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キャンピングカーでシャワー

すみません。体調崩しておりまして更新頻度が減るかもしれません。


「確かに白狼がいるのであれば、俺たちの護衛なんて不要だな」


「代わりにお金を支払うかの?」


「でも、リックの治療費用や装備の補修を考えると、大きな出費は避けたいかも……」


 フランツ、ドルムンド、エスリナが困った顔で話し合う。


 当初の予定ではフランツたちが護衛をする代わりに、俺がニルエットまで乗せてあげるという交渉だった。しかし、俺にはハクという従魔がいるので、護衛という対価が通じなくなくってしまった。


 俺としては怪我人がいるんだしお金なんて無くても乗せてあげたいんだけど、無性の善意ほど怖いものはないとも言うしな。


「乗せてあげる代わりに、俺たちにニルエットのことを教えてくれるっていうのはどうだ?」


「え? そんなことでいいのかい?」


 提案すると、フランツが驚いたように振り返る。


「なにぶん遠い国からきたからこっちの常識に疎いんだ。ドルムンドたちにはニルエットのことを色々と教えてほしい」


 オススメの宿、屋台、商店、飲食店といった情報は仕入れることが難しい。特にインターネットが普及していないこの異世界では情報を手に入れるのが一苦労だ。魔石を要求するよりも遥かにメリットがあるだろう。


「そういうことであればお安い御用さ。気になることがあれば、なんでも聞いてくれ」


「じゃあ、交渉成立ってことで」


 手を差し出すと、フランツは笑みを浮かべて握り返してくれた。


「ひとまず、リックを中に寝かせてあげよう」


「そうしてもらえると助かる」


 回復魔法をかけたとはいえ、リックの状態は完全によくなったわけじゃない。


 シートの上に寝かせておくよりもキャンピングカーの中にあるベッドで休んでもらった方がいいだろ

う。


 リックを背負うフランツと共に俺はキャンピングカーの中に入る。


「な、なんだこれ!?」


「どうしたんじゃ、フランツ?」


「馬車の中に何かあるの?」


 フランツの声に反応し、外にいたドルムンドとエスリナが車内に顔を覗かせる。


「な、なにこれ!?」


「ほおー、これはたまげた!」


「イスやテーブルがあるし、右側にはキッチンまである!」


「キッチン!? 馬車の中なのに!?」


「その奥にはベッドもあるぞ」


 フランツ、エスリナ、ドルムンドがキャンピングカーの車内を見て驚愕の声を上げる。


 どうだ。すごいだろう。うちのキャンピングカーは。


 ハイエンドモデルだけあってインテリア全てに拘りがある。


 まるで、高級ホテルのような車内空間に三人とも圧倒されているようだ。


「結界を張っていることからただの馬車ではないと思っていたが、これは予想外じゃな」


「トール、これは一体どういうことなんだい?」


 フランツがリックを背負いながら詰め寄ってくる。


「これはキャンピングカーさ」


「「「きゃ、きゃんぴんぐかー?」」」


「馬車と違って生き物に牽いてもらう必要のない自走式の乗り物みたいなものさ」


「自走式じゃと!?」


「確かにこのキャンピングカーには馬が繋がれていなかったわね」


「俺はてっきり白狼に牽かせているものかと……」


「おい、人間。次に無礼なことを口にしたら、その首を刎ねてやるからな?」


「は、はい。すみませんでした」


 ハクが外の窓から顔を覗かせながら脅しをかけ、フランツがインコのように顔を高速で上下させた。


 割としっかりとした好青年というイメージなのだが、抜けているところもあるんだな。


「キャンピングカーは車内で生活できるように作られているから人が生活できるだけの設備は全て備わっ

ているよ」


「見たことのない魔道具のような物も多いが、ひと通りの生活はできそうじゃな」


「というかそこらの宿以上に中が充実していない!? こんなの王族や貴族だって持っていないわよ!」


 ドルムンドが電子レンジを不思議そうに眺め、エスリナがL字型のソファーに腰掛けながら快適そうに言った。


 自慢のキャンピングカーか褒められると、所有者としても嬉しいものだ。


「しかし、こんな高級なベッドにリックを寝かせてもいいのかい?」


 魔物との激しい戦いがあったのか、リックの身体はお世辞にも綺麗な状態とは言えない。フランツが躊躇う気持ちもわかる。


「今は怪我人を休ませるのが大事だろ?」


「恩に着るよ」


 別にシーツなんて後で洗えばいいだけだしな。いざとなったらショップで新しいものを購入すればいいだし、大きな問題ではない。


 リックの靴や靴下などを脱がせ、革ベルトなどを外すと、フランツはリックをベッドへと寝かせた。傷口はしっかりと塞がっているし、少しすれば目を覚ますことだろう。


「しかし、これだけ見事な内装だとワシらが汚れたままというのはなぁ」


 ドルムンド、フランツ、エスリナが自身の身体へと視線を落とす。


 彼らの装備や衣服は砂や泥などに塗れており、お世辞にも綺麗と言える状態ではなかった。


 俺はそこまで潔癖症というわけでもないが、車を常に綺麗な状態でいたいドライバーからすると発狂ものだと思う。


「まあ、最低限の汚れは落としてくれると助かるな」


 CPを消費すれば、車内の自動清掃ができるみたいだが、キャンピングカーに乗るのであれば身綺麗にしてくれると使用者として有難い。


「ちょうど傍に小川があるし、ちょっとそこで身体を洗ってくるよ」


 フランツとドルムンドが車内から出て、小川の方へと駆け出した。


「えっと、私はあいつらが終わってから水浴びをしようと思うわ」


 車内に一人残ったエスリナが気まずそうに言う。


 同じパーティーとはいえ、彼女はうら若き女性だ。フランツやドルムンドのように豪快に外で身体を洗い流すことはできないだろう。


「だったらキャンピングカーの中でシャワーを浴びるかい?」


「シャワー?」


 俺は疑問符を浮かべるエスリナを連れて奥へ。


 そこには大人一人が余裕で入ることのできるマルチルームがある。


 リアエンドの左側にはシャワー&トイレが完備されている。トイレは処理が容易なカセットタイプで便座の上部には格納式の洗面台がセットされている。


「ここを捻れば温水が出るんだ」


「わっ、すごい! 本当にここを使ってもいいの?」


「ああ、いいぞ。こっちの棚には髪を洗うシャンプーにリンス、こっちにはボディソープがあるから自由に使ってくれ」


「わかったわ!」


 頷くなりエスリナは外套を脱いでテキパキとシャワーの準備を進める。


 裸になったわけではないけど、目の前でエスリナのような美人が脱ぎ始めると妙にドキドキしてしま

う。


「俺は外に出ておくよ」


「はーい」


 何となく俺の慌てた様子が伝わってしまったのだろう。返事をするエスリナの声はどこか苦笑気味になっていた。


 ステップを降りて外に出ると、目の前の小川ではフランツとドルムンドが衣服を脱いで水浴びをしていた。


「二人とも良かったらこれを使ってくれ」


「石鹸か! こんなにいい香りのする石鹸は初めてじゃ!」


「こんなに高級な物をいいのかい?」


 ただの予備の固形石鹸。前世なら百円もしないものだ。


 しかし、二人の驚きようからすると、かなり価値が高いもののようだ。


「これは普通の石鹸とは違うのか?」


「俺たちが普段使っている石鹸はもっとドロドロで脂臭いやつだな」


「固形の石鹸など商人や貴族以外で使っているものは滅多におらん」


 話を聞いてみると、昔ながらの灰と脂を混ぜて作ったようなやつか、ウォシュランの実という洗浄力のある木の実を石鹸代わりにすることが主流らしい。


 となると、これだけクオリティのある高い固形石鹸が高級品に値するのも納得だな。


「そうなのか」


「えっと、返そうか?」


「いや、気にせずに使ってくれ。ここにタオルも置いておくから」


「あ、ああ。ありがとう」


 石鹸を手渡して近くにタオルを置くと、俺は二人の傍から離れた。


 男の水浴び姿をジーッと眺めていてもつまらないしな。


「そういえば、エスリナにタオルを用意するのを忘れた」


 今のままではマルチルームから出た瞬間に困ってしまうかもしれない。


 俺はそのままキャンピングカーのリア後部に移動すると、中からはシャワーの流れる音がした。


 一瞬、エスリナの一糸纏わぬ姿を想像しそうになったが激しく首を横に振って邪念を振り切った。


「どうしたの?」


 外側からバゲッジドアを叩くと、ハンドルが捻られて水の音が止まる。


「すまない。タオルを用意するのを忘れたから少し車内に入ってもいいだろうか?」


「トールは律儀ね。構わないわよ」


 エスリナはクスリと笑うと、再びハンドルを捻って水の流れる音がした。


 一度は出て行くといった男が、無言で戻ってきたら怖いだろう。


 当然の配慮だと思うが、この世界の男としては律儀な部類に入るのだろうか。


 この世界の常識を知らないのでわからない。


 ステップを上がって車内に入ると、常設ベッドの側にあるクローゼットを開いた。


 しかし、そこにタオルはなかったので仕方なく、端末を操作してショップを開くことにする。


 端末を開くと、電気と水の量がハイペースで減っているが、どちらも補給できるので気にしない。電気はソーラーパネルで充電できるし、水だってハクの魔法やこの世界で手に入れた水で補給することができる。


 いざとなれば車体追加機能にある【水補給】【電気補給】などを購入し、CPを消費すれば即時に補給できることはわかっているからな。


 ショップにて新品のバスタオルとタオルセットを購入。


 余分に購入した分は客人用としてアイテムボックスに収納しておく。


 バスマットを敷いてやり、すぐ傍のカウンターにバスタオルとタオルを置いてやった。


「ここにタオルを置いておくからな」


「ええ、ありがとう!」


 シャワー混じりのエスリナの声を聞くと、俺はすぐにキャンピングカーの外に出た。




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― 新着の感想 ―
キャンピングカーのCP機能が至れり尽くせり過ぎるwww
ただでさえ、多作で大変でしょうに、お大事にしてくださいね。 諸作品の更新楽しみにしてます。 次回も冒険者たちにキャンピングカーの便利さわからせ回かな(笑)。<拘り自慢したくなるのわかるわぁ(…
お大事になさってください
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