王の最後
「キングは全然あんな卑劣な奴と同類などではありません。
キングは誰よりも優しい心の持ち主です。
だからポーンも体を張ってキングの手助けをしたんですよ」
チェスの背後で声をかけたのはボロボロの鎧の姿をするナイトであった。
「そうか、お主達気づいておったか」
チェスが振り返ると後ろにはクイーン、ナイト、ビショップ、ルークの四人が横一列で膝をついて頭を下げていた。
「私達は繋がっていますからね」
ナイトの隣で膝をついたままビショップが話す。
「なのでキングの命がもう長くは無いこともわかっています」
ルークの声は少し震えており、必死に何かを堪えている様子がはたからでも分かる。
「キングが命をかけて戦っていたのに私達は駆けつけられなかった事をお許しください」
最後に話すのは手足を氷で生成しているクイーンであった。
「ふっ、お主はまだ解凍できておらんのに駆けつけてきおったな?
そのせいで手足が壊れてしまったようじゃの」
チェスが四人に立つよう伝えると膝立ちの状態から全員立ち上がる。
「ワシのほうこそお主達に謝らないといけない。
今まで散々お主達にわがままを言ってきたのに、最後までワシのわがままに付き合わせてしまうのじゃから」
チェスは悲しそうな表情で頭を下げて謝る。
「謝らないで下さい。
私達はあなたがこの国を思って、ここで暮らす人たちの事を常に考えて行動していた事を知っています。
そんなあなたと共に歩いてこれた事にとても感謝しているのです」
ビショップが優しい口調でチェスに語りかけると、隣でクイーンがチェスに氷で作られた手を向けるとボロボロになっていたチェスの服が氷でコーティングされてゆき煌びやかな見た目になってゆく。
「どうやら皆さんが来るようです。
キングには最後までいつものように威厳のある姿を見せてもらわなければ」
クイーンが話すと確かに四方から超能隊の面々がチェスの元に駆け寄って来ていた。
「チェスさん!
その力は、、」
いち早く駆けつけたのはゴクウと一緒に白い煙に乗ってやって来たブレイクであった。
「ゴクウにブレイク、お主達はこの力の代償を知っておるな?
かつて、ボルトがこの力を使い命を失ったようにワシもその運命を辿る」
チェスは朗らかな笑みを浮かべながら自身の輝く胸に手を当てる。
「そんな、チェスさん、、
あんたがいなくなったらあの学校に通ってる子供達が悲しむぜ、、」
ゴクウは顔を手で覆いながら空を見上げて涙を堪える。
「フォッフォッ、そうじゃなぁ。
だが子供達には気を使う必要は無いぞ。
ありのまま起きた事を話すのじゃ。
あの子達は強いからの」
チェスの胸の輝きは先ほどまでは直視出来ないほどまで光っていたが、今は淡い光を灯すほどの弱さになっている。
「ちょっと待てよ!
何でチェスさんが死ななきゃなんねーんだよ!」
「落ち着けビース、、」
「最後の時間なんだ、暖かく見送ってあげよう」
空から声が聞こえて見上げると、ビース、フレイ、アクアの三人が降りて来ていた。
すると、オーラとチューズの二人も肩を組みながらチェスの元へと近寄って来ていた。
「さっきビショップさんからチェスさんの命が尽きてしまうと聞いたのですが、本当ですか、、?」
オーラは悲しそうな表情を見せながら質問をするが、既にこの場の雰囲気を感じとり答えを分かっているようだ。
「そうじゃ。
ワシはもうすぐ死んでしまう。
チューズよ、あの馬鹿弟子に調子に乗るのは程々にしておけと伝えといてくれるかの?」
チェスはオーラの問いかけに答えた後に頭を撫でるとチューズを向いて話しかける。
「マンは貴方の事をすごく尊敬していましたよ。
あの性格なので、分かりづらいとは思いますがいつも貴方に感謝していました」
チューズは悲しげな表情を隠しながら笑顔でチェスに伝える。
「ホッホ、お主が言うんじゃからそうなんであろう。
クイーンやナイトでは無くワシ自身に稽古を頼んで来るのは妻を除いてあやつくらいであった。
生意気じゃが可愛い一番弟子じゃ、あやつの事を頼んだぞ」
チェスはそう言うとチューズの肩に手を置く。
一瞬チェスの手が金色に光るがすぐに消え去る。
「この僕の活躍を天国という特等席で眺めていてよ。
絶対に貴方を超える良い男になって見せるからさ!」
全員がチューズの方を向いて驚きの表情を見せる。
さっきまでチューズの姿だったのに、金髪のロングヘアに一瞬で変わっておりその姿はマンに変わっていたからだ。
今まで別の人格に一日の途中で切り替わる事は一度も無く、この変化に全員が戸惑っているのだ。
「だってよ」
しかし、すぐに元の逆立っている赤髪のチューズの姿に戻り、チューズは肩をすくませながら一言呟く。
「ホッホ、最後まで生意気な奴め。
まぁそれがあやつの良いところじゃな」
チェスは上機嫌に笑いながらこの場にいる全員の顔を次々に見ていく。
「お主達!
後は頼んじゃぞ!!」
チェスは周囲がピリつく程の声量で叫ぶと、この場にいる超能隊の全員が真剣な表情で頷きを返す。
「そろそろ時間じゃ。
クイーン、ナイト、ビショップ、ルーク、そしてポーン、、
お主達のおかげでワシはとても幸せな人生を歩む事ができた。
心から感謝するぞ!」
チェスはクイーン達の元に歩み寄ると四人を抱き寄せる。
とうとう、チェスの胸の輝きが消えてしまいチェスとクイーン達の体が塵のように無くなってゆく。
「随分待たせたの、リル」
チェスが消えゆく最後に目の前で死んだ妻であるリルが半透明な状態で目に映る。
「まだまだ来なくて良かったのよ?」
リルは少し悲しそうな表情で話す。
「ホッホ、そろそろお主が寂しがる頃じゃと思ってな」
「もういいの?」
「うむ、もう全部託してきたからのぉ」
チェスが振り返ると超能隊の全員が涙を流していた。
「そう、じゃぁ後はあの子達の頑張りを高みの見物で眺めてましょうか」
「あぁ、そうだな。
お主達も共に行くぞ」
チェスは若かりし頃の容姿に戻ると二人は空へと登ってゆく。
その二人を追うようにクイーン達五人は一緒に空へと駆け上がって行った。
新作執筆中のため、一旦こちらの更新をストップさせてもらいます。




