キクレン
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超国の首都ベゴニアより西側に離れた位置に一つの集落がある。
その集落には子供が多く、ほとんどが10歳に満たない年齢のようだ。
その集落の中心で子供達に囲まれる中で一人の痩せ細った老人が杖にもたれかかりながら話している。
「我々の持つ超能力とは自身の意志が力となる。 意志が強ければ強いほどその能力はより強力となるのだ。 しかし、我々の超能力は自身の命を燃やすことでより強大な力を得ることができる。 死んでも守りたいもの、成し遂げるという覚悟。 これがあれば強大な力を手に入れることができる」
「そんなことどうでもいいから、家に帰らせてよ!」
老人が話していると、一人の子供が立ち上がりながら大きな声で話を遮る。
「黙れ!!」
立ち上がった子供に老人が手をかざすと突風によって少年は数メートル吹き飛ばされてしまう。
「ゴード! そいつをしっかり教育してやるのだ!!」
老人が声を上げると近くにいたスーツ姿の男が飛ばされた少年の元へと向かう。
「承知しました、ウェザー様」
ゴードと呼ばれた男は少年の服を掴むと乱暴に持ち上げる。
「や、やめてくれ! 連れて行かないでくれよ!!」
少年は必死に抵抗するが、ゴードは気にする様子は無く近くの小屋へと入って行った。
他の子供達は少年のことに関心がないようで小屋へ連れて行かれる姿を見ようともしない。
その瞳は光がなく、無表情で考えることを放棄しているようだ。
「話を戻そう。 お前達がもし強大な敵と戦い負けるような時が来た際、命を燃やすのだ。 そうすれば強大な敵にも打ち勝てる強さを得るだろう」
ウェザーの話に対しても子供達は何の反応も示さず、ただただ顔を向けているだけであったが、ウェザーが話終えると子供達は黙って小屋へと帰って行った。
「ウェザー様! 偵察から戻ってきたぜ!」
上空から声が聞こえ上を向くと、爬虫類の翼のようなものを羽ばたかせながら降りてくる男がいた。
「ダイナか。 帰ってきたということは何か進展があったのか?」
「あぁ。 先日ベゴニアが盗賊達に攻め込まれたんだ。 まぁ超能隊のやつらは一人もやられてはいなかったが、それなりに疲弊はしてたと思うぜ」
ウェザーがダイナと呼ぶ男は、逆だった髪が無造作に腰まで伸びており、その尖った歯は余裕で木を噛みちぎる事ができそうな程鋭利である。
「そうか、、今が攻めどきということだな」
ウェザーは目を閉じて考えを巡らせながら口を開く。
そんな様子を遠目で眺めている人物がいた。
「これは思った以上にやべぇ状況だぜぃ。 急いで報告しなくちゃな」
能力で強化されている聴覚によって離れた位置にいる人物の会話を盗み聞きしていたのは、超能隊のムサシだ。
ムサシがその場を離れようとすると、ムサシの元へ近づく足音に気づく。
急いで腰に刺してある2本の刀を両手で抜刀しながら、近づいてくる人物に切り掛かる。
キーーン
「盗み聞きなんて趣味が悪いな。 さっさとくたばりやがれ」
ムサシの刀は口の悪いメイド服を着た少女の持つ薙刀によって受け止められる。
「へっ、こんな真っ昼間から薙刀を振り下ろしてくるのも中々趣味が悪いぜぃ」
ムサシは右手の刀で薙刀を受け流すと、左手の刀で少女を切りつける。
しかし、少女も両手で握っていた薙刀から片手を離すと腕に着けている籠手で刀を防ぎ、強力な力でムサシを吹き飛ばす。
(敵陣での戦闘は避けたほうがいい。 このまま逃げに徹するぜぃ)
吹き飛ばされながら思考をするムサシだが、吹き飛ばされた先にも人の気配がいることに気づくと地面に刀を刺して勢いを殺す。
「おねーちゃんこの人だぁれー?」
ゴスロリの服を身に纏った少女が周囲に緑色の粘液を出しながら、メイド服の少女に問いかける。
「およそ道に迷っただけのただの一般人でしょう」
「そんな訳ないだろう。 あの身のこなしと2本の刀を見るに超能隊のムサシであろう」
ムサシの左右からもそれぞれ人が現れる。
髪を七三にキッチリ分けて眼鏡をかけた知的に見える青年と、ハット帽を被り、一振りの剣をムサシに向けている女性の二人が出てきた事でムサシは完全に囲まれる形になってしまった。
(これは中々にやべぇ状況だぜぃ。 連れてきた保険を使う時だな)
「バル!!」
ムサシが大声を出すと巨大な泡が五人の頭上に出現する。
ムサシを囲む四人は警戒の態勢を取るが、ムサシだけは宙を浮かぶ泡に向かって跳躍する。
空中で態勢を変えると泡に向けて足を伸ばすと、泡はゴムボールのように弾力をもち、ムサシの体ごと沈んでいく。
次の瞬間泡が元の形に勢いよく戻ると、ムサシは勢いよく空を飛んでいく。
「あ〜ぁ、逃げられちゃった。 追う?」
「いやあの速度だ、追いつけないだろう」
「チッ、あのクソ野郎次あったら絶対殺す!」
「ムサシとは泡の能力を使うのだな。 覚えておこう」
4人はそれぞれ思い思いの言葉を発するが、的外れな事を言っている眼鏡の男に3人は軽蔑の瞳を向ける。
「おいおい、僕がいくら魅力的でもそんな熱い視線を向けられたら照れてしまうよ」
「しね」
「...」
「うざー」
そんなやり取りをしていると遠くにいたブレイクとダイナがこちらにやってきていた。
「戦闘が起きていたようだが、どうしたのだ? また喧嘩か?」
ウェザーが問いかけるとハット帽を被った女性が状況を説明する。
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「そうか。 我々の存在に気づかれてしまった以上、もたもたとしてはいられない。 ペース、タイム、スピンを呼ぶのだ。 復讐の時だ」
そう話すウェザーの瞳は深い闇を宿しているかのようで、見るものも闇に陥ってしまいそうであった。




