見る目が変わった
「全部だ」
「ああ? 全部……? あり、をり、はべり、いまそかり……」
「そこだけじゃなくて全部」
「面倒だ」
先公と漫才のような会話をしていると、クラスの奴らがどっと笑いだした。
最近、クラスの奴らのあたしを見る目が変わった。先公もそうだ。あたしを温かい目で見ている気がする。それは全部……プーの影響なのか?
プーが助言したからか、あたしに。
「何……? ぼくの顔に何か付いてる?」
「いや」
あたしはまたプーを見つめていた。やけに視線を吸い寄せられている。ボーっとした時も気付けばあいつのことを見ている。あたし、そんなに気にしていたのか。
「ったく……まあいい。全部覚えてこいよ。今度、暗唱のテストするからな」
「は? おいそれは……あたしの記憶力なめんな」
「なら覚えられるな?」
「だから無理だっての。あたしの学力が底辺にあることは、お前もわかってるだろ?」
あたしの机で繰り広げられる必死の攻防。あたしは防御で先公は攻撃だ。あたしに課題を与えて先公は楽しんでやがる。そうはいくか。あたしばっかりに攻撃するな。
先公にガンくれてやった。
「なんだ、その目は……」
「ガンになれっていう目だよ」
「中年に向かってそれは不謹慎だと思わないか?」
「大丈夫だ。そういう奴は死なない」
あたしの台詞に、またクラスの奴らがちらほらと笑った。
「そうだな……俺は長生きするだろうな」
「ああ」
先公とこんなに話をするのも、最近になってからだった。
こんなに日々が移り変わっていくと、いよいよあたしの幸福が終わりに近付いているのではないかと思ってしまうな……。
この予感は、的中して欲しくない。




