クリクリの恋は実らない
「アマネル・マープ様? 私のことを、クリクリとおっしゃいませんでしたか?」
「え。あ、本当だ。ついそう呼んじゃったよ」
プーは頭を押さえてハハハと白い歯を零した。クリクリがプーを見咎める。
「アマネル・マープ様。マロム・クリムでございます」
「うん」
「二人して見つめ合うのはやめていただきたいのですが」
あたしは二人が愛し合っているんじゃないかと勘繰る。でも、赤くなったのはクリクリだけで、プーにその気は全くなさそうだ。プーの気持ちとしては、可愛い我が子みたいな感じだろうか。愛情は芽生えても恋情は芽生えないんだな。哀れな懸想だ。
やっぱりクリクリの恋が実る日は、永遠に来ない。
「すみません……アマネル・マープ様……」
「うん。わかったから。黒江さん、あなたにコツを教えよう」
「コツ?」
「うん。これを頭の隅に置いて考えれば、誰もがあなたの企画に納得するようになる。そのコツを教えてあげる。メモしてね」
「は……はい!」
プーはあたしに失敗を経験させてから、コツを教えるつもりだったのか。
あたしが訊かなくても自分から教えて、やる気にさせる。実にプーらしいやり方だ。
プーの言うコツというやつは、全員が着目するところを踏まえて企画を練ることだそうだ。全員が見るところにはクセがあって、一人一人違う。優男はリスクについて指摘する。ぽっちゃり女は面白いかどうかを考える。他の奴らはそれぞれ完成度に着目し、意見を聞いて思い付いたことを提案するようにしているそうだ。プーの分析によるとそんな感じ。
それは、ずっと見てきたプーだからこそわかることか。いや、あたしも冷静さを欠いていなければわかったことかもしれない。でも、プーにはあたしはそれができないと思われていたわけで、現にできなかった。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。これで大丈夫かな? もう質問はない?」
「どうして教えてくださるのですか?」
「あなたが危なっかしいから。ぼくの単なる気まぐれだよ。気にしないで」




