叶わないからと言って、その恋を諦めてしまうのか?
「黒江は安馬のことが好き……」
朝華が恥ずかしそうに自分の顔を覆った。色恋に関する話は苦手なのか。
あたしもビックリするくらい素直に答えてしまったな。誤魔化しが利かないのもわかっていたが、いつものあたしなら、はぐらかしているところだ。
「そうですか……やはり」
「やはりってなんだ。あたしが気付いたのは、ついさっきくらいのことなのに」
「ずっと前から好きだったような気がしていました。日和の鋭い勘です」
自分で言うタイプだったか? あたしのことをべた褒めするだけで、自分のことはあまり褒めない奴だったが、もしかして性格が変わった……のか?
「黒江様を安馬様に取られてしまうのは口惜しいことですが……、仕方ありません。その恋、応援致しましょう。日和たちに考えがあります。どうぞお耳を」
日和は拳をグッと握り締めて、あたしに耳を貸せと要求してきた。あたしは耳を日和の口元に寄せる。そっと息を吹きかけられ、コショコショと内緒話をする。
「……そんなことをするのか? でもあいつには通用しないと思うけどな……おっぱいにも人間の女にも興味のない奴だぞ。可愛い自分の従者にさえ、色目を使っていない」
「大丈夫です。黒江様のプロポーションで悩殺されない男は男ではありません」
あいつは男じゃなくて、オスらしいけどな。
「でも安馬は黒江と違うから」
「ああそうだな……あいつは深海の国の王様だ……あたしとは住んでいる国も種類も違う。絶対に叶わない恋なんだろ。知ってるさ」
「ですが、諦めてしまうのですか?」
日和はあたしに詰め寄る。あたしの気持ちを推し測るように、あたしの目をじっと見ている。それであたしに協力するかどうかも考えているのかもしれないな。
あたしはどうする?
「……そうだな……じゃあ……ちょっとだけ、頑張ってみるか」
「流石です。黒江様はそう言ってくださると、思っていました」
日和は手を合わせて、あたしの恋のキューピッドになってくれることを約束した。朝華も応援してくれるそうだ。あまり役には立てないけれどって言っていたが、気持ちだけで十分だからな。二人共、ありがとう。
あたしのために動いてくれて、本当にありがとうな。




