い甲板上で体操をする。

「私も少し見てくるか。」

「艦長!?ちょっと待って下さい。私もっ!」

甲板に降りると全員が敬礼し、その後体操が始まった。

こうやってみると、海軍体操はずいぶん洗練された体操だ。

「そういえば、副長。この艦と僚艦で何か問題はなかったか?」

「ええ。特にどの艦もこれといった問題はないそうです。」

「じゃあ、全士官が女になったぐらいか。」

「そうなりますね。」

体操しているものを見渡すと、女になっているのがチラホラいる。

「困ったもんだな。」

「そうですかね。男臭い中の清涼剤になるでしょう。」

「兵は皆男だがな。機関科は10人の女が54人の男に囲まれることになるぞ。」

女性士官がいるのはいいが(自身含め)、力仕事が不可になる。

「うーあー…まあいいか。」

「もう何でもいいでしょう。それより艦長。横を飛んでいるその白いのは?」

私の周りを常にこれが回っている。白い幽霊みたいな何かだ。

「これこそわからん。こっちに来てからついたしな。」

「こんな事ばかりですね。」

「全くだ。」


 いつの間にか海軍体操は終わり総員手洗えの号令がかかっていた。

「副長。食事のようだからいくか。」

「そうですね。」

 重巡洋艦クラスでは非常に食堂も広い。戦艦にはかなわないが。

この艦では900名程度が乗っている。同伴している駆逐艦では300人程度。約三倍だ。

「食事!事業服に着替え!」

この号令で食事開始だ。士官は士官で固まって食う。

艦長は普通艦長室で食べるものだが、私は食堂で食べる。

「そういえば艦長。何故我々は性転換したんでしょう。」

影の薄い水雷長が言う。

「わからん。どうにもこうにも一旦上陸出来ればいいんだがな。」

「偵察機出しましょうか。」

飛行長が言う。

「忘れてた。800までに発艦できるよう準備してほしい。」

「了解しました。水偵二機発艦させましょう。」

「とりあえず、現状としては富山沖の湾近く停泊しているようだが。」

航海長に聞く。

「ええ。その通りです。」

「まあいい。通常どうりの配置で行くぞ。私は先に抜ける。」

 そのように言い残し、ひとり操舵室に戻る。高い位置にある環境ゆえに眺めがいい。

外を眺めていると、とても素早い何かが通りすぎて行った。

「飛行機…ではないな。現代戦闘機でもあんな速度は出ないはずだが。」

わけがわからない。


 時間は過ぎ、ほかの士官も艦橋の戻ってきた。飛行甲板上は瑞雲が発艦準備を進めている。

この艦は他の巡洋艦と違い、第四砲塔を撤去し後ろ艦橋を格納庫に改造された、航空巡洋艦のようなタイプである。

コレのおかげで、搭載定数が5機に上がった。しかし、なぜか7機も積まれている。

「副長」

「何でしょう?」

「何故、晴嵐やら強風やら二式水戦がのっているんだ…」

「南方の島から、物資の輸送を行っていたからでしょう。」

そうだった。この艦隊はフィリッピンからの物資輸送を行っていた。

人員は他の艦隊に任せ、我々は兵器を積んで帰還中であった。

「積載したもののリストをくれ。」

「確か…こちらです。」

質の良くない紙には、乱雑に書かれていた。

「えー…三八式に九九式…百式機関短銃…重迫まで積載したのか。」

「お陰さまで後部甲板と一部の船室はぎゅうぎゅうですよ。」

「見てないからわからんな…」

そんなことを話している中、飛行長が操舵室内に入ってくる。

「艦長!発艦準備完了しました!!」

「そうか。それでは、発艦を認める。直ちに発艦、その後周辺の偵察任務につけ。」

「了解!」


 艦橋の後方で大きな爆発音がしたかと思うと、瑞雲が飛び立っていった。

この艦が搭載しているカタパルトは、火薬式で大きな音がする。

外はすでに明るく、昨日の雪とは打って変わって快晴になった。

艦橋にいたひとりの見張り兵が、大声でいきなり叫ぶ。

「前方に陸地!」

「なに!もっと良くみえんのか!」

「航海長の言っていたとおりに、湾のような形状になっています!」

また別の見張員が叫んだ。

「副長。どうする。」

「どうするもこうも、艦長の判断ですよ。」

「だよね…」

少し考え込んだ後、僚艦に被害がなく戦闘も十分可能と考えた。

錨を降ろしたままでは、航空機や潜水艦の危険性もある。今まで襲われなかったのも不思議だ。

「よし、艦を動かすぞ!抜錨しろ!」

「了解!」

錨が巻き上げられ、報告が入る。

「錨上がりました!」

「よし!機関両舷微速!」

ゆっくりと艦が動き出す。それに合わせて、僚艦も動き出した。

「次に機関両舷原速!」

徐々に速度が上がってゆく。波の高い海に白波を立て進む。

日本海はもとより波が高い。それゆえに、大型艦でもすごく揺れる。

「偵察機からの連絡!」

通信士が伝える。今日は通信機の調子もいいようだ。

「なにか見つかったのか。」

「我々から見て前方に、港湾があるそうです。中規模の。」

海図台に向かい、確認する。舞鶴近辺の海図が広げられている。

「海図には港なんてないが。」

「船は存在せず。クレーン等もある中規模港湾のようです。」

「こんなところに中規模港湾とは…ずいぶんみょんだな。」

「ええ。全くです。」

日本の港は大抵船がいる。しかしここはクレーンまである港なのに、船もないとは違和感がある。

「何か引っかかるな。陸戦隊でも先んじて派遣できないのか。」

副長も私も元陸戦隊である。

「海図上は日本ですし、問題ないかと。どうします?」

「まあいらんか。」

そう言い、艦長席に戻る。

ここのところは空襲もないし、潜水艦もこない。船員たちはつかの間の休息をとっていた。

雲一つ無い青空が広がっている。旅路は長い。


一方そのころ…博麗神社

射命丸文がそこにいた。

「霊夢さん!」

「何よ朝っぱらから。」

霊夢はたたき起こされたようで、目をこすりながら文のもとにむかう。

「これですよ!昨日あなたが言ってたの!」

その写真には四隻の船が写っていた。

「これは大きい…のかしら?」

「それはもうとても。」

「大きさの対比になるものがないから、よくわからないわね。」

「見ればわかりますよ。見れば。」

空を見上げると、灰色と緑色の物体が飛んでいた。なにか赤い丸も付いている。

「あれは何かしら…」

「わかりませんね…」

幻想郷の人々が動き出そうとしていた。


いつになったら終わるんだろね。

次回は上陸。ようやく幻想郷の人との接点がうまれる。

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