新緑の国
「新緑の国は深海の国のように生きるための知恵など必要ないから。力が衰退していった。わたしも非力で困っている。この身体は動かしにくい」
「今日はよく喋るな」
「このことを話すと、朝華はお喋りになるのですよ」
日和がぷーぷー頬を膨らませて拗ねている。朝華は全く意に介さずって感じだな。
深海の国というのがあるのだから、他の国もあるだろうと思っていたが、シンリョクの国と来たか。漢字がどんなのかはさっきの話ではわからない。新緑か深緑だと思う。
でも二つあるということは、もっとあるだろうな。
日和は普通の人間なのか?
「かく言う日和も実は新星の国から来たのです」
「なにぃいい?」
「もちろん、冗談ですよ」
クスッと笑って、日和は悪戯っぽい笑みを浮かべた。あたしをからかったな?
「朝華が他にもこんな国があるって教えてくれたのです。ね」
「うん。新星の国の他に神剣の国、神門の国がある」
真剣の国、審問の国……物騒な印象の国だな。漢字間違っているかもしれないけど。
「そんなことを教えられても、覚える気ないぞ」
「また日本に生物が来るかもしれないから、覚えておいて損はない」
「口で言われても覚えられないって」
「黒江様。深海の国はオンリーワンだって言ってましたよ。シンがその国だけ違うからと」
つまり、プーは特別な国の王様ってことか?
遠いところにいる奴だとは思っていたけど、異世界の生物で、しかもトップの国の奴だとは。出自まで恵まれているじゃないか。あいつは天から一物どころか十物ぐらいもらっているぞ。やっぱりあいつは羨ましくて憎たらしい。
弱点なんかないんじゃ……人間よりも完璧な奴かもしれないし、あいつならあり得る。
「で、朝華はシンリョクの生物なのか?」
「わたしは新緑の精。妖精と同じ存在」
「黒江様。こういうことは聞き流してくださってもいいのですからね」
日和は朝華の頬をブニーッと伸び縮みさせて遊んでいる。
「フィハ。ヒハヒ」
日和、痛いと言っているのだろうか。




