盗み聞きされていた
ヒワもあさげも頑固な奴だ。あたしの意見を片っ端から却下していく。
「あたしは名前で呼ばれたいんだよ」
「でも黒江様がいいです」
「名前で呼ぶまで口利かないからな」
あたしはそう言って席を立った。二人はしょぼくれたような顔をして、何かを言いかけたが途中で諦めたようだった。あたしと付き合うのには、根気強くなってもらわないと。
こういうことをするからダチが離れていくのかもしれないな……。
親の待っている駐車場まで歩いていくか。
「ふう」
あたしが廊下を歩いていると、金髪コンビのプーとメイドのクリクリが、歩いてきた。
クリクリは顔面に絆創膏を貼っている。多分、女子更衣室で暴れた時に付けた傷だ。
「黒江さん」
「小娘。先程ぶりですね。どうですか、頭は」
「なんだよプー。……とクリクリ」
みんながみんな黒江、黒江、黒江、黒江……そんなにあたしは名前に似合わないか。親に付けてもらって、気に入っているのに、誰も呼んでくれない。そうだよな。可愛い女じゃないし、似合わないよな。 あたしは今気が立っているんだ。
「そんなに名前、気に入ってるの?」
「な……」
こっぱずかしいことを聞かれたか。立ち聞きしていたのか、お前。
プーめ。よくも人の会話を盗み聞きしてくれたな。お前の恥ずかしい秘密は知らないというのに、なんて奴だ。絶対女装させて泣きべそかかせてやる。
「おや。茹蛸のように真っ赤ですね。アマネル・マープ様、これは小娘を辱めるチャンスです。いい感じに哭いてくれることでしょう」
「顔が赤いけど……赤江さんかな?」
「何言ってるんだ、お前! ぜんっぜん面白くないぞ!」
「静かに」
しっとプーが自分の口に人差し指を当てて、あたしの口を塞いだ。
周りにいる患者に睨まれた。すまない、少し取り乱してしまったみたいだ。
プーはパッと手を離して、小声で話した。




