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ドックコット


 区切りのいいところで散歩を終えると、俺とハクは拠点となるキャンピングカーのところまで戻ってきた。


「またレイアウトとやらを考えているのか?」


「そうさ。今回は湖をメインに考えたいと思ってね」


 前回は村の中。しかも、人の家の敷地内だったということもあり、やや苦しげなレイアウトになったかもしれないが、今回は正真正銘のキャンプだ。


 目の前にあるレノア湖が一望でき、なおかつオシャレなレイアウトにしたい。


「まずはキャンピングカーの位置を変えるか」


 俺は運転席に乗り込むと、エンジンをかけてキャンピングカーの位置を変えることにした。


 湖を正面に望めるように停車し、大きな窓やサイドオーニングが湖に向くように配置する。


 これにより車内でも湖畔の景色を楽しむことができる。


 水辺に近すぎると潮の変化や夜露、虫の影響を受けやすいので五メートルから十メートルは離した位置に。地面は平らで硬い場所を選び、ぬかるみなどのスタックしやすいところは避ける。キャンピングカーの配置はこんなものだな。


 次はリビングエリアだ。


 昨夜と同じようにクランクハンドルを使用して、オーニングを引き出す。


 オーニング布を広げると、オーニングの両端にあるサポートアームを引き出して固定。


 オーニングが水平になるように調整し、地面にペグを打ち込んでサポートアームの先端を固定して安定。


 サイドオーニングが展開されると、折り畳みテーブルとチェアを湖側に配置する。


「……ふう」


 ひとまず、チェアに腰かける。


 目の前には穏やかな湖が広がり、柔らかな風が頬を撫でる。水面は鏡のように青空を映しており、太陽の光が波間に煌めいている。


「いい眺めだ」


 湖が魅せてくれる解放的な景色は森の中では味わえない。


 これこそ湖畔キャンプの醍醐味だ。


「まだ設営とやらの途中なのだろう? そんな風にボーッとしていていいのか?」


「時間に制限があるわけじゃないからな。ゆっくり休憩しながらやるよ」


 キャンピングカーやアイテムボックスがあるとはいえ、荷物の引き出しにはそれなりの労力がかかる。


 ずっと動きっぱなしだと疲れてしまうのでこうやって休憩を挟みながらのんびりと自分のペースでやればいい。


「……おい」


 景色を堪能していると、またしてもハクが声をかけてくる。


「今度はなんだ?」


「毎度思うのだがお前だけ座ってズルいぞ。我も寛げるようなチェアはないのか?」


「……そういえば、それもそうだな」


 こっちにやってきてキャンプをする時は俺だけがチェアに腰掛けており、ハクはグランドシートかその辺にある草地や切り株などに寝転がるだけだ。確かにそれは申し訳がない。


「何かハクが寛げる道具がないかショップで探してみる」


「頼んだぞ」


 俺は車内に戻ると、端末を操作してショップを開く。


 アウトドア用品のチェアで検索すると、たくさんのキャンプチェアが表示された。


 しかし、当然ながらほとんどは人間向けの一人用のものばかり。


 大人数が座れるフォールディングベンチやコンパクトベンチも悪くはないが、大型犬ほどのサイズのハクにはやや幅が足りなく、バランスが心元ないように思える。


 大型犬といえば、以前キャンプサイトにペットを連れてやってきているキャンパーがいたな。


 ああいう人はペットを休ませる時にどうしているのか? もしかすると、ペット用のチェアがあるのかもしれない。


 ハクを犬扱いするのは失礼とは思いながら俺は犬用のチェアでショップ内を検索してみる。


 すると、犬が寛ぐためのドックコットなるチェアがあることが判明した。


 折りたたみ式ドックコットキングサイズ。


 これなら大型犬ほどの大きさをしているハクでもゆったりと寛げそうだ。


 15000CPを消費して購入すると、目の前に折りたたみのドックコットが出現した。


 やや大きめではあるがキングサイズなので仕方がない。


「ハク、ドックコ――じゃなくて、寛げるためにチェアを用意したぞ」


 ハクの目の前でサッとドックコットを広げてやる。


 折りたたみ式なのでこれだけで展開完了だ。


 長さは二メートル以上あるのでかなり大柄な人間でもすっぽりと収まるほどだ。


「ほう、どれどれ。どのくらい寛げるか確かめてやろうではないか」


 ハクは確かめるように前脚でドックコットに触れた。


「ふむ、弾力があって生地も丈夫そうだな。我が乗っても壊れるようなことはなさそうだ」


 生地の耐久性を確かめると、ハクはそのままドックコットの上に乗っかった。


 二歩、三歩と周るようにして歩くと、その場で寝転んだ。


「どうだ?」


「これはいいぞ。我に相応しいチェアだ」


「喜んでもらえてよかった」


 自分だけの大きなチェアにハクはご満悦の様子だ。


 それが犬用のチェアというのは黙っておくことにしよう。



 ●



「おい、トール。起きろ」


「んん?」


 ハクに身体を揺すられ、俺は意識を覚醒させた。


 チェアに深く腰掛けて目を瞑っていたらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。


 ふああと大きな欠伸を漏らして伸びをする。


 眠っていたのは短時間ということもあり、身体への負担はほとんどなかった。


「どうした?」


「川魚が食べたい」


 そういえば、ここの湖にいる魚は美味しいってロアンナさんが言っていたな。


「じゃあ、釣りでもやるか」


 俺は立ち上がると、キャンピングカーの外部収納庫から釣り竿を取り出す。


 こういった長尺物を入れっぱなしにでき、すぐに取り出せるのもキャンピングカーの良さだ。


「釣り? そんなことをしなくても我の魔法で捕まえることができる」


 ウキウキとした気分でタックルボックスを取り出すと、ハクがそんなロマンのないことを言った。


「なんとなく思っていたけど、釣りをするのもキャンプの醍醐味なんだ。だから、釣りもやらせてくれ!」


「お前がそこまで言うなら尊重しよう。ただ足りない分は、後で遠慮なく確保するからな?」


「ありがとう」


 なんだかんだと俺のキャンプに対する拘りを理解してくれるところは優しいな。


 最終的にはハクの魔法で大量に捕まえることになるかもしれないが、不甲斐ない姿はできるだけ見せないようにしよう。


 釣り竿だけでできるだけ多くの魚をゲットするんだ。


 俺は釣り道具を手にして、ハクと共に釣りポイントへ移動。


 先程、散歩していた時によく魚が集まっているエリアを見つけたので、そこに糸を垂らせば何かしらの反応があるんじゃないだろうか。


 逆くの字のように飛び出ている岸辺に到着すると、程よく水草が生えていた。


 魚影を探していると、不意にパシャリと水が跳ねる音がした。


 視線をやると、水面から飛び跳ねる銀色の魚が見えた。


【レノアマス】

 レノア湖のみに棲息する白マスの一種。

 食用種で毒性はなく、脂が乗っていて甘い。

 塩焼き、ムニエル、蒸し焼き、ホイル焼きなどにすると美味。

 雑食性のためになんでも食べる。



 即座に鑑定を発動させると、マスの一種だということがわかった。


 さすがに生食は寄生虫が怖いのでできないが、普通に火を通して加熱すれば食べられるみたいだ。


「あれは脂が乗っていて美味そうだ」


 一瞬の光景をハクも見逃していなかったようだ。


 湖面を見つめながらちろりと舌を出している。


「塩焼きにして食べたいな」


「それはアリだな」


 バター焼きにホイル焼きも大変心惹かれるものがあるが、まずはシンプルに塩焼きで味わってみたい。


「さて、仕掛けはどうするか……」


 マスの餌に関してだが何でもいいらしい。


 先ほど飛び上がった時は虫を食べていた様子だが、虫を模した疑似餌はやや上級者向けの釣り方だ。俺は釣り経験が浅いので素直に初心者向けのルアー釣りで試してみることにしよう。





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― 新着の感想 ―
ドッグコットじゃね?と言うのは野暮なんでしょうかね?(∀`;)
「オーニング」やら「ドックコット」やら、小説を読みながら画像を検索できるのはなろうの強み★ アルファポリスだと文字をトラッグできないからタブを開いて文字入力する手間がかかるしなぁ~・・・ 錬金王さん!…
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