ユリアザミ
-- 王国
「まさか既にユリアザミの本拠地まで見つけているとは思いませんでしたよ」
コピとロークは崖の上から廃れた教会を見下ろしながら話している。
教会の入り口には数十人程の見張りがおり、堂々と侵入することは困難そうだ。
「ちょうど今日ユリアザミの幹部が全員集結する会議が開催される予定なんだ。 だからさっき君が潰した人攫いに化けて潜入しようと思っていたんだけど、君のせいで台無しになったんだよね」
ロークは揶揄うように自身の実行できなくなった計画を説明する。
「それは悪い事をしましたね。 もうその会議は始まっているのですか?」
「あぁ、ちょうど今始まる時間だね。 早速作戦を開始と行きますか」
無表情な顔で問いかけてくるコピに対して、ロークは終始笑顔で話している。
「私が拠点に潜入して中の人達と交戦。 拠点から逃げてくる人達をあなたが全員相手をするという事でいいんですね?」
「あぁ、そうだよ。 あっ!たださっきみたいな殺しはNGで頼むよ」
不意に思い出したかのようにロークはコピに釘を刺すと、やれやれとコピは首を振るが反論はしないようだ。
「どうやらあなたは私を買い被っているようだ。 いくらなんでもピンチになったらなりふり構いませんからね」
パチン
コピは呆れた表情を見せながらも、指を鳴らすと手のひらに白い丸薬が現れる。
それを躊躇なく飲み込むとコピの体は透明になり消えてしまった。
「透明化ね。 潜入にピッタリな力じゃないか」
ロークはコピが能力を使うと笑みを浮かべながら上空に浮上していく。
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教会内部の会議室
「最近、勇者が俺らの事を嗅ぎ回っているらしい。 下っ端のやつが何人かやられているのを小耳に挟んでる」
会議室には10人の男達が座っており、男達の座っている椅子の側にもそれぞれ護衛をしている者達が立っている。
今発言したのは座っている男達の中でも一番歳をとっている老人のものだ。
「少し急激に勢力を広げ過ぎましたかね。 今じゃユリアザミは王国で一番の規模を誇る裏組織となりましたから」
続いて発言したのは眼鏡をかけた賢そうな見た目の男性だ。
「こんな幹部が一同に集まるこの場なんて格好の餌食なんじゃねーのか?」
イライラとした声で高圧的に話すのは大柄な男性であり、傍らには大斧が置かれている事から武闘派の人間であることが分かる。
「そのためにそこの用心棒を雇っているのだ。 王国屈指の強さと言われる程の奴だ。 我らが逃げる時間稼ぎ位はできよう」
全身を高そうなアクセサリーで包んでいる男が発言すると、その場にいる全員の視線が入り口のドアの前に立っている男に向けられる。
その男は黒い髪を後ろで結んでおり、すの瞳は見るものに恐怖を覚えさせる程の鋭い瞳だ。 そして腰には一振りの刀が携えられておりいつでも抜刀できるように手は刀の柄に常に触れている。
「そんなことよりも、さっさと会議を始めようぜ。 時間を無駄にしてたらそれこそ勇者に襲われるリスクが増えるだけだぜ」
気だるそうな声で話すのは左目に眼帯をかけている坊主頭の男だ。
男の言葉で会議が始まろうとしたその時、扉の前に立っていた用心棒が腰の刀を抜くと凄まじい速さで入り口の扉を切り付ける。
するとその刀の切先には数滴の赤い血が付着していた。
「なっ、何をしているんだ! リュウキン!!」
座っていた幹部の男達は全員立ち上がり、驚いた表情でリュウキンと呼ばれた用心棒を見る。
「出てこい曲者よ! 姿が見えずとも拙者にはお主の気配がわかっておるぞ!」
リュウキンが大声で叫びながら、何も無い空間に切先を向ける。
「中々厄介な人が居たものですね。 これは勇者さんの仕事が増えてしまいそうですね」
パチン
指の音が鳴ると、切先の方向からコピが姿を表す。
「しっ、侵入者だ!! 全員裏口から逃げろ!!」
幹部の全員がコピがいる入り口とは反対の裏口から逃げ出そうとする。
"止まれ"
突如その場にいる全員の頭の中で声が響くと全員が足を止めてしまう。
しかし、リュウキンだけはコピに向かって切りかかっていた。
「とりあえず、あなたの相手は後回しです」
パチン
リュウキンがコピの体を切り裂く寸前にコピの体は消え去り空振りに終わってしまう。
すると突然、リュウキンの背後から悲鳴が聞こえる。
いつの間にかコピが裏口の前に立っており、幹部の一人の頭を手に持つナイフで突き刺していた。
パチン
コピが再び指を鳴らすとコピの周囲に分身が現れ、幹部や側近を襲いかかる。
多くのコピの中の一人が幹部の胸元にナイフを突き立てようとする。
しかし一瞬で幹部は消え去り、代わりにリュウキンが出現する。
「お主が本体であろう!」
リュウキンは凄まじい刀捌きでコピの体に傷をつけて行く。
「厄介ですね」
パチン
幹部達と戦闘を行っていたコピの分身達が消えると、コピの体から青い光が発される。
リュウキンは構わず刀を振り抜くがその動きを読んでいたコピが拳で刀を弾くと、刀自体にも青い光が纏われる。
「斥力」
リュウキンは刀がコピの体から強い反発を受けて、リュウキンの体ごと吹き飛んでいく。
「舐めてんじゃねぇぇぞ!!」
大柄な男が背後から大斧をコピに対して振り下ろしてくる。
しかしコピは横に回避し指を鳴らす。
「熱血拳」
コピの拳が赤く染め上がり大柄な男を殴りつけると、男は壁を壊しながら勢いよく外まで吹き飛ばされる。
「アクア・カッター」
間髪入れずに眼帯の男が魔法を使い、コピに向かって三日月状の水が飛ばされる。
だが、コピは右手で向かってくる魔法を消し去ると水の玉を放って眼帯男を吹き飛ばす。
リュウキンがコピから離れたことで次々と魔法が飛んでくるが、コピは周囲に結界を張り防いでいる。
そうこうしている間に過半数の人間がこの部屋から逃げ出しているがコピは気にしていないようだ。
「はぁ、、私が無理する意味もないですからね。 あの人にも働いていただかないと」
コピは結界を解除するとすぐさま自分を中心に煙を発生させて、部屋中に煙を充満させる。
「さっきから奇妙な魔法を色々と使っているが、お主は一体何者だ!?」
コピの背後から突如リュウキンの声が聞こえると、腰からナイフを取り出して振り向きざまに防御の体勢を取る。
背後でリュウキンは剣を振りかぶっていたが、コピが振り向くとリュウキンは一瞬で別の人物に姿を変える。
想定外の出来事にゴピは一瞬固まってしまうと背中に鋭い痛みが生じる。
気づくと背後にリュウキンが立っており、コピの背中を深く切りつけていた。
「くっ、厄介な力を持っているようですね、、」
パチン
「暴風域」
部屋中を突風が吹き荒れるとコピ以外の部屋中の人物がコピから離れるように吹き飛ぶ。
「回復」
その隙にコピは背中の傷を緑色の光で覆うと、傷が綺麗に癒えていく。
「そろそろストックが切れてきそうですね。 外の方はちゃんと上手くやってて欲しいのですが」
部屋に残りコピに魔法を放っていた人達は風に吹き飛ばされた影響でほとんど気絶しているが、リュウキンだけは立ち上がりコピに刀を向ける。
すると、裏口の扉から一人の男が部屋に入ってくる。
「待たせたね」
現れたのはローク。 体に黄色の光を纏っているその姿はコピと別れた状態から何も変わっておらず、とても外で戦闘を行ってきたとはお前ない。
「お主は勇者か! ということは外に逃げた幹部達もやられてしまったという事。この場も拙者しか立っている者はいない状況。
仕事は失敗してしまったか、、」
リュウキンはロークを見ると一瞬で勇者だと認識し、外の状況がどうなったのかを理解したようだ。
「彼ほどの実力者がいるのでしたら前もって言って欲しかったですね」
「用心棒リュウキン。 まさかこの場に来ているとは思わなかったよ」
コピと勇者はお互いに不適な笑みを浮かべながら話している。
「流石に面妖な魔法を使う者と勇者を相手にはできないな。 この場は引かせてもらうぞ!」
リュウキンが刀を振るとリュウキンの姿が消え、気絶した人物の姿に一瞬で変わる。
「あの人は追わなくていいのですか?」
コピがロークに問いかけると、ロークは顔を横に振る。
「彼はユリアザミに所属しているわけじゃないからいいんだ。 それに彼を捕まえるとなると結構骨が折れるからね」
--翌朝の号外では勇者が'一人'で王国で一番の規模を誇る裏組織の幹部を全員捕まえたと一躍話題となった--




