飛び級している天才小学生?
「あ、皆さん。お気付きかもしれませんが、安馬くんは飛び級をしている天才小学生なんだそうです。アメリカ出身で、日本には何度かご家族と旅行に来ていたそうで、今回留学を決意したのだとか。皆さん、安馬くんはとても優しい子なので、仲良くしてくださいね」
先公は手を絡めてへらへらと笑っている。媚びへつらう姿に吐き気がする。あたしはあんな大人にはなりたくない。女の媚びを売る仕草にはほとほと呆れるよ。同じ女として、情けないね。媚びを売らなくても女は女らしくできるはずだ。男っぽいあたしが言うのもなんだが。可愛いから似合っちゃうんだけど、やっぱり虫唾が走る。
人間というのは、自分にとって有益な存在であれば、あれだけいやらしい笑みを零すのだろうか。あれだけ欲に塗れた笑顔を、何食わぬ顔で零すのだろうか。
「……あたしは嫌だな」
「ぼくもあなたのこと嫌な人だと思う」
……お前のことじゃないよ。お前もいやだけどさ。
――ああ、初日から大失敗だ。
ダチもできなかったし、いやな人を目の当たりにするし、隣の席のアマプとかいう奴はめちゃくちゃ腹立つクソガキだったし。しかも小学生かよ。大分下じゃないか……。
全然いいことなかった。前途多難だな。
学校も終わったことだ。よい子なら家に帰るのだろうが、あたしはこれから一人遊びをしにゲーセンに行くつもりだ。一人遊びなんて楽しくないけど、家に帰ってもやることないし。暇潰しだ。
ダチは最近バイトとかいうのをやっているから、あたしには付き合えないとさ。今日も太鼓とクレーンとダンスのメニューだ。あたしは全部下手くそだが、家にいるよりはよっぽどいい。できれば帰りたくないね。家出だ、家出。
うるさい親もうるさい先公もいないそんな生活を、今すぐにでも送りたい。
そのためには金を貯めないといけないのか。だったら、あたしもゲーセンで金使ってないで、金稼ぎしないとな。いつかは働くことになるが、今働きたいとかは思っていない。金稼ぐのって、楽なのだろうか。やってみないとわからないな。
軽くジョギングする程度に走り込み、ゲーセンに向かう。
「ふ。着いた。いつもながらあたしの身体能力はたいしたもんだ」