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雨電車

作者: 菜月 桜花

初めて投稿した作品です。


かなり読みにくいかと思われますが、あえてそのままにしてあります。


ご了承下さい。



雨は嫌い。

まとまらない髪が嫌い。

冷たい足の爪先が嫌い。

その横にできる、傘からこぼれる水溜まりが嫌い。


窓の外に流れる、灰色の景色が嫌い。

車内の湿った温度が嫌い。


雨の日の電車が


大嫌い。


扉の近く銀のバーにもたれて立ったまま、目を閉じて遮断しようとした世界に 突然入ってきた声。


「おはよう。早いんだな。」


大好きな 君の声。

真っ直ぐで、君そのものみたいな、優しい声。

同じクラスなのに、直接話せたことは無いけど、よく通る声を本読むふりして

いつも聞いていた。

休み時間の教室で。



なぜ、ここにいるの?


見上げただけで 声にはならない。


「俺、いつもチャリ通なんだ。」


知ってる。

線路沿いを走る青い自転車を、毎朝この窓から見てるから。

私の乗る駅から2つ目の駅を出てすぐ、加速始める電車と並ぶように走る青い自転車。


「うちの親、男は体力だとか言って、定期代くれないんだぜ。だからチャリ通。結構、距離あるのにさ。」


そうなの?好きで乗ってるんだと思ってた。


「でも、すごいはまってて。」


くしゃっと笑う顔が近すぎて、耳が熱くなる。

こんなに近くにいるの、初めてかも。

あれ?

まだ私、一言も声出してなかった。


「今日は雨だから、切符代もらえたの?」


やっと出た言葉。気のきいた事も言えない私。

目を丸くした君を見て、傘の柄をギュッと握った。おかしなこと言ったかな?


「そうだよ。やっともらえたんだ。」


左手で顔の横に切符をヒラヒラさせて、またくしゃっと笑う。

私の好きな君の笑顔に、ほっと息を吐く。


「チャリの時と同じ時間に家出たから、こんなに早いのに乗っちゃって。」


君がいつも自転車で走ってる横を走る電車だもの。

すぐに追い越しちゃうけど。


「いつも、電車なんかに抜かれてたまるかって顔して、自転車走らせてるよね。」


思い出しながら思わず出た言葉に、いつも見てるのバレちゃったかも。

慌てて見上げる私に気づかずに、


「絶対勝てる気がするのに、無理なんだよね。」


真顔で言いながら、首を傾げるから、


「絶対、無理だよ。」

吹き出す。


「やっと笑った。なんで元気無いの?」


少し屈んで顔を覗きこまれて、さらに耳が熱くなる。


「雨、嫌いだから。」


うつむいた足の先、水の輪はバラバラになっていた。

重い制服のスカートを握りしめると、簡単にシワになってしまう。


「俺は、好きだよ。」


呟くように聞こえた声に、驚いて顔を上げる。

こっちを見る君の顔。

大好きな優しい声。


「一緒に学校行けるから。」


私の心の中の雨雲を吹き飛ばしちゃうような君の言葉。


まとまらない髪も、重い制服も、冷たい足の爪先も、その横の水溜まりも、


大嫌いだった雨電車。


となりで君が笑うから、ちょっとだけ好きになったかも。「次の雨の日も、この電車で。」


また、切符をヒラヒラさせて言う彼の耳も、ちょっと赤い。


ねぇ、それは、雨電車の約束なの?


熱い耳のまま見上げる私に、君の少し意地悪な声。


「雨じゃない日は、一緒にチャリね。」


それは、無理!

電車と張り合う人と一緒には走れません。


ブンブン首を振る私を見て、くしゃっと笑う君。


「じゃあ、雨の日限定か。」

降車駅を告げるアナウンスに重なる君の言葉に、

鼓動がどんどん早くなる。


灰色の景色も、湿った温度も、

たくさんの嫌いを流してしまった君の笑顔に



待ち遠しい、次の雨電車。




fin

ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] は~・・・ 甘酸っぱい恋、これぞリアル青春!!
[良い点] 女の子の心情が良く書かれていました。 [気になる点] 句読点が多く、所々で文が中途半端に改行されていて読みにくかったです。 文間を空けるなら、どのくらい行を空けるか統一したほうがいいと思…
2010/06/19 20:00 退会済み
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