日和は病んでいるところがある
「そうですか。黒江様がお手洗いに入る姿など想像できませんから……少し興味があったのですが。残念です」
瞳を濡らしてあたしの手を握ってくる。ついでに自分の頬に手をすりすりしてやがる。
ちょ、ちょっとお前どういう奴なんだ。本物のレズか? そうなのか?
あたしのことをどこぞのアイドルか何かと勘違いしているのか?
「お前……」
「はい?」
「ちょっとおかしいと思うが」
「そんなことはありませんよ? 日和は黒江様の舎弟ですから」
語尾にハートを付けてもいいくらいの声で、日和はあたしの考えを拭おうとする。
取り敢えずあたしが好きなのはわかったが、ちょっと怖いぞ。お前、あたしをどんな目で見ているんだ。可愛いからといってお前の行動がエスカレートしては困る。
「黒江様に触れたいと……ずっと思っていたのです……」
あたしの手をつつと触ったまま、とろんとした目で見てくる。恍惚の表情だ。
「黒江様は日和のこと、おきらいですか? こんなに黒江様が好きなのに?」
日和はますます表情を蕩けさせてあたしに心酔している。
「ドン引きだ……」
「おはよう黒江。日和は病んでいるところがあるから」
朝華がポンと日和の肩を叩いて、無表情でやって来た。
「あれ。頭を叩こうと思ったのに……」
「朝華。頭を叩いてはいけないのですよ。脳細胞が死んでしまいます」
「おい。まさか自分の身体すらもコントロールできないとか言うつもりか?」
「そう。わたしは新緑の国から来た」
「聞いてください、黒江様。朝華はたまにおかしなことを言うのです」
もう困っているという顔で日和が朝華のことを話した。
「そうか。異様にちっさい奴はどっかの国から来たってことか? 日和は小さいとはいえ、百四十後半なら、ちらほらいるしな。高校生でも」
「なんのことでしょうか?」
「いや、こっちの話」




