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最弱幼女? いいやホントは最強勇者!―幸福の街? 開けたら闇鍋だったが!?―  作者: 雨野せい


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3/13

第3話:真心より下心が先に出る。だいたい顔に出る。

 今まであったことを三行で伝えるぜ。


 魔王を倒して奴隷にした。


 遺物で幼女化した俺と魔王。


 街の前で部下を見つけて足にしてやった。


 ちょっと足の付け根が冷てぇが、まぁ馬は(あった)けぇしな。


 筋肉ダルマとの間には魔王がいてくれっから、快適快適。


 銀色の髪の、やけに落ち着いたツラしたちび魔王――シェリがクッション代わりに挟まってるおかげで、まだ生きていられる。


 ……つうか、魔王の奴……俺より胸があるのが腹立つなぁ。


 今度削ぎ落しておくか。



「ほら、あくびしてるぞ。眠い眠いかな?」



 してねぇよ……!



「妹ちゃんは眠そうだから、お姉ちゃんがしっかり守るんだよ?」


「……姉……ではないが。我がこいつは守る」



 ちげぇ……けど……今はしぇべれねぇ……。


 くぅ……涙腺……ゆる……幼女、仕様……?


「ここを通ったら街だ。疲れているだろうから、今日はお風呂に入ったら休みなさい」



 お、ガストン。気が利くじゃねえか。


 金の短髪に、レンガでも噛み砕きそうなゴツい顎の、胸毛モサモサ筋肉ダルマ――それがガストンだ。


 いやぁ、幼女化してから疲れるんだよなぁ。


 もうなるべく喋りたくねぇ……。


 魔王と喋るだけで大分スタミナを使っちまった。


 ……正直、魔王に抱えられて助かったな。


 胸を削ぐのは延期してやろう。まぁ、揉むけど。



「ガストン様!お帰りで」



 ちょっと若め全身甲冑のゴツイ……兄ちゃんがガストンを見つけてこっちまで馬を走らせてきたな。

 

 顔だけやたら整ってて、前髪サラサラの爽やかイケメンだが、甲冑の中身はちゃんとムキムキっぽいのが腹立つ。


 にしても、なーんか外壁、めっちゃデカくね?


 王から領地もらった時にはもうちっと小さかったような気がすんだけどなぁ……。



「ご苦労。さきほど子供を拾ってな。この子たちはこのまま領主館で保護をする。皆に伝達せよ」


「はっ!」



 なんでまつげ長ぇんだよ、くそが!


 こいつのあだ名、くそまつげに決めた。今決めた。決定。


 まぁ、ガストンのやろうはちゃんと部下の教育をしているようだな。


 これで幼女化してなけりゃぁ俺の命令一つで言うことを聞かせられるってのになぁ。



「ガストン様、私から子供たちへ言葉を送ってもよろしいでしょうか」


「許そう」


「感謝します」



 発言の許可って……え?軍隊でもあんの?この街。


 俺の知識だとそういうのって軍人とかのイメージなんだけど。



「お嬢ちゃんたち、ここはガストン様の作られた”世界で一番安全な街”だ。安心して過ごすといいよ」


 

 うわっ!やだ!なにこの爽やかなイケメン!俺の嫌いなタイプ!


 歯がキラッて輝いたけど!?少女漫画にいてもおかしくないイケメンとかオエーッ!


 ん?というか……世界一安全……?


 俺が筋肉ダルマに命令したのって、”俺が楽しめる最高の街”だったはずなんだが?






 門をくぐる――街は明るく、清潔で、子供が蟻んこみたいにあつまって遊んでるのが見える。


 のんびりしてんなぁ。


 ……なんだ?この平和さ。


 本当に……俺が……作ったのか……?


 んっ……だ、ぇ……きょぉ……しゃべりすぎぇ……つかぇ……ぁ……。


 ……ん。まおう……よ、りかかって……き……た?あったけ……。



「お嬢ちゃん?大丈夫かな?……そういえば名前を聞いていなかったな。名前はいえるかな?」



 うるせぇ……くすぉ……うまく……あたぁが……まわら……。



「ふむ。あぁ、おじさんの名前がまだだったね。私はガストン。この街で領主である君たちのパパの代わりにお仕事をしているんだ」



 いかんいかん!しっかりしろ俺!


 ガストン、そういうのいいから。


 とりあえずおえが……ゆうしゃって……つたえ……。



「んっ……ふぇぃ……あん」


「ん?ハハハハ。もう眠いみたいだな。ふぇい?」


「違う、フェリっていった」


「あぁ、フェリちゃんか」



 ……あえ?まおう…………へん……な……ていせ……。


 ゆ、う……しゃ……いげ……んっ……ど……こ……。



「我は……うむ。シェリ。このちっちゃいのがフェリ」


「そうかそうか。お姉ちゃんがシェリちゃんで妹ちゃんがフェリちゃんだね、よろしく」


「……先ほどから姉などと……我は魔王……だが……うむ……姉……でもよい……のか?」



 ……まおう……にや……って……して……ん……の……やめ……ろ……眠……。


 もぅ……むぅり……。



「はは。シェリちゃんはお姉ちゃんだなぁ」

 






 ――よく寝た。


 気がついたら、ふかふかのベッドの上だった。


 いやぁ、疲れた疲れた。


 ベッドってのはやっぱいいなぁ。


 娼館のベッドよりも気持ちいふかふかのベッドだ。


 物足りねぇとは思うが……女がいりゃぁなぁ……。


 ……。


 あぁ、夢じゃねぇのか……。


 息子(アンディ)……、お前は元気にしているか?


 いま、となりに幼女が寝ていてな。


 銀髪のサラサラ髪で、成長すれば俺のドストライク間違いなしなんだが、お前がいないと俺は何にもできねぇみてぇだ。


 透けるみてぇに白い肌に、眠たそうな薄紫の瞳した、どう見ても守られる側のちび魔王だ。


 失ってから気がつくって、こういうことを言うんだな。


 待ってろ、かならずお前を探し出して、一緒に気持ちよくなろうぜ。



「んぁぁ」



 声もそのままだよな……ちっちゃくてかぼせぇ……。



「ん……フェリ……おきた?」


「フェリ……起きた?じゃねぇ!なん、フェリっ!おれは……」



 やべぇ……息切れた……。



「フェリ。シェリ」



 指さして説明すんな!


 たしか、えーっと。


 そう!お前がガストンが勘違いしたのを直さなかったんだろうが!


 しゃべるのは疲れるから……うん。


 ふむ……硬いが……まぁ……そこそこだな。



「フェリ。そんなことずっとやってた?」



 ジト目で見てくんじゃねぇ。


 ん?ていうかこいつもなんか話し方がゆっくりになったな。



「まおう、つかれる?」


「うむ。体力使う」



 やべぇ。語彙、絞って、会話すんの疲れんだけど。


 でもなぁ……普通に話そうとすっと夜までもたなそうなんだよなぁ……。


 あ、手、叩かれた。



「いたい」




 窓から入ってくる光で眠気もくるしな……。


 一旦、魔王――シェリでいい……かもう。


 こいつを無視して……みるが……。


 なんだここ。


 よく見りゃお姫さんがつかってそうなカーテンつきのデケェベッドに、ぬいぐるみが……何十体あんだこりゃ……木の滑り台みたいなのもあるし……。


 無駄にカラフルなんだが……この世界の色付きのものってかなり値段がしたんじゃねぇか?


 なんか中世の教育番組みたいなセットのされ方で怖えし……。



「昨日、ガストンが用意した」


「ひえぇ……」



 あいつの行動力変なところに発揮されてない?


 てか、俺の声……なんか嫌だ……。



「起きたらごはん。ガストンが待ってる」


「……はぁペコ」



 きゅるるるっと勇者らしからぬ変な音がなりやがった。


 力むと疲れるから力抜いてみてっけど……え?こんな変な喋り方か?


 ちゃんと身長わかんねぇけど、俺たちって今何歳くらいなんだよ……。


 のそのそ降りてくシェリ……あ、パンツみえた。


 足はつくのか。


 おれ、足つかねぇんだけど。


 あ、抱っこ。抱っこね。


 あ?そのまま行くの?お前ぜってぇ俺より肉体年齢上だよな?


 ……でもなんか床は冷たそうだし……ドアノブは俺で届くか怪しいな……。



「ありがと」


「ん」



 無表情なのが気に食わねぇが……パンツ覗いてごめんな。また見るし、揉むけど。


 にしても……廊下に出てみたが、またバカみてぇに広いな。


 壁にかかった絵の数……いくらつかった?美術館かここ?


 ガストンのやろう……ただの筋肉ダルマと思ってたが、貴族的なセンスってやつなのか……俺が命令してた頃より金の使い方間違ってんじゃねぇのか?


 シェリはスタスタ歩いてるやがる。


 俺はお姫様抱っこ……というより赤ちゃん抱っこだよなぁ……。


 屈辱。


 だが助かる。


 悔しい……。



「フェリ。おちる」


「……おちなぃ」



 こんな赤ちゃんみてぇな抱き方されてたら落ちねぇよ。


 安定しすぎて自分の胸の無さに絶望する余裕だってあるわ。


 いや、ちょっとあるか?


 やめよう。希望を抱くのは……なんかこのままこの体を受け入れそうで怖ぇ……。


 ふかふかではなさそうだが、一面が赤絨毯ってのもなんかなぁ。


 奥の方からなんかまぶしい奴、歩いてきてんな。


 ……あ、筋肉ダルマのガストン。


 あいつ、朝から俺の顔見てニコニコすんじゃねぇよ。気色わりぃ。



「フェリちゃん!?シェリちゃん!?あぁ、仲がいいねぇ。お姉ちゃんが抱っこしてあげてるんだねぇ。お腹空いちゃったかな?ごはん食べる?」



 なんで朝っぱらから至近距離でこいつを拝まなきゃいけねぇんだよ!


 くっ……俺の腹の虫がかわいらしく泣きやがった……俺も泣きてぇ。



「フェリ。ペコ」


「そっか~ペコペコかぁ」


「はぁぺこ」



 ぐっ……おっさんに語彙絞って「はぁぺこ」とか言ってる自分を殴りてぇ!


 だが、背に腹は代えられねぇ……耐えろ俺……!


 呪いを解くまでは耐えるんだ……。



「フェリちゃん大丈夫かい?お腹ペコペコで苦しいのかな?それとも……はっ!まさか病気!?」



 病気じゃねぇし……現状に涙してるだけだし……。



「今すぐ医者を!」


「だいじょうぶ。フェリ、お腹空いただけ」


「そっか~!いまおいちいごはんよういさせまちゅからねぇ」



 ぞわぞわぞわっ――あああああああ気持ちわりぃ!!!!!!



「ごめんごめんごめん!泣かないでねぇ。おじちゃん怖くないよぉ」



 怖いんじゃなくて、キモイんだよ!



「おい!誰か!今すぐ子供用の朝食を!三分だ!私室のテーブルに持って来なさい!」



 ガストンがデケェ声を出したと思ったら、どっかから何人もの女の返事が返ってきた。


 いったい何人の使用人がいるんだ。


 シェリに抱えられたまま、ガストンの私室に転がり込んだ。


 だが、なんつうか……。俺とシェリ用っぽい低めのテーブルとイスがあるんだよなぁ。


 しかも、ガストンにとっちゃ膝の高さくらいしかねぇテーブルに、対面で座ってやがる。


 となりがシェリなのは助かった。


 ニッコニコで眺めてくるガストンを無視して、部屋ん中を見てみるか。


 まぁまぁまぁ、えらく金がかかってそうな部屋だなぁ。


 豪華な調度品?ってやつに彩られてやがって、なぜかわからんが……金髪の女の子の絵が飾ってありやがるが……。


 シェリがこっちと見比べてやがるが……いや、目の色とかちげえぞ?


 どっちかつうとガストンのマスタードみたいな目の色そっくりだろ。


 あーまぁ、あんまり見たくはねぇが、角ばってゴツい顔立ちに、ふっとい眉。


 金の短髪に……シャツで隠しててもはみ出て見える……胸毛……ぜってぇ剛毛だろ。


 勇者だった俺よりでっけぇ身長に丸太みてぇに太い腕……からは全然似てると思えねぇ美少女だよな、あの絵。



「それで……ごはんまでに聞いておきたい……んだけどいいかなぁ?」



 なんでちょっと偉そうにしゃべり始めたのに、流れるように猫なで声になった?



「いい。フェリ、しゃべるの苦手。我、答える」


「うんうん。じゃあお姉ちゃんのシェリちゃんに聞こうか。パパ、どこに行ったか憶えてるかな?」



 ん?話の流れがわかんねぇな。


 まぁシェリに任せるか。



「昨日、言った。フェリも、シェリも、わからない」


「うんうん。でも、パパに連れてきてもらったんだよね?」


「そう。森で、別れた」



 あ、そういう流れ?


 なんかガストン涙流し始めたけど。


 拳、強く握ってるけど。



「勇者め……コロ……」



 え?



「そっかそっかぁ。じゃあ、お腹いっぱいにして、今はゆっくり休もうねぇ」



 あ、こいつがガチギレしてる時の笑顔だ。


 たしか……こいつに「勇者にふさわしくない」とか言われたから、見た目をいじったんだっけか?


いやーあんときのあいつはさすがにビビったわ。


 笑顔でキレだすやつって怖えんだよなぁ。


 つうか、あれ?この流れで言うと、俺がこいつらを捨てた感じになってねぇか?


 いやいやいや、さすがに俺も子供を捨てたりしねぇよ?


 捨てられた子供を拾ってきたことはなんどもあっけど、ないないない。



「落ちるところまで落ちたか……」



 めっちゃプルプル震えてんだけど……いきなり長剣抜いてきた時そっくりで怖えんだけど。



「フェリ……。クズ?」



 小声で話しかけてくんな。そんなことしたことねぇよ。


 てか、お前が雑な対応したせいでこんなことなってんだよ!お前のせいだ!


 ……あとで揉みしだいてやる。


 あ、伝わった?ちょっとその胸隠す感じけっこうかわいいと思うぞ。


 よーし!お兄さんがんばっちゃうぞー!夜を楽しみにしておけ、シェリ。


 アンディはいねぇけど、お前は俺の奴隷だし、触るくらいいいだろ?


 ……そんなこと考えてるうちに、なんかパンやらスープやら、サラダやら……。


 いや、子どもの体でこんな量食えるわけねぇだろ……。


 給仕の姉ちゃんたちもこのおっさんになんか言ってやれよ……俺でも無駄だって思うぞ。



「さぁ、悲しい話は終わりにして、た~んとお食べ」


「うむ」


「……ます」



 ふわふわのパンだが……けっこう値段するよなぁ。


 面倒だから「ます」で済ませちまったが、なんでそんなニコニコで見てくんだよ。


 めっちゃ窮屈そうに食事されると目の毒だからどっか行ってほしいんだよ。


 でもまぁ、肉とかだと顎が疲れちまいそうだから、そこらへんはここの使用人がうまいことやってくれてんだろうな。


 あぁ、マジでこいつら欲しい……いや、元に戻ったらもらえっけど……。


 とりあえず、目が覚めてハッキリしてきたが、今のまますぐ解けっと、俺がガストンのやろうを見て漏らしたことがバレちまう……秘密裏にやらねぇとな……。


 そういや、外はどうなってんだ?


 飯食って、一回街の様子見てぇんだけど……。



「ごちさま!」


 日本人の心として、ちゃんと言ったからな。


 食事終了!


 家じゃへんな目ぇされたが、日本人の習慣は抜けねぇからな。


 テーブルから降りようとしたら、ガストンがふわっと俺の前に立ちふさがりやがった。



「フェリちゃん?どこにいくつもりだい!?」



 ……は?


 飯は終わったぞ?ちょっと歩こうとしただけなんだが?



「おそと」


「フェリちゃ~ん!ダメだよぉ。危ないからねぇ。お外には石ころもあるしぃ、階段もあるしぃ、転んだら痛いいた~いだよ?」



 いや、俺の精神年齢はとっくに成人すぎてるんだが?


 なんなら今までの年齢足したらお前より年上だぞ?


 おお、シェリも食べ終わったか。なんか言ってやれ!



「シェリちゃんは外で遊んできてもいいよぉ。お姉ちゃんだからねぇ」



 てめぇの基準どこだよ!俺より頭一個分デケェだけだぞ?!


 胸か!?胸なのか!?胸が基準か!?


 絶壁にだって人権ありますけど?!


 俺は絶壁だって感度よければ丁寧に愛しますけど!?



「……うむ」



 はぁ!?


 うむじゃねぇよ!見捨てんなよ!


 なんで魔王だけ許可!?


 明らかにどっちが外に出ちゃいけないかって魔王に決まってんじゃねぇか!



「まおー!」


「フェリちゃんはおねぇちゃんと勇者ごっこしたいのかな?でもでもぉ、天使みたいなおねぇちゃんを魔王呼ばわりしちゃダメでちゅよ~」



 違うんだって!こいつが魔王なんだっての!


 そんで、俺が勇者!俺を外に出せ!


 いや、勇者ってバレたら終わる!


 ああああああ!なんだもう!



「フェリちゃ~ん……ブブ~♡」



 ぞわっ。


 背骨に氷柱ブッ刺されたみてぇな感覚……。


 なんだこのぬるっとした声……。


 おい、神。


 転生者特典、全部なくなっていいから今すぐ戻せ。


 この筋肉ダルマをぶち殺す。


 シェリ!止めるんじゃねぇ!


 俺はこいつをぶん殴って俺も死ぬ!社会的に!



「ガストン様ぁぁぁぁ!!!!」


 あ?


 廊下の方から、女の声が風みたいな勢いで突っ込んできやがった。


 バタン、と現れた女は、黒髪を後ろにまとめたメガネの女だった。


 きっちりしたメガネに、仕事できそうな黒髪ポニテ、細い腰とガッツリした胸つきの、いかにも秘書然とした美人だ。



「よくありません!教育上よくありません!!!」



 すんげぇ顔。疲れてんねぇ。俺も疲れた。



「ミレイアか……なにがだ」



 襟元正したところで、俺の中ではクソキモ筋肉ダルマだから安心しろガストン。



「なにがだ?じゃありません!まず、客室を勝手に幼児部屋にするのをやめてください!!おもちゃが廊下まで溢れて業務に支障が出ています!今すぐ搬入の中止を!!」



 おぉ……言ってくれる……!


 てか、まだ増えてんのかあの部屋の中身!?


 だが、これはチャンスだ。


 ミレイアの足に、俺はひょい、と隠れてやるぜ。



「そうだぁ!」



 おほっ。


 見上げてみりゃ、けっこうスタイルいいじゃねぇか。


 生地はいいのつかってんな。チュニックだが……ほほう。


 そこそこにカスタムして色気出してやがるぜ。


 胸もデケェ。


 ……へへっ。



「……っ!この顔!!!」



 やべっ!!!!


「ガストン様!本当にこの子、女の子なんですか!?」


「当たり前だろう!?天使だぞ?!陽光みたいな清らかな瞳!!」


「髪も目も勇者そっくりです!!今のニヤッまで勇者と同じでした!!!」


「……この純粋な笑みのどこがだ」


「下心が感じられるって言ってるんです!!」



 終わった。


 俺の人生、ここで終わった。


 アンディ不在でも、俺の心は反応しちまうんだからしょうがねぇじゃねぇか。


 かわいそうなものを見る目で、こっちを見んなよシェリ。




 そのあともガストンはぐだぐだと「危ない危ない」を連呼し、


 結局その日の外出はおじゃんになった。


 ……勇者だった俺が、屋敷の中で“おままごとセット”に囲まれて一日を終えるとか、どんな地獄だ。


 ああ、認めるよ。


 ここからが、本当の“逃亡劇”の始まりだ。





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