東西
キーンコーンカーンコーン
「座るのじゃ! 授業を始めるぞ!」
鐘の音が学校中に響き渡り、チェスはいつも通り教壇の前に立ち、生徒に声をかける。
「今日は超国が統一される前の歴史。東のサイラク、西のキクレンで国が分断されていた時代について学んで行くぞ」
チェスは黒板にデカデカと超国の図を書くと三分の二をサイラク、残りの三分の一にキクレンと表記する。
「昔、この国は超能力を暮らしに上手く利用して生活を豊かにしようとするサイラク、魔王を崇拝し復活を目論むキクレンの二カ国に分断されておった
キクレンでは魔王こそこの世界を統べる存在であるとし、封印を解くために超能力を限界を超えて使用する方法が研究されておった。
だが、その研究が進んでいった結果キクレンでは命を落とす者が多くなった。
研究がどんどん過激になっていくキクレンにサイラクは危険だと考え、キクレンに忠告を何度も行っていた。
しかし、キクレンは聞く耳を持たず研究を続けた。
そのため、サイラクはキクレンの研究所を全て襲撃したのじゃ。
キクレンの者たちは怒り狂いサイラクに戦争を仕掛けた。
これが東西戦争である。
キクレンは命を犠牲にしながらサイラクを攻め続けた。
能力の強さでサイラクは押されていたが、数で勝るサイラクがどんどん兵が死んでいくキクレンを押し返すのは時間の問題であった。
そして、サイラクは当時キクレンを支配していた国王や重鎮を倒す事で東西戦争に決着をつけたのじゃ」
チェスは一通り黒板に文字や図を書きながら説明していくと一息つく。
「皆に勘違いして欲しくないのじゃが、この東西戦争ではサイラクが完全に正しいとは思わないで欲しい。
戦争に発展した時点でどちらが絶対に正しいなんてものは無いのじゃ。
戦争に発展してしまった元のきっかけはサイラクがキクレンの研究所を破壊してしまった事が原因。
サイラクはひたすらに議論で解決するべきだったのじゃ。そうすれば大勢の人達が死ぬことは無かったじゃろう。
議論をする事を諦めてしまったサイラクにも責任はあるのだ。
これで東西戦争についての授業は終わりじゃ! 次は魔法・超能力・神剣についての授業を行う」
キーンコーンカーンコーン
チェスが話し終えると同時に鐘の音が学校中に響き渡り生徒達が帰宅し始める。
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王国の城下町
「だ、誰か!!助けてください!!」
人気のない路地裏で少女が男に追われていた。
「待ちやがれ! こんなとこで逃げても誰も助けちゃくれねーよ」
男は叫ぶと手を少女の方に向ける。
ブツブツと小声で何かを呟くと手から魔法陣が出現し、魔法陣から雷が少女に向かって放たれる。
雷が少女に当たる寸前に誰かが一瞬で誰かが少女の間に現れると、雷を消し去る。
「あ? 誰だ!?」
男は怪訝そうに現れた人物に手を向けると、今度ははっきりとした声で詠唱する。
「雷の矢を運ぶ鷲、おんぼはとるな
サンダー・アロー」
男の魔法陣から雷でできた矢が現れた人物に向かって飛んでいく。
「王国は思っていたより野蛮なのですね」
長い銀色の髪をなびかせ、見るものを見透かすような瞳をしている。
現れた人物はコピであった。
パチン
コピが指を鳴らすと右手が巨大化し竜の鱗が纏われると、雷の矢を振り払う。
「なっ! 何だその魔法は!? 詠唱も魔法陣すらもない魔法なんか聞いた事がないぞ!」
男は驚愕の声をあげると後ろに振り返り、一目散に逃げ出す。
「私の存在を吹聴されては困るのですよ」
しかし、コピは素早い動きで男との距離を縮めると竜の手で男を潰してしまう。
「追手はやっつけました。 大丈夫ですか?」
コピは柔らかい表情で少女に語りかける。
「はっ、はい。 助けてくださりありがとうございます」
少女はコピに対して少し怯えている仕草を見せるが、すぐに感謝の言葉を伝える。
「助けたお礼としては何ですが、いくつか質問に答えて頂きたいです」
コピは極力少女に恐怖を与えないように丁寧な仕草に加え、必要以上に距離を詰めないで話しかける。
「はい、、私に答えられる範囲であれば、、」
少女は自信の無さげな口調で答える。
「ではまず、なぜ貴方は彼に追われていたのですか?」
「それは」 「それは彼女が人攫いから逃げ出したからだよ」
コピからの問いに少女が答えようとした時に上空から遮るように別の声が響いてくる。
「貴方はどなたでしょうか?」
コピは驚きを隠し平然とした態度で、現れた男に問いかける。
「少し待っててね」
男はコピに手のひらを向けて待つように伝えると少女の元へと降りてゆく。
「ここに書いてある住所に行ってみて。 そこで出てきた人にこっちの紙を見せるといい。 そしたら貴方を雇ってくれると思うから」
男が少女に2枚の紙を渡すと、少女は目を見開き涙を溢す。
「ありがとうございます、、ありがとうございます」
「うん、あの人には僕から話しておくからもう行っていいよ!」
少女からお礼を言われると、男は明るい口調で返事をする。
「貴方も助けてくれてありがとうございました!」
少女はコピにもお礼の言葉を口にすると早速、どこかへ走り去って行った。
「改めて聞きましょう。 貴方は誰でしょうか?」
コピは少女を見送った後、コピに背を向けている男に向かって再度問いかける。
「待たせてしまってごめん。
僕の名はローク・スルタン
この国の勇者だ」




