アルバイトのお誘い
「朝華はいつもいつもそうやって、日和も黒江様もからかって……悪い子ですよ」
「頬っぺた餅みたいに伸びてるが、元に戻るのか?」
「ほらこの通り。きちんと戻りましたよ」
日和が手を離すと、ぱあんっという破裂音が鳴って、朝華の頬が元に戻った。超をつけてもいいくらい、赤くなっている。無表情だが、痛くないのだろうか。
そしてすかさず手を握って顔を近付けてくる日和。お前の顔は眩い光を放っているからやめろ。麗しの少女の顔が間近にあると、あたしは息が詰まりそうだよ。
「さて、黒江様」
「なんだ?」
「日和たちと共にアルバイトに精を出しませんか?」
「……え」
「日和たちが行っているバイト先は、只今人員を募集しておりまして、黒江様のようなお美しい女性がいれば百人力です。腕っぷしも強いと聞き、日和たちのボディーガードにもなってくださればと思いますが、いかがでしょう?」
「いきなりすぎて付いていけんのだが」
「用もなく黒江様のところに参ったりはしません。これが本題なのです」
ぎゅっと握る手に力を込めて、真っすぐにあたしを見つめてくる。だからそんなに見つめるなって。なんであたしがいちいちドギマギしなきゃいけないんだよ。
何されるかわからないという思いで凄く不安なんだが。
「いかがですか、日和たちと一緒にアルバイトしませんか?」
バイトはするつもりだけど、日和と朝華がしているバイトって、具体的になんなのかわからないんだが。そこを説明するべきじゃないのか。教えられないようなバイトか?
「どんなもんだか知らないところでバイトするのはちょっとな」
「企業秘密で高収入なアルバイトです。でもやましいところはないので、ご安心を」
「怪しい……泥棒が泥棒じゃないですっていうくらいに怪しいニオイがプンプンするな」
あたしはジトッと日和を睨み付けた。日和はしょぼんとした顔であたしの威嚇を躱す。
「……そんなことありませんのに。黒江様は日和たちを疑うのですか……」
「明かせないものを怪しいと思うのが悪いことか?」
隠し事するということはやましいことがあるか、あたしのために言ってくれているかのどちらかだ。プーともこいつらとも会って間もないし、疑心ぐらい抱くものだろ。




