外の世界
「ルーク!!!」
チェスは空からボニーに目線を移すと大きな声で骨達と戦っているルークを呼ぶ。
「オッケー!いきますよキング!!」
「破裂する槍」
ルークは青色の長槍を持つ手を思いっきり後ろに引くとボニー目掛けて勢いよく放つ。
槍は目の前に立ち塞がる骨達を蹴散らしながら、一直線にボニーまで突き進む。
しかし、ボニーは地面から生えて来た骨の腕に突き飛ばされた。
「危ないね!」
向かってきた槍がボニーの横を通り過ぎると、左手を上に挙げまた骨達を召喚するつもりだ。
だが、突如ボニーの腹部が背後から槍に貫かれてしまう。
「な、何で?」
ボニーは予想外の出来事に動揺しながら後ろを振り向く。
槍で自身の腹部を貫いていたのはチェスであった。
「'入城キャスリング'。私は一日に一度だけルークの持つ槍と自身のいる位置を入れ替えることができる。この能力はまだ誰にも見せたことは無かったな」
致命傷を受けてしまったボニーは能力の制御をすることができず、骨達が崩れ落ちる。
黒く染め上がっていたボニーの瞳も元の瞳に戻り、メテオとシルブに課していた命令も解ける。
「やっぱり..すごい.や..チェス..さ..んは」
ボニーは諦めたようにズボンのポケットから封印の宝玉を取り出す。
「お前が持っていたのか!?」
チェスはてっきりボルトが持っていると思っていたようで驚きの表情を見せる。
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ボニー達が地下にいた頃
超能隊本部の地下でボルトが封印の宝玉を手に取るとボニーに渡す。
「これはお前が持っておけ。念の為にな」
ボルトは相変わらずの真剣な表情でボニーを見る。
「私が? えぇ分かったわ。」
ボニーは少し不思議そうな顔をするがすぐに宝玉を受け取る。
「ねぇ、今回の帝国の誘いを受けたのって昔に私が話した夢のため?」
ボニーは宝玉をポケットにしまうとずっと抱えていた疑問をボルトにぶつける。
「昔の夢? 何のことだ?」
ボルトはボニーに宝玉を渡すと地上へ登る階段に向かって歩き出しており、ボニーの問いにも振り返ることなく短く返事をするのみだった。
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「ビショップ! ボニーの手当てをしてやってくれ。お前の力でギリギリ治せる程度の傷を与えた」
チェスは封印の宝玉を手に取ると遠くで待機しているビショップを呼ぶ。
「はい!」
ビショップはチェスから声をかけられるとすぐさま翼を羽ばたかせる。
(やっぱり、さっきボルト兄さんは嘘をついていたわ。兄さんは昔から嘘をつく時、私の目を見ることができないもの)
ボニーは腹部の痛みを堪えながらも、なぜ宝玉をボルトがボニーに持たせたのか。その理由を考えていた。
(今こうして皆が戦っているのは、昔あんなことを私が言ったからなのかな、、)
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20年前
ボルトが10歳、ボニーが7歳の頃。
二人は超国の街が見下ろせるほどの大きな山の頂上にいた。
「ボルト兄さん、何で戦争って無くならないのかな?」
この日は機国からのミサイルが数発、超国に落ちて来ていた。
「それは様々な原因があって、的確に教えてやる事はできないが、、」
ボルトはボニーからの質問に少し考えると再び口を開く。
「簡単な話、俺とお前がケンカをするようなものだ。俺たちだってずっと仲良しな訳じゃなくてケンカをするだろ?」
「それはボルト兄さんが私の作った料理を残したり、試合の時に手を抜いてくれなかったりするからだよ!」
ボニーはムスっとした表情で反論する。
「俺だって料理に嫌いなものがあって残したり、お前を強くしたいという想いから手を抜かなかったりと理由があるんだ」
ボルトはボニーの頭を撫でながら話し続ける。
「そうしたお互いの気持ちの行き違いがケンカになるだろ? 戦争も似たようなものだと俺は考えてる」
「でも、私達はすぐに仲直り出来ているよ? 何で国同士は全然仲直り出来ないの?」
ボニーは真っ直ぐな目でボルトを見つめる。
「俺らはお互いのことを大事に思ってるからすぐに仲直りしたいと考えるが、国は他の国を大事に思わないからな」
「何で国になると大事に思えないんだろうね。国も人と同じなのに」
ボニーは頭を抱えながら考えている。
「ふっ、俺らはまだ知っていることが少なすぎる。これから沢山の知識を得ることでその答えも出てくるんじゃ無いか?」
「分かった! 私大きくなったら世界中を回って色んな国の事を知りたいな。そして、戦争を無くす方法をまた考えたい!」
「そうか、応援しているぞ」
ボルトはボニーの言葉を聞いて頷くと、立ち上がり登って来た道を歩いていく。
「あっ、ちょっと待ってよ!」
その後ろを慌てるようにボニーは追いかけていく。
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(兄さんはあんな小さかった頃に話した私の夢を覚えていてくれてたのかな、、)
いつのまにかボニーの瞳は潤んでいた。
飛んでくるビショップよりも早く、赤い蒸気を纏ったメテオが勢いよくボニーの元まで飛んでくる。
「良くやってくれたなチェス、後は任せろ」
メテオは短く言葉を発すると、チェスが何か行動を起こすよりも早く動く。
メテオはボニーの心臓をその手で貫いた。
「お.と..さ」
ボニーは自身の心臓が父の手で貫かれているのを見て、その場に倒れ込んでしまう。
「何をしてるんだお前は!!!」
チェスは怒りの形相ですぐさまメテオの体を槍で貫いてボニーから距離を取らせる。
「私の子供達が異常なのを私が一番知っている。こ奴らは一度決めた事はどんな事があってもやり抜く子達だ。チェス、お前のやり方は緩い。今後障害になり得る可能性は全て潰していかねばこの国は終わるぞ!」
メテオは自身の体を貫いている槍を引き抜くと、纏っていた赤い蒸気が無くなる。
「チェス、この国の平穏はお前にかかっている。冷静さと冷酷さを併せ持つんだ」
チェスの胸元を軽く拳で叩くと、ボニーに近づく。
「ボニー、お前らには寂しい思いをさせたな。小さな頃にわしら両親がいなくなり、苦労もかけただろう」
メテオは優しくボニーの体を抱きしめる。
「子供の命よりも国の未来を取った、馬鹿な父親の元に生んでしまってすまんな」
ボニーは涙を流しながら首を横に振る。
「あっちでどんな生活を送っていたか教えておくれ」
メテオは最後の言葉を伝えると塵となって消えてしまう。
「馬鹿、これじゃぁ誰も報われないじゃ無い。アンタ!キングをしっかり支えてやるのよ!」
シルブは涙を流しながら、目の前に立つナイトに言葉をかける。
ナイトが黙って頷くと、シルブは少し満足そうな表情をして塵となり消え去る。
ビショップがボニーの元まで来ると両手から緑色の光を発してボニーの左胸と腹部の位置に置いて治療を始める。
「どうだ!治るか!?」
チェスはボニーの元へ駆け寄りビショップに問いかけるが、ビショップは頷く事は無い。
「無理..だよ。傷がおおき...すぎる」
しかし、ボニーは自身が助からない事を理解しているようだ。
「チェス..さん。ごめん..ね」
ボニーがチェスの手を握って謝ると瞳から光が無くなり、握っていた手が力を無くして解けてゆく。
「何て事だ...」
チェスはボニーが死んでしまった事実を知るとフラフラと足元が揺れ、倒れ込んでしまいそうになる。
「真冬の眠」
その体をクイーンが受け止めると、チェスの体の温度が急激に下がりチェスは一瞬で眠りにつく。
「今のキングは心労がかかり過ぎてしまっています。お許しを」
クイーンは眠っているチェスを横にし謝罪をすると、クイーン達は光を放って全員消えていく。




