道長と阪中はデキているだって?
「離してください、道長さん。僕はあのムカつく女に一太刀入れたくて仕方ないんです」
「いいですか、サカナくん。ここは電車の中。落ち着いて深呼吸しなさい」
プリパッツン……道長の言うことを聞いて、阪中は深呼吸をした。道長はバイト仲間では一番年上だそうだ。設定上のプーよりも年上。なので、道長はこの中では頼りになるし、姉的な存在なのだ。雰囲気からは全然想像できないのだが。
「ありがとうございます……道長さん」
「どういたしまして。座りましょうね」
穏やかに阪中を諫め、座らせた。あいつはプリパッツン相手には敵わないらしいな。
あたしもあいつには流れに乗せられやすいが。
「あのお二方、できているのではないでしょうか」
こそこそと口元を隠して日和があたしに話しかけてきた。こいつが業界用語みたいな言葉を喋るとは、到底思わなかったぞ。なんか一気に親近感が湧いてきた。
「あいつらがデキてると思うのか……」
「日和の勘は当たります」
グッと可愛らしく握り拳を作って、あたしに猛アピールする。
「そうかあ? どう考えても、どっちも恋愛感情皆無だと思うけどな」
あたしの勘も当たるんだ。残念だったな、日和。
「では、勝負しましょうか。黒江様と日和で。負けたら勝者の言うことをなんでも一つ訊く。どうでしょう」
「な……なんか心躍る台詞だが、それあたしに不利じゃないのか? お前、勝ったら何をするつもりだ? まさか……」
「大丈夫です。頬にキスをするくらいです」
やっぱりあたしにチューしたかったんかい!
「お前な……」
あたしは脱力した。こいつはどこまであたしが好きなのか……。
「えー。駄目ですか? 頬にキスをするのは親愛の情ですのに。口にするキスとはまた違った意味になりますよ。日和の気持ち、受け取ってくれないのですね」
しょんぼりと肩を落として、うにゅと涙目になる日和。そういう顔はやめろって。
「あたしは悪者か?」




