技をかけられる
「なんだその敬語。あたしの言ったこと、引き受けるってことか?」
「都合よく解釈なさらないでください。あなたの言うことに従えません。そう申し上げているのです。全く、これだから勉強してこなかったゆとりは」
なんだと? お前、ゆとりを馬鹿にするなんて、どこのエリートだ。
ゆとりにだって頭いい奴はいっぱいいるはずだ! お前の意見、絶対に認めない。
「ゆとりを馬鹿にするにも程があるぞ」
「あなたのようなゆとりを馬鹿にしているだけですが、何か? ええ、もちろんゆとりにも頭のいい方もいらっしゃるでしょう。ですが、あなたのような残念な脳味噌の方は……」
皮肉をたっぷり込めてあたしを嘲笑う。
「出会った時からお前を一発殴りたいと思っていたところなんだ。ちょっと面貸せ」
「私の顔は貸せるような代物ではありません。殴られ屋でも当たってください」
「もういい。ぶち殺し歯抜きしてやるっ」
プーの胸倉を掴んでグワッと拳を振りかぶった。なのに、プーは微動だにしない。
その時、さっきの優男が居合わせた。
「あっ! さっきの迷惑な客! 店長を殴ろうとするなんて……」
くそっ。一番面倒な奴が来てしまった。
あたしはプーを解放してやり、少し離れた。するとプーが衣服を正して、あたしの腕を掴む。それからあたしの視界が一転して地面に軽く転がされた。手を抜かれたようだ。
「……は?」
少ししてからあたしはプーに技をかけられたことを理解する。
プーがまた衣服を正していた。そして駆け付けた優男と話をしている。
「お前……こんなこともできるのか……?」
パンパンと手を叩いて、プーは容易いとでも言うように平然としていた。
「店長の嗜みです」
たしなみってなんだ……? 店長がそんなことやる必要あるのか?
お前、警官にでもなった方がいいよ。
あんなになんでもこなす奴を、あたしは今まで知らなかった。




