風邪を引かない話
「あのメイド、おもしろい」
「変な方だと思います。日和の赤丸家を恐れないなんて」
「日和、お前凄いとこのお嬢様だったのか?」
「……ご存じなかったのですか?」
日和はこの世の終わりみたいな顔をした。ビックリ仰天って感じだ。
道理でお前の喋り方が丁寧だと思ったよ。きちんとした教育を受けてきたんだな。あたしみたいに反抗せずに、恭順にしてきた結果がこれになると。
変わった奴だとは思っていたが、まさか超有名なお嬢様だったとは。無知すぎた。
「そんなところも、黒江様の魅力だと思います」
ホホホとマダムみたいに笑って、日和はあたしを持ち上げる。本当に、こいつはあたしを一切貶したりしない。これでもかと褒めちぎる。プーと大違いだ。
「っくしゅん」
プーが可愛いくしゃみをしてくれた。あどけない感じがグッド。
「アマネル・マープ様……お風邪ですか?」
「いや……ぼくが風邪を引くなんて、ありえないんだけど……」
それは自慢じゃないと思うが、事情を知らない奴からすれば自慢に聞こえなくもない。
プーが人間じゃないから風邪を引かないと推測したが、どうだ。
「えぇー。あたしなんて、しょっちゅう風邪引きますよぉ」
「私も長谷川と同じく、しょっちゅう風邪を召します」
「僕は体調管理を整えていますから、風邪なんて引きませんが」
「私も引かないなあ」
あたしも風邪は引かないな。健康だからな。
「日和も風邪を引きません。風邪を引けば、お父様たちが心配なさいます」
「わたしも」
「あたしもそうだな……」
「ん」
じっとクリクリに睨まれた。こんな時でも敬語を使えと言うのか?
「マロム・クリム。いいから」
「はい……」
プーに止められ、しゅんとするクリクリ。あいつも黙ってれば天使なんだけどな。




