道に迷ってしまったので
無言の奴が後ろを付いて来ている。見たこともないし、見るからに怪しい奴だ。
マスクかけてて、サングラスかけてて、真っ黒な服を着ている。不審者だな?
「おい……」
「…………」
「何か言えよ。気色悪い奴だな」
「……」
こいつ、何も喋らないつもりか。声を上げずに、誰かわからないようにしている。
なら、声を上げさせてみるか。
あたしは大声で向こう側を差した。
「あっ、そこに美女のパンツ!」
「何っ!」
よし、引っかかった。そんなもんあるわけないだろうに。美女のパンツがよっぽど欲しかったんだな。変な奴があちらを向いた隙に、あたしはささっと走って逃げていく。
「はっ……はっ……。撒いたか……?」
適当にジグザグに走ってしまったために、ゲーセンとは違うところに来てしまった。
見慣れない景色、繁華街……人がたくさんいて、どこだかわからないな。
あたしをストーキングしようとするなんて、いい趣味してるな。そこだけは褒めてやる。
でもどうやって元来た道を戻るか……誰かに道を尋ねるなんてこと、したことないしな。
近くを通った気前のよさそうなババアに声をかける。
「おい」
「は?」
顔を歪ませて、威圧的に返事をした。目の上のたんこぶでも見るかのように。
あ、そうか。こういう時は下手に出ないと駄目なのか。面倒すぎる。
「悪いが、道を教えてくれないか」
「悪いと思うなら訊くな」
そう言われると元も子もないんだが……。ババアはぶち切れてどこかへ行ってしまった。
あたしの敬語力のなさが窺えるようだ。これでどうやってこの難所を切り抜けるのか。
もしかしたら、今日一日、このままかもしれないな……。
「ねーちゃん」
「なんだ……ナンデスカ」




