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本気の花を咲かせて。  作者: 社容尊悟
プロローグ 生意気なクソガキが行き付けの店の店長さんでした
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あたしは勉強が苦手だ


 あたしは勉強が苦手だ。これといった特技もない。運動だけは得意だ。だけど、あたしは体操の選手にも、バドミントンの選手にもなれやしない。だって、その程度の実力だから。あたしは一芸に秀でた天才たちとは違うんだ。はなから才能のある奴とは、比べ物にならない。あたしがどれだけあがいたって、奴らの才能には勝てない。奴らの身体とあたしの身体を入れ替えたって、あたしの運動神経は変わらないんだ。そんなめちゃくちゃな理屈も、才能の前では屈するほかない。才能が全てを物語る。そんな挫折を、あたしは経験している。こんな短い人生の中で、こいつらにはかなわないなって思わされたんだ。

 きつい。相当きつい。あたしがもし心が弱かったら、首を絞めていたかもしれない。奴らを憎んでいたかもしれない。でもあたしは首も絞められず、憎むこともできなかった。応援することもできなかった。うらやましいと思うだけで、何もできなかった。

 あたしの夢って、その程度のものなんだ――って、痛感したよ。

 小さい頃から大きな大会に出たいと思っていた。昔からやっていたバドミントンで。あたしの同級生の何人かは夢を叶えた。あたしだけが置いていかれた。同じように努力していたはずなのに、あたしだけが才能に恵まれていなかった。ばかみたいだ。今までの時間を他のことに費やせば、もっと違う夢を持てたかもしれなかったのに。叶わない夢を追ってばかりいなければ、違う何かになれたかもしれないのに。

 人生って平等じゃないよな。あたしが十万時間頑張っても、あいつらと一緒の場所には辿り着けない。向いてないんだよ。わかってる。ずっとやり続けていても、無駄な時間を浪費するってことも、わかっているから。母親にうるさく言われなくてもわかっている。もうとっくの昔に諦めたよ。だから、女らしくしろとか、その喋り方はやめろとか、もっとちゃんとしろとか、もっと頑張れとか言わないでくれ。頑張ったって無駄なんだ。

 高校を卒業したら家を出る。

 働いて、一人暮らしするんだ……。




 夢を諦め、新たな決意をして――高校三年になる始業式がやって来た。

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