黒髪の美少女になったクリクリ
「あなたの言うこともわかるよ。でもね、人のことをこんな人と言ってはいけないよ。あなたには見えていないところはたくさんあるんだから。悪いところだけが露呈しているだけで、黒江さんにはいいところがたくさんあるよ。それを見つける努力をしてみるといい」
プーのありがたい言葉に、優男はしゅんとした。
だが、お前。いいように言っているが、お前もそれを言っていたのは覚えているよな?
最初の頃も今もたいしてあたしのいいところを言ってくれていないし、たくさんあるなんて初めて聞いたぞ。お前、時と場合によって、嘘を平気でつける奴なんだな。
あたしがプーをギロリと睨んでいると、プーは逆にニコニコと笑った。
「人当たりのいい笑顔浮かべやがって……」
「なんのことかな?」
プーはまたしてもあたしの文句を上手いように躱していく。
「取り敢えず、あたしの評価については保留で頼む……頼むます」
「頼みます。本当に敬語わからないの?」
「喋りだと上手く使えないんだ。普段使ってないから」
練習で上手くできても本番で失敗するのと同じだ。咄嗟のことに対応できない今の状況みたいな感じ。普段から敬語喋りなんて不可能に近いだろう。先公どもに敬語を使えと?
いや、今から使ったら、更に近寄りがたくなるぞ……? 頭おかしくなったと思われる。
どういった心境の変化? って訊かれるに違いない……。
「わかりました……もう少しだけ考えてみます」
自分の感情を押し殺すように、優男はそう告げた。それからプーに何かを報告して、スタッフルームを出た。今度は見たこともない違う人間が来た。
長い黒髪の背の低い美少女だった。美少女が多すぎる世界だな。
「おや。そこにいるのは小娘」
「ま、まさかお前は……クリクリ?」
「マロム・クリムです。アマネル・マープ様をお迎えするのに、丁度いい格好です」
さらっと黒髪を手ですいて、クリクリは自慢げに見せびらかした。
なるほど。同じような背格好で髪の色も同じだと、兄妹に見られるからか。今日はメイド服も着ていないし、周囲の目を集めるような金髪ツインテールじゃない。
「マロム・クリム。よく来たね。来るのは初めてでしょう」




