ありのままの姿が一番いい
「あ。気が付いた? もうすぐ救急車が到着する頃よ。少しの間気を失っていたみたい。大事にならないように、きちんと検査しましょうね。若いから病気になったら進行も早いし、悪いことは早めに対処しておかないといけないから」
そうか。少しの間眠っていただけだったのか。
あたしはほっと胸を撫で下ろし、だが腑に落ちないことがあったのを思い出す。
あたしの顔にボールを当てたのは誰だ。よくもやってくれたな。仕返ししてやる。
「そうそう。さっきあなたのクラスの子が様子を見に来ていたわよ。ごめんなさいって謝ってた。名前は確か……赤丸さんと飯島さんだったかしら。二人共とっても可愛い子よ」
「何!? 可愛い子だと……それじゃ仕返しができないじゃないか……」
男だったらメタメタのギタギタにしてやるというのに。プーも例外じゃない。
あたしは爪を噛み、怒りを相殺させる。
「困った子ね……猛々(たけだけ)しい生徒、私嫌いじゃないけれど、喧嘩もほどほどにね。女の子なんだから。今日みたいに他の人に怪我させられるのは仕方ないわ。でも自分から傷を作らないようにしないと。可愛い顔が台無しよ。いつか取り返しのつかない大怪我をしてしまうかもしれない。もっと大事にしなさいね」
先公はあたしのことを自分の子のように思っている。先公でもこういう奴がいるんだな。あたしのよき理解者みたいな奴。こういう奴には、幻滅させたくないな……。
「ありがとな」
「え?」
「心配してくれて……」
「ええ……まあ……どういたしまして?」
なんで疑問形になっているんだ。
「あら、ごめんなさい。あなたが素直にお礼を言う子だとは思わなかったわ。ごめんなさいね。失礼なことを言って。私、あなたを勘違いしていたみたい」
ふふと女らしく笑う先公は、文句を言わせる気を失せさせる。
下品な奴とかムカつく奴なら長々と文句垂れてやるところなのに、こいつは違う。ブリッコじゃないところも好感触で、あたしはこういうのを理想の女性というのだと直感した。
そうだ。顔が美人じゃなくても仕草だけで美しくなれる。見たか? これが日本人なんだよ。あたしはこういう日本の女性が好きなんだ。
気取らなくても、綺麗に着飾らなくても、自然と出る仕草が一番いい。
そんなありのままの姿を体現しているかのような人なんだ。目の前の女性は。
あたしはこういう女になりたい。




