敬語のレッスン
「だろ? あたし、実は頭がいいのかもしれないな?」
「空っぽな頭ということです」
「う……言うな。わかってるから」
「次は私にも敬語を使ってくださいね?」
ニコリと暗黒の微笑を浮かべるクリクリ。やっぱりこいつ、ちょっと怖いぞ。短剣と性癖を隠し持っている分、日和よりもタチが悪いかもしれない。
性癖は隠し持っていなかったか。オープンエロティックだ。
「わか……かしこまりました」
「おや。やはり言い間違えるのは直りませんか。では、今だけ敬語で話すことだけを考えてください。リラックスして欲しいところですが、緊張感を持って私に接してください。私を上司と考え、少しでも粗相をすると、首を切られる……クビにされると思ってください。あくまでも、シチュエーションですからね」
クリクリはゆっくりとあたしに説明した。あたしも気持ちを切り替え、ビシッと背筋を正す。教えられてきたことを実践する時だ。引き締まっていくぞ。
「かしこまりました」
「はい。大分よくなりましたね。では、次は笑顔で敬語を喋る練習をしましょうか。初めは優しくて穏やかなお客様を想像していきましょう。初めから対応が大変なお客様相手ではハードルが高すぎますし。小娘も難しいと思います」
これだけ喋りが丁寧でも、やっぱり女の二人称は小娘なのか。
こいつもプー教に入っている奴だし、仕方ないか。あたしの名前、誰も呼ぶ気ないし。
「かしこまりました」
同じ言葉だが、さっきより硬さが取れたはずだ。笑顔かどうかはわからないが、ちょっと笑ってみせた。クリクリを客だと思って、返事をした。結果はいかようだ。
「ふむ……まあまあですね。まだ表情が硬い。心から感謝の気持ちを出さなければ、自然な笑顔とは言えませんよ。では、こう考えてください。お客様に支えられて今の自分が在り、お客様とお話することだけで幸せだと。私の場合、アマネル・マープ様のお傍にいるだけで幸せです。小娘の場合はどんな時が幸せですか?」
「そうですね……」
あたしは頑張って敬語で話しつつ、頭の中を覗き見るように上を見た。
「私が幸せな時は……皆様と共にお話している時です」




