完璧な好青年を演じる隣席の金髪男子
「お前こそ、初対面の奴に向かって遠慮なさすぎ。上から目線で、王様かっての」
「だからさ、戒めにすることや心に留めておくべきことが、座右の銘なんだよ」
「イマシメってなんだ?」
あたしが意味のわからない単語を聞き返せば、金髪男子は溜息を吐いた。
「……ハァ。あなた、バカすぎ。小学校からやり直すべきだと思うよ」
なんだこいつは。初対面の相手に向かって暴言を吐くなんて、失礼にも程がある。あたしでさえ、初対面の奴には優しく接するのに、こいつは無礼すぎる。おまけに背も低いし。なんて奴だ。こんな奴が、学校にいたのか。クソガキじゃないか。
「お前、友達いないだろ」
「あなたよりは友達いるよ」
くっ……! なんて奴だ。平然と言い返してくるなんて。こいつ、頭いい奴なのか? あたしの苦手なタイプじゃないか。勝ち目ないぞ。負けたらあたしが舎弟にならなきゃいけないじゃないか。どうする。しかもナニか?
「もう降参? 口ほどにもない」みたいな目で見てくるし。どんだけバカにするつもりだ。
あたしが悶々としていると、奴の自己紹介の番がやってきた。
よし、そこで突いてやろう。汚名返上だ。
金髪男子は丁寧な所作で席を立って、その小さな口を開く。
「ぼくは安馬プネルと申します。この春から日本に留学にやって参りました。わからないこともたくさんあって、ご迷惑をおかけすると思いますが、一年間、どうぞよろしくお願い致します」
最後に深々と礼をして、アマプネルは満足げに座った。他の奴らも拍手している。心なしか、先公もあたしの自己紹介の時より嬉しそうに微笑んでいる。
ちっ、これだからいやなんだよ、優等生。
あたしはあんな敬語使えないぞ。外人の割には、日本語に詳しいじゃないか。しかもお前、高校生だろ? なんでそんなに完璧なんだ。おかしい。何かやっているのか、こいつは? マナー講座とか、どこかで働いているとか、そういうことか?
なんとなく説明不足な気がして、あたしが先公に目をやると、アマプの自己紹介の補足をし出した。思いついたように手を叩いて。