プーと口喧嘩、いつもの見慣れた風景
あたしがまともな意見を言ったせいで、日和は項垂れてしまった。
「そうですね……黒江様のおっしゃる通りです……では、この話はなかったことに」
「おい」
勝手に話をして、勝手に自分の席に戻っていった。自分勝手な奴だな……。
「わたしも戻る」
「ああ……もうすぐ始業だしな」
長々と話をしていたのに、まだ授業は始まっていなかった。
楽しい時間はすぐ過ぎ去るが、あたしの体感では楽しくなかったということか。
人の感情って難しいな。楽しいはずなのに、ちっとも楽しいと感じられない。もう少し話を聞いてくれる奴なら、もっといい関係を築けたかもしれない。そのことだけが遺憾だ。
あたし、ダチ作り下手かな。
頬杖をついて、一人考え事をするのだった。
「……ふう……」
「どうしたの、溜息」
「なんだ、プーか」
「隣の席なんだから、毎日いやでも顔を合わせることになるよ」
「そうか。そうだな。今日ゲーセン行くからな」
「じゃあ、あなたは出禁にしよう」
プーは学生鞄の中から紙を取り出して、ペンで何かを書き始める。
「おい。まさか貼り紙でもするつもりか? そうまでしてあたしに会いたくないと?」
「あなたが来ると評判が落ちるでしょうが。店員に説明するの大変なんだからね」
あたしが文句を言えば、間を置かずに言い返してくる。滑舌もよくて、いつも的確な意見を言ってくる。反論できない。この頭の回転の速さ、やはりプーだ。
プーはこのクラスの誰よりも賢いと思う。先公も遠く及ばないだろうな。
「でもあそこはあたしの行き付けの店なんだぞ?」
「それは悪うござんしたね。新しい店をお探しください」
ケッとぞんざいな態度を取って、プーはあたしをあしらう。だがここで食い下がるのがあたしだ。あたしは一度決めたら引き下がらない。しつこい女豹、女妖怪黒江と呼ばれたこともあるんだぞ。その矜持は誰にも譲らん。
「出禁にされてもあたしは行くからな」




