プリパッツンによる接客のレッスン
「あ、もう敬語使えるようになってるんですね。笑顔も大分よくなってるし」
「はい……」
「そう! よかった。早速接客について教えますね」
こいつの名前忘れた。女は手を合わせてあたしに丁寧に教えた。お辞儀の角度から歩き方、小さい子供相手にする時の接客の仕方、クレーマーの対処方法、表情の作り方……。クリクリに教わったことも少しあったので、おさらいしているようで安心できた。
これを一通りマスターできれば、あたしを店に出しても申し分ないとプーが言っていたそうだ。そうか、頑張らないといけないな。
「うんうん。よくできてる! やればできるじゃない、クローンさん!」
「クローン……?」
あたし、普通の人間じゃなかったのか?
いや、あたしもこいつの名前を覚えていないから、人のことは言えないわけだが。
「あ、ごめんね。変なあだ名付けて。私、人にあだ名を付けるの好きなんです」
「私も好きです」
敬語で一人称が私になったせいで、あたしの個性が消え失せた。社会人になったら、ずっとこんな感じで仕事することになるのか。一人称は大事だぞ。あたしの口調だって、大事だ。今からやきもきしていちゃ、世話ない。ストレスが溜まりそうで胃が痛くなる。
「そうなんだ。私のあだ名、どんなの付ける?」
「え……えーっと……」
あたしは迷った。だってこいつの名前は覚えてないし、名前をもじろうにも、どうすればいいか。となると、見た目で付けるしかないか……?
あたしはピンと思い付き、人差し指を立てた。
「プリパッツン」
「……え?」
「プリパッツンです」
女はショックを受けた。少し太めの顔でぱっつん前髪だったから、そう名付けた。ぴったりのあだ名だと思うが、正直に言いすぎたか。身体的欠陥のことを言うと人が不快になるそうだしな。ここは謝った方がいいのか。
「あの、すみませ……」
あたしが謝ろうとすると、女は必死の形相であたしの両肩を掴んで揺さぶった。




