第十四話 邂逅紅蓮
「さ~て着いたっと」
校長室の前に着くと一転して、どこで打ち合わせしたのか、ティアさんたちが一斉にダンボールを脱いだ。何がなんだかわかっていなくて、ダンボールを脱ぎ損ねた僕を何だこいつという哀れみの目で見てきたのにはキレて良いと思うんだ。うん。
「……ここには何がある」
カノンが聞く。
知らずにやってたのかよ。まあ、僕も知らずにやってたけどさ。あ、今はちゃんとダンボール脱いでるよ。というか、こんなに目立ってるのに誰も騒ぎ出さないのだろうか。これが教育の成果とかだったらちょっと悲しい。
「んふふ、良いもの、はないわね。えっと、そうね~、カイトたちの知り合いかな~。私も一回は会ったことあるし、というか思いっきり見切り発車だったりするし」
つまり何も考えてなかったというわけですか。しかし、カイトさんたちの知り合いか。どんな人なのだろうか。きっとすごい人に違いない。…………でも、ティアさんたちを見てるとその自信をなくしていくのはなぜだろうか。
わからん。とりあえず、ケインにも聞いてみるか。
「おい、ケイン、ここに誰が居るか知ってるか?」
「フッ、愚問だな」
な、なんだとー! この馬鹿なケインが何か知っているだとー!! え? マジで?
「わからん」
「…………」
期待させんな。というか当たり前か。この馬鹿が何か事前にわかってたことなんてないもんな。じゃあ、誰が居るんだ?
「はいるわよー」
ティアさんがノックもせずに入る。そこには、白髪の初老の老人が居た。だが、ただの老人ではない。その眼光はまるで獲物を狙う鷹のような迫力があった。
「ふん、知り合いの気配がすると思えば貴様か」
「ご挨拶ねえ~、紅蓮さん」
紅蓮? まさか、紅蓮のガヴェイン? うそ、マジで? 元十二騎士の? あの魔王との戦いの後急に姿を消していたと思ったらこんなところにいたのか。
「ふん、貴様らの噂は聞いている。まったく、あの小僧は無茶をしているようだな。あのときもそうだが、まったく成長しないな」
「あなたは変ったみたいですね~」
「ふん、余計なお世話だな。そこのひよっこども名乗っておこう。我はガヴェインだ」
「あ、アルトです」
「ケインです」
「…………カノン」
品定めするように僕たちを見た後ガヴェインさんが呟く。
「なるほど、若い芽は育ってきているようだな」
「えっへん」
「貴様が胸を張ることではないだろう。妖精の姫」
「紅蓮さんも強情だね~」
おおおい! ティアさん怖いものなさすぎだろうー!! 僕はもう、この人を目の前にしているだけで胃がキリキリしてくるんだよ。その上、そんなものを見せられてはもう僕ストレスで死にそうだよ。くそう、こんなとき、ケインのその豪胆さがうらやましい。カノンも、何でそんな普通でいられるんだよ。
「そこの小僧、落ち着け。我はもう既に騎士ではない。そんなに固くなるな」
「ですが」
「フン、貴様のところのギルドマスターの様に生意気に振舞わないのは良いが、もう少し自信を持ったらどうだ。イライラする」
「すみません」
「フン、で、何をしに来たんだ」
そうそう、僕もそれが知りたいです。
「ん? 暇つぶし」
「おい」
その後、ガヴェインさんの計らいにより、学園を正式に見学することが出来た。自分たちとあまり変らないことが判明したけど。旧時代的教育方法がとても新鮮だったな。うん。
新年一発目の更新です。
皆様あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
さて、挨拶も終わったので連絡を。
次回の更新は十六日を予定しています。
ので、皆さんお楽しみに。
それではまた。