授業中に居眠りする黒江
教室に着いてもあたしに話しかけてくる奴は誰一人としていない。触らぬ神に祟りなしだ。あたしに触れると自分まで目を付けられると見える。
あたしは挨拶もなく、ドアを開けて自分の椅子にドカッと座った。こっちを見るな。気にするな。足を組んで授業までひと眠りすることにする。
「目が赤いよ」
「……プー?」
あたしの安眠を邪魔したのは、深海の国の王様。
「口から屁をこかないでくれる? 臭いよ」
「お前な……また同じギャグかよ。何度も通用すると思うな」
「もしかして泣いた?」
「……お前には関係ないだろ」
あたしがプーと親しげに話していたのを、クラスメイトは口々に噂し出した。
一人の女子がこっちに来て、プーに話しかけている。こっちを向いている男子と女子も恐らくプーに話しかけたいのだろう。でも来たのは女子だけだ。
「安馬くん……ちょっといい?」
「何? ここで話せないようなこと?」
「うん。だからちょっと安馬くん借りるね」
あたしに向かって女子は言った。あたしをこいつのダチだと思ったのか。
それからプーは数人の男子と女子に連れていかれることになる。
これでようやくぐっすり寝られる。暫く寝て過ごしてつまらん授業も聞き流そう。
あたしは深い眠りに就いた。
――さん。黒江さん。
「……黒江さん」
なんだ。誰かが呼ぶ声が聞こえる。気持ちよく寝ているのに邪魔するなよな。
お前だって、邪魔されたらいやだろ?
「黒江さん!」
耳元で怒鳴られてあたしはカッと目を見開いた。
「な……なんだ?」
「授業中に寝るなんて、いい度胸ですね。七十三ページの三行目から読んでください」




