ブリッコの教師
あたしの机の横に立っているのは担任の先公だった。あのブリッコの先公か。目をつり上げてプリプリ怒っている。頬を染めて膨らませている。歳を考えろ。可愛いけど。
「……教科書、ないぞ」
「はい?」
「現国の教科書忘れた」
あたしは鞄の中と机の中をくまなく探した。でも現国の教科書はない。
「ならぼくが見せるから」
いつの間にか帰って来ていたプーが左側から教科書を見せてきた。存在感が薄い。
やっぱり学校では金髪なんだな。ちかちかしていて、目が痛くなるぞ……。
「安馬くんに見せてもらって、読んでください。ちゃんとお礼を言うんですよ?」
いちいちブリブリした仕草であたしに言い聞かせる先公。こいつの頭どうなってるんだ。
いくら若いからって大人がそんな子供みたいにブリブリしていいのか。
垂れ流しそうになる文句を必死に押しやって、あたしはプーに教科書を見せてもらって読み上げた。当然、足は組んだまま、座ったままだ。心は入れ替えても態度は変えない。
あたしは読み終わると、先公を見た。先公はにっこりと笑っている。
「黒江さんありがとうございます。ちゃんと授業聞いておいてくださいね?」
「かったるい」
「悪い子ですね」
「先生、黒江さんはそういう人なんです。気になさらないでください」
「安馬くん……そうですね。安馬くんがそう言うなら、そうします」
プーの営業スマイルと丁寧な敬語にときめいてやがる。骨抜きにされている表情だ。
お前、気に入られすぎだよ……。どれだけ人の心を手籠めにする気だ。
あたしと正反対すぎて、胸の奥から苛々が沸々(ふつふつ)と湧き上がってくる。
こいつとは一生仲良くできないな……世話になったが、やっぱり駄目だ。
「でもま、とりあえず礼くらいは言っておいてやる。ありがとな」
「あなたの方がえらそうだよね」
王様のプーからしたら、えらそうな庶民といったところか。プーからすれば小市民か?
先公が教卓に戻ると、他の生徒があたしを振り向いた。今度は男子が口を開く。
「あのさ、黒江」
あたしの苗字を呼び捨てにして、男子は立ち向かってくる。あたしが怖くないのか。
「なんだ」




