強くて気高い奴になりたかった
あたしもあんな風になりたかった。どんな奴にでも勝てて、どんな奴にも臆しない。強くて気高い奴になりたかった。でも、なれなかった。
王様というだけあるのか、なんでも叩き込まれてきたのかもしれない。
けど、人間の国とは違うのだから、深海の国は深海の国でやり方があるはずだ。言語だって文化だって違っていてもおかしくない。何故日本にそこまで馴染める?
ほんの少し日本に来ただけで日本語も完璧なんて、そんなのあっていいはずがない。
奴は天才か?
あたしは帰路につきつつ、プーのことで考え事をしていた。
電柱にぶつかったり、人にぶつかったりしたのは言うまでもない。
「いやしかし。人間じゃないなら魔法か何かでそんなことができるかもしれないな……」
顎に手を当てて、あたしは推測する。
この推理はきっと正解だ。あたしの勘はよく当たることが今日証明されたからな。
とりあえずいつものジョギングの要領で、家に着いた。はあ、家出したかった。
あたしの家は一軒家で二階建てだ。色は灰色。鉄筋で造られているらしく、結構頑丈だ。地震にもそこそこ強く、そこそこ大きい家だ。家は自慢だけど、家族は自慢じゃない。
「ただいま」
誰にも返事されることなく、玄関を開ける。
靴を脱いで上がって明かりを点けた。明かりが暗い玄関を照らす。
夕飯も用意されておらず、適当に自分で作れと机に書置きが残してあった。
置いてあるのはカップラーメンばっかり。まともな食材もなく、夕飯には些か頼りない。
「……つまんないな」
あたしは書置きを手に取り、びりびりと破った。そしてそれをばら撒いた。
もちろん、親に当てつけるためだ。
なんであたしの家はまともじゃないのか。もっとまともな家に生まれたかった。
学校に行っても、家にいてもつまらない。ゲーセンに行っても気分が晴れない。どうしてあたしの気持ちはこんなに雲行きが怪しいんだよ。
明日の天気予報は晴れだっていってるのにさ。なんでこんなんになっちゃったんだよ。
適当に湯を沸かしてカップラーメンを食べることにした。昨日も一昨日もカップラーメン、三日前もカップラーメンを食べた。休日のあたしの食い物は三食カップラーメン。
カップラーメンを売っている会社は大助かりだが、あたしの栄養は偏り気味だ。




