敬語のレッスン②
「なるほど。それはいいですね。にしても、小娘が敬語を喋ると違和感しかないですね」
「……」
敬語を普段喋らない奴が使うと気持ち悪くなるのは、先刻承知の上だ。
「小娘は寂しがり屋で、誰かと一緒に話す時が幸せだということですね。一口に誰かと言っても、家人や朋友でしょう。それがお客様とは限らない……というのが少々難ありですね。お客様とお話する時、大好きな誰かを想像しながらお話するのがよさそうですね」
クリクリの的確なアドバイスのおかげで、あたしは自然に笑顔を作れるようになってきた。この調子で笑顔をマスターするぞ。
「ですが、これだけは覚えておいてくださいね。目前にいる方を自身の好きな方に見立てても、お話しているのはお客様です。それだけは念頭に置いておき、友達感覚で話してはいけませんよ。簡単なようで案外難しいことかもしれません。お客様を大好きな誰かと錯覚するわけではなく、あくまで仮の姿として見てください」
あたしはシャーペンと紙を出してメモを取った。
「メモを取る時、相手と対面していれば『はい』と一声ずつかけた方がいいですね。タイミングは相手の話に間がある時がいいです。間がなければ返事はせずに、頷いてください。話の邪魔をしてはいけないですよ。不快に思ってしまいますからね。そして、相手が話し終わった後に確認をする。その際も『復唱または確認させていただきます』の一言も欲しいです。きちんと理解できているかの確認にもなりますし、もし間違っていれば訂正もできますからね。これは社会人になるためにも必要なことですよ」
そんなことを知っている深海の国の王様付メイドは凄い。日本人の知識がたっぷりだ。
あたしは覚えるのとメモを取るのに必死で、そんなことする余裕がないけどな。
「最初はゆっくりでいいです。できることを、少しずつ増やしていきましょう」
「かしこまりました」
「これで私の指導は終了です。次は接客を学んでください」
接客についても少しだけ学んだが、これでようやく次の奴にバトンタッチか。気心が知れているから、クリクリだとまだ話しやすかった。次の奴は全く知らない赤の他人だし、どんな感じになるのやら……。クリクリが携帯か何かで次の奴を呼んだ。
すぐさま次の奴が来て、スタッフルームにやって来た。
「お待たせしました」
「よろしくお願いします」




